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第2章
「いらぬ心配」
しおりを挟む「別にオレ、彼女ほしいのにできないってわけじゃないですからねっ」
むくれて言うと、先輩たちは、ん?と首を傾げた。
「それは何、欲しくないってこと?」
「それとも、実は知られてないところで、彼女が居るとか?」
いや、恋人は普通に欲しかった。
……まあもともとは彼女が欲しかったけど。
えーと…………彼氏は居る。
相手は、啓介だから、オレらが一緒に暮らしてるのがまずいってことには、ならない。
……どれから答えたらいいのだろうか。
いや、ちがうちがう、どれも答えたら、総ツッコミを入れられる。
ツッコミを回避しつつ、啓介と一緒に暮らしてるのに問題ないってことを、伝えるには……??
全然わからーん!!
きょろ、と見回して、啓介を探す。
啓介は、手に何かのでっかい皿を持って、一緒に居る奴らと何やら楽しそうに笑いながら、何かをジュージュー焼いてるっぽい。
おいおーい、オレのピンチを察知して、早くこっち来いーと思うのだけれど。全然気づいてくれる余地は無さそう。
「彼女は……いないんですけど……」
「うんうん」
「……でもあの……好きな奴は居るので……」
そう言うと、先輩たちは何やら嬉しそうに笑う。
「お前のそういうの初めて聞いたかも。誰々?」
「ほんと。なかったよな、雅己」
「聞いてもバスケが忙しいんでーとか、わけわかんないこと言ってたし」
「いいじゃないですか、バスケに青春……」
言いかけたけれど、「そういうの良いから、どんな子? そっちが聞きたい」と先輩たちはウキウキしている。
「何でオレのそんなの聞きたいんですか」
「え、だって、雅己に好きな子が居るとか、初耳だから」
「そんなこと、ないですよ、高校ん時だって、ちょっとは仲良くなったりしてたし……」
「でも結局付き合わないで終わってただろ?」
「そう、ですけど……」
むむむ。さすがに良く知られていて、適当にごまかせない。
むむむむむ。
「でも、別に啓介と居たからって、まずいってことは」
「あるって。どーすんの、啓介と仲良くしすぎて彼女出来ないまま行って、啓介だけはできちゃって、やっぱり出てってとか言われたら」
「そうだよ、啓介はそこらへんいくらでもうまくやるだろうしな」
「そうそう、雅己、あんま、啓介とばっかり仲良くしてると……行き遅れちゃうよ?」
「………………っもー」
先輩たち、うるさーい!と言おうとした瞬間、だった。
「オレが雅己追い出すとか、無いんで、変なこと言わんといてもらえません?」
あれっ。
さっきまで向こうに居たのに。
オレの横にきて、いつから聞いてたのか、そんなセリフを口にしてる。
「あ。来た」
先輩たち苦笑い。
「だってお前は高校ん時も彼女居ただろ?」
「雅己は、なんかお前と仲良くしすぎてると、彼女出来ないじゃん。かわいそうじゃない?」
「……別に。オレと居ても、彼女作りたいなら作ればええし」
むむ。何ですと?
じっと啓介を見上げると。啓介はオレの視線に気づいて、ぷ、と笑った。
「オレがやーっと口説き落として、一緒に暮らしてもらったとこなんで」
「――――……」
「おかしなこと言うて、惑わさんでほしいんですけど」
啓介がそんな風にきっばり言い切ると、先輩たちはびっくりした感じで。
「ええ、そうなの?」
「雅己が啓介と居たいって言ったんじゃねえの?」
……何その驚き方。
先輩たちの中では、オレが啓介と居たいってごねて、一緒に暮らしてもらったと思ってるわけ??
どういうこと……。
「ちゃいますよ。むしろオレがずっと誘ってたんで」
そーだそーだー!
もっと言えー!
啓介の横で、むーと膨らんでいると、先輩たちがクスクス笑い出す。
「じゃあ、雅己が追い出されるって心配は……」
「無いですよ」
啓介が笑いながら、はっきり答えると、先輩たちは、なんだそっか、心配して損した、とか笑ってる。
………………どんな心配だ。
むかむかむか。
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