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第2章
「当たり前」
しおりを挟む「……お前ってすごい」
「ん?」
「……ブレなさ加減が、半端ないよなー……」
そう言うと、啓介はちょっと笑って。
オレの頭を、両手で包むみたいに、抱き寄せた。
「――――……あれなんやと思うんよ」
「……あれ??」
「んーと……半身、みたいな」
「……半身?」
「もともとは、一人やったけど、半分で生まれてきた、みたいな?」
「――――……」
「だから、どーしても一緒に居たいっちゅう……」
「何だよ、それ」
クスクス笑いながら、啓介を見上げてしまう。
「その話は初めて聞いたかも」
「うん。まあ、初めて言うた。恥ずいか」
啓介も笑う。
「……まあそれくらい、オレ、お前と離れたくないってことやな」
「……そうなんだ……」
変なの、と心の中では思うのだけど。
――――……そんなにいうほど、オレと居たいんだと思うと。
今はもう、嬉しいかも……。
「……たまに離れると――――……大事やなて思うて、ええかもな?」
「うん。そだね」
「あーせやけど……」
ぎゅうう。と抱き締められる。
「やっぱりお前と離れんの嫌やな」
何だそれ、と笑ってしまう。
まあ。オレも。さみしいなって思っちゃったし。
――――……一日、離れてみたのは良かったかも。
「さっきもちょっと言ったけど……啓介が居るのが当たり前になってるっていうのは、離れてみて分かったかも……」
「そうなん?」
「うん。そう。居ないと変って思う」
「そか」
クスクス笑いながら、啓介がオレの頬に口づける。
そのまま抱き締められていると、ふわ、とあくびが零れて。
「ねむい?」
クスクス啓介に笑われた。
「ん……啓介、もう、寝て良い?」
「ん? もちろん。ええよ。ダメ言うわけないやろ」
クスクス笑いながら啓介がオレを抱き締める腕の力を、少し緩めた。
少しだけ離れて、寝やすい位置で、啓介の腕にはまる。
「……昨日オレ、ここで一人で寝てた時もさ……」
「ん」
「――――……なんか変な感じだった。居ないの」
「……そっか」
「…………やっぱり、安心する」
目を閉じたまま、少しだけ、啓介にスリと額を寄せると。
ちゅ、と額に、キスされる。
「……おやすみ、雅己」
「ん……。おやすみ……」
……なんか。
――――……電話越しのおやすみとは、やっぱり違う。
閉じかけた目を開けて、啓介を見上げると、気付いた啓介がオレを見て、ふ、と瞳を緩めて笑った。
「――――……」
その顔を見てたら。
なんだか、心の中がふんわりする気分。
「……また明日な?」
「――――……なんや、それ?」
啓介はおかしそうに言うと、それから、ん、と頷いて笑った。
ほんと――――……。
これが、当たり前とか……ほんの数か月前はかけらも思わなかったけど。
今はもう。
……当たり前すぎて。居てくれなきゃ困るとか。
へんなの……。
ふ、と微笑んでしまいながら。
今度こそ、目を伏せて。
啓介の腕の中で、眠りについた。
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