187 / 248
第2章
「ポンポン」
しおりを挟む皆の居るところにもう少し、というところで、オレはふと思った。
「あのさ、啓介」
「んー?」
「……今決めたことさ、それでいいんだけどさ」
「うん?」
「もし、それ以外にも、オレがお前の嫌なことをしてたらさ」
「?」
「ポンポン叩いて知らせて?」
そう言ったら、啓介は面白そうに笑いながら、オレを見つめた。
「どこをポンポン?」
「どこ……肩、とか??」
「分かった。ほしたらそれ、お前もな?」
「ん、分かった」
何だかこんなこと話してるのも、おかしいなあとも思うんだけど。
前回、バスケした時、オレも啓介もそれぞれちょっと嫌な思いもしたし。
……こういうの、話して、嫌な思い、しないようにできるなら、それはそれで、進歩なような。
って言っても前の時とは、関係も大分違うけど。
オレが、啓介のこと、好きって認めてるだけで、かなり違うから、大丈夫なのかもしれないけど。
でもなあ。男女のカップルだったら、バスケの皆に、付き合うことになったよーって発表できるけど、さすがにそれはちょっとなあって気がする。
オレ達が今ここで、付き合ってます、なんて言っちゃった日には、もうこの旅行、その話題しか無くなっちゃうって気がする。
「……まあ大体、オレの方が嫉妬するもんな」
啓介が苦笑いで言って、オレを見つめる。
……まあ。確かに、口に出すのは、お前だけど。
オレも大概だと思うけどなあ……。
「とりあえず」
「ん?」
「オレは、帰るまでにお前に勝つから」
「ん??」
きょとんとした顔でオレを見て、それから、啓介はクッと笑いだした。
「もしかして、石投げ?」
「そうそう!」
「ほんまお前、おもろ……」
クスクス笑いながらの啓介と、ちょうど皆の所に追いついた。
すると、なんとなく皆がオレ達を振り帰った。
「なんかさー、あっちの階段に出店があって、射的とかできるらしいよ。行く?」
そんな声に、「行く行く行く!」と返事をして、急いで歩きだす。
「どんだけ射的好きなの」
先輩たちにも笑われながら、先頭で向かう。
「だってやりたいよね、めったにできないしさ」
「まあそうだけど」
「何を取るんだろ、射的で」
「お菓子とかかな??」
「まあなんでも。射的出来ればいいや。早くいこいこ」
ふと、振り返ると、啓介のよこには、若菜が並ぶ。
「――――……」
大丈夫。
若菜が啓介を好きなのは分かるけど。啓介がそこに行くとは思わないから。
ちょーっとだけ、ぴく、てするけど。まあそれくらいは。
多分、前の時と違うのは、啓介がオレをほんとに、好きなんだって思えてるのと。
オレも、そうだって、思えてることなんだと思う。
と。オレの隣に、沙希がやってくる。
この子、オレに、「もし私が大学生になっても、まだ彼女居なかったら付き合って下さい」とか言ってたけど。受験の時は無理です、とかきっぱり言ってたから、ふざけてるのがほとんどなんだろうけど。
まあ、仲は良いからよく近寄っては来るけど。
まあ。
……たまには、いっか。
啓介とオレ、いつも一緒に居すぎだから。
二人でそれぞれ色んな人と過ごすのも、新鮮かもしれない。
48
お気に入りに追加
1,832
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
奴の執着から逃れられない件について
B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。
しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。
なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され...,
途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる