178 / 250
第2章
「しょうがない」
しおりを挟むたまに行く回転寿司のお店のドアの前。
「あれ?」
「え?」
大学の友達たちが男子二人、女子二人。ばったり鉢合わせて、皆が啓介とオレに話しかけてきた。
「皆、どーしてここにいるの?」
「今日ずっとフリータイムでカラオケ行ってて、今からご飯」
「あ、そっか、言ってたね」
そう言えば、誘われてたっけ。
「ちょうどいいや、一緒に食おうぜ」
言われて啓介を見ると、ええよ、と笑うので、皆で一緒に座ることになった。
お寿司が回る側の席に、啓介と向かい合って座って、オレの横に男子二人、啓介の横に女子が二人座った。
「四人でいってたの? カラオケ」
オレが聞くと、「いや、違う。十五人位」と返ってきた。
「あは、楽しそ。今度行く」
「あれ、今日は何で来れなかったんだっけ?」
「あぁ、ほんとは、色々買い物とかしたりやることあったから断ったんだけど。結局行けなかったんだけどね」
「オレが法事で大阪帰ってたからな」
啓介がオレに続けて理由を言うと。
「じゃあ雅己だけ来ればよかったのに、カラオケ」
そう言われて、確かに、と気付く。
完全に忘れてたし……なんか啓介が居なくて、なんだかやる気があんまりしなくて。完全にまったりモードになってたし。
……全然外に遊びに行くとか、浮かばなかったんだよなぁ。
浮かべば、カラオケの事も思い出したかも。
「……そうだね、でも完全に忘れてた。なんかすげーのんびりしちゃった」
そう答えると、皆がクスクス笑う。
「また今度いこ」
言われて、うんうん、と頷いてから、「何か頼むなら言ってー注文するし」とタッチパネルを見上げる。
啓介が目の前でお茶の茶碗を出して、粉茶を入れ始める。
「お湯入れてくね」
「ん」
啓介が粉茶を入れるその茶碗にお湯を入れて、皆に渡していく。
それを見てた女の子が、そういえば、とオレ達を見た。
「二人って一緒に暮らし始めたんでしょ?」
隣の女子に聞かれて、啓介が、ん、と笑ってる。
「仲良しだよねぇ。高校の時から仲良しって聞いたよ」
「誰に聞いたん?」
クスクス笑って啓介が話してるのを聞きながら、オレはオレで隣に話しかける。
「何食べる? 取るよ?」
「あ、そのマグロー」
「オレサーモンとって」
はいはい、と取って渡していく。
皆のお寿司を取りつつ、注文もとりあえず済ませて、皆で食べ始める。
「あれ、そういえば十五人も居て、食事は四人なの?」
「なんか話がまとまらなくてさー。回転ずしが良い奴と、お好み焼きが良いやつと、焼き肉が良いって奴らで、ばらけた」
「何やそれ」
啓介が笑って突っ込んでて。オレも笑ってしまうと。
「十五人もだと、中々この時間まとめては入れねえじゃん?」
「あ、なるほどね」
「その内、皆が酒飲めるようになったら、貸切とかで予約して飲み会とかしてみたいよな?」
「うん、いいね。楽しみ」
あれこれ、とりとめもなく皆で話しながら。
何となく皆食べ終わり、デザートタイムになる奴も居て、まったりしてる。
啓介が、隣の女子と楽しそうに話してるのに、ふと気づく。
まあさ、啓介、見た目もカッコいいんだけど……。
……関西弁って、やっぱりモテる、て気がする。
カッコイイよねって言われてるのよく聞いてきたし。
オレもカッコいいなって、言った事ある気がするし。
なんかいま。……ちょっと二人に、なりたいかも。
皆と、話すのは楽しいんだけど。
……あれ?
でもオレが、女の子に妬くのはおかしいのかなあ……。
啓介はオレを好きって言ってるし。
……もしかしてオレは、男に妬くべきなのかな?
……むむ? よく分かんないな。
啓介はオレと別れたらきっと男じゃなくて女の子だよな?
違うのかな。
……男もあり?
…………うーん。オレが、妬くとしたらどっちになんだ?
むむむ。
考えるほどによくわかんね。
「……そろそろ帰ろか、雅己」
「え?」
急に言われて、まっすぐに啓介を見つめると。
「オレ、大阪から帰ったとこで疲れてんねん。悪いけど、帰るわ」
啓介がすごくはっきり言うので、皆はすぐ了解で。
ざっと計算して少し多目に置いて、二人で先に店を出た。
「帰ろ、雅己」
「ん」
店を出た所で、啓介が笑ってオレを振り返るので、すぐ隣に並んで、啓介を見上げる。
「急にどしたの?」
「雅己、帰りたそうやったし。……オレも、早く二人になりたかったし」
「――――……」
オレもって。
……それだと、オレがまるで、啓介と二人になりたがってたみたいじゃん。
そう思うとちょっと恥ずかしくて反論したくなるのだけれど。
……まいっか。
と、すぐに飲み込んだのは。
――――……まあ今日は。
帰ってきて隣にいるのが嬉しいから。……しょうがないかと、そう思う。
85
****
読んでくださってありがとうございます♡
気に入って下さったら、お気に入り登録 & 感想など聞かせて頂けると、嬉しいです(^^)
読んでくださってありがとうございます♡
気に入って下さったら、お気に入り登録 & 感想など聞かせて頂けると、嬉しいです(^^)
お気に入りに追加
1,887
あなたにおすすめの小説
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
今日も武器屋は閑古鳥
桜羽根ねね
BL
凡庸な町人、アルジュは武器屋の店主である。
代わり映えのない毎日を送っていた、そんなある日、艶やかな紅い髪に金色の瞳を持つ貴族が現れて──。
謎の美形貴族×平凡町人がメインで、脇カプも多数あります。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
【完結】小学生に転生した元ヤン教師、犬猿の仲だった元同僚と恋をする。
めんつゆ
BL
嫌われていると思っていたのに。
「どうやらこいつは俺の前世が好きだったらしい」
真面目教師×生意気小学生(アラサー)
ーーーーー
勤務態度最悪のアラサー教師、 木下 索也。
そんな彼の天敵は後輩の熱血真面目教師、 平原 桜太郎。
小言がうるさい後輩を鬱陶しく思う索也だったが……。
ある日、小学生に転生し 桜太郎学級の児童となる。
「……まさか、木下先生のこと好きだった?」
そこで桜太郎の秘めた想いを知り……。
真面目教師×生意気小学生(中身アラサー)の 痛快ピュアラブコメディー。
最初はぶつかり合っていた2人が、様々なトラブルを乗り越えてゆっくりと心通わせる経過をお楽しみいただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる