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第2章

「しょうがない」

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 たまに行く回転寿司のお店のドアの前。

「あれ?」
「え?」

 大学の友達たちが男子二人、女子二人。ばったり鉢合わせて、皆が啓介とオレに話しかけてきた。

「皆、どーしてここにいるの?」
「今日ずっとフリータイムでカラオケ行ってて、今からご飯」
「あ、そっか、言ってたね」

 そう言えば、誘われてたっけ。

「ちょうどいいや、一緒に食おうぜ」

 言われて啓介を見ると、ええよ、と笑うので、皆で一緒に座ることになった。

 お寿司が回る側の席に、啓介と向かい合って座って、オレの横に男子二人、啓介の横に女子が二人座った。

「四人でいってたの? カラオケ」

 オレが聞くと、「いや、違う。十五人位」と返ってきた。

「あは、楽しそ。今度行く」
「あれ、今日は何で来れなかったんだっけ?」

「あぁ、ほんとは、色々買い物とかしたりやることあったから断ったんだけど。結局行けなかったんだけどね」
「オレが法事で大阪帰ってたからな」

 啓介がオレに続けて理由を言うと。

「じゃあ雅己だけ来ればよかったのに、カラオケ」

 そう言われて、確かに、と気付く。
 完全に忘れてたし……なんか啓介が居なくて、なんだかやる気があんまりしなくて。完全にまったりモードになってたし。
 ……全然外に遊びに行くとか、浮かばなかったんだよなぁ。
 浮かべば、カラオケの事も思い出したかも。

「……そうだね、でも完全に忘れてた。なんかすげーのんびりしちゃった」

 そう答えると、皆がクスクス笑う。


「また今度いこ」

 言われて、うんうん、と頷いてから、「何か頼むなら言ってー注文するし」とタッチパネルを見上げる。
 啓介が目の前でお茶の茶碗を出して、粉茶を入れ始める。

「お湯入れてくね」
「ん」

 啓介が粉茶を入れるその茶碗にお湯を入れて、皆に渡していく。
 それを見てた女の子が、そういえば、とオレ達を見た。

「二人って一緒に暮らし始めたんでしょ?」

 隣の女子に聞かれて、啓介が、ん、と笑ってる。

「仲良しだよねぇ。高校の時から仲良しって聞いたよ」
「誰に聞いたん?」

 クスクス笑って啓介が話してるのを聞きながら、オレはオレで隣に話しかける。

「何食べる? 取るよ?」
「あ、そのマグロー」
「オレサーモンとって」

 はいはい、と取って渡していく。

 皆のお寿司を取りつつ、注文もとりあえず済ませて、皆で食べ始める。

「あれ、そういえば十五人も居て、食事は四人なの?」
「なんか話がまとまらなくてさー。回転ずしが良い奴と、お好み焼きが良いやつと、焼き肉が良いって奴らで、ばらけた」
「何やそれ」

 啓介が笑って突っ込んでて。オレも笑ってしまうと。

「十五人もだと、中々この時間まとめては入れねえじゃん?」
「あ、なるほどね」

「その内、皆が酒飲めるようになったら、貸切とかで予約して飲み会とかしてみたいよな?」
「うん、いいね。楽しみ」

 あれこれ、とりとめもなく皆で話しながら。
 何となく皆食べ終わり、デザートタイムになる奴も居て、まったりしてる。
 啓介が、隣の女子と楽しそうに話してるのに、ふと気づく。

 まあさ、啓介、見た目もカッコいいんだけど……。
 ……関西弁って、やっぱりモテる、て気がする。
 カッコイイよねって言われてるのよく聞いてきたし。

 オレもカッコいいなって、言った事ある気がするし。


 なんかいま。……ちょっと二人に、なりたいかも。
 皆と、話すのは楽しいんだけど。

 ……あれ?
 でもオレが、女の子に妬くのはおかしいのかなあ……。
 啓介はオレを好きって言ってるし。
 ……もしかしてオレは、男に妬くべきなのかな?

 ……むむ? よく分かんないな。
 啓介はオレと別れたらきっと男じゃなくて女の子だよな?

 違うのかな。
 ……男もあり?

 …………うーん。オレが、妬くとしたらどっちになんだ?

 むむむ。
 考えるほどによくわかんね。


「……そろそろ帰ろか、雅己」
「え?」

 急に言われて、まっすぐに啓介を見つめると。


「オレ、大阪から帰ったとこで疲れてんねん。悪いけど、帰るわ」

 啓介がすごくはっきり言うので、皆はすぐ了解で。
 ざっと計算して少し多目に置いて、二人で先に店を出た。


「帰ろ、雅己」
「ん」

 店を出た所で、啓介が笑ってオレを振り返るので、すぐ隣に並んで、啓介を見上げる。


「急にどしたの?」
「雅己、帰りたそうやったし。……オレも、早く二人になりたかったし」

「――――……」

 オレもって。
 ……それだと、オレがまるで、啓介と二人になりたがってたみたいじゃん。

 そう思うとちょっと恥ずかしくて反論したくなるのだけれど。
 
 ……まいっか。
 と、すぐに飲み込んだのは。



 ――――……まあ今日は。

 帰ってきて隣にいるのが嬉しいから。……しょうがないかと、そう思う。




 
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