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第2章
「万華鏡」
しおりを挟むその時、小屋の方から声が聞こえてきた。
「あ、先輩、さすが」
若菜の声がする。……ってことは、「さすが」の相手は、啓介かなと、そっちに目を向ける。
係りの人が落ちた何かを拾ってるから、啓介も何か落としたっぽいなあ。……と思ったら、なんと、万華鏡だった。
おお、啓介ナイス!
啓介が持って帰ってくれれば、オレ、家で遊べるし。
ついさっきまで万華鏡なんて、かけらも自分の中になかったのに、ここで見てから急にすごく欲しいものになってて。だから啓介が落としてくれて、喜んでしまう。
まだ続けて撃ってるので、しばらく皆を眺めていると、沙希が別の小屋の方を指さして言った。
「先輩、なんかあっちの皆、ソフトクリーム食べるって言ってますよ」
「え、今からご飯なのに?」
「なんかおいしそうなのがあるって。数量限定とか」
「えっそうなの? 何が数量限定なんだろ?」
「行ってみます?」
「うん……あ。すぐ行くから、先行ってて」
そう言うと、沙希は頷いて、何軒か先のソフトクリーム屋に歩いて行った。
オレが何で残ったかと言うと。
万華鏡、ほしかったって、啓介に言おうと思ったから。
啓介と若菜は一番奥の方だったので、先に出てきた三人と、何とれたの、とか話していると、奥から、若菜の声が聞こえてきた。
「万華鏡、いいですねー」
その言葉を聞いて、あ、若菜も欲しいのかなーと思ったので。
……まああげてもしょうがないか。うん。
後で、旅館でちょっと見せてもらえるかなあ~。
なんて思いながら、こっちの三人と話を続けた。
話し終えたところに、若菜と啓介が小屋から出てきた。
啓介と目があって、とれたんだね、と笑うと。
「ん」
と、啓介も笑う。
若菜は、前に居た三人に呼ばれて、何か話しながら先を歩いていく。
なんかオレと啓介って、皆に置いてかれて一番ラストに二人になるというのか、それとも、皆を先に行かせて、二人になってるというのか? とにかく、いつも最後二人になってる気がする。
何だかおかしくなりながら、階段で二人で並ぶと。
「欲しかったんなら、あげる」
ほい、と万華鏡の箱を渡される。
「え」
啓介を見上げる。あ、これ、若菜にはあげなかったのか、と思いながら。
ん、今のセリフは一体? と思っていると。
「あれ? ちゃうの?」
「え??」
「これ狙ってたんやなかった? 勘違いか?」
クスクス笑って、啓介がオレを見る。
「横から見てたから、はっきり分からんかったけど、これ狙っとったんかと思うた」
「うん。……狙ってた」
「あ、やっぱり?」
啓介はクスクス笑った。
「あげるわ」
「いいの?」
「ちゅーか、雅己にやろうと思うて狙うたんよ。ええに決まってるし」
「――――……」
なんか。
……ずるいな、カッコ良くない? 啓介。
むむむむむ。
「ん? いらんの??」
「いる!……ありがと」
ちょっと悔しく思いながら。でも、嬉しくて言うと、啓介が、ん、と頷いて笑う。
こういうとこ、なんかほんとに好きだな。
とか、思ってしまう。
誰も居なかったら、お礼に、キスしてあげようかなと、思う位。
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