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第2章

「おかえり」

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 十八時半には駅に着くから。


 十六時過ぎに啓介からそう入ってきた。
 分かった、改札出た通路のとこに居る、と返してから、なんかずっとソワソワしてる。

 夕飯はどっか寄ればいいよな。
 てことは、うちで用意するものはないから。

 とりあえず洗濯物が乾いたから取り込んで畳んで。

 なんかほんとに、超ソワソワする。
 しばらく、買ってきた旅行雑誌をぱらぱらとめくっていたのだけれど。

 もう、なんか、ソワソワした気持ちが、抑えられなくなって、外に出てしまった。駅まではゆっくり歩いたとしても、十分位で着いてしまう。

 まだ十七時過ぎだし。

 あと一時間二十分。
 ……何してようかなあ。
 
 とりあえず駅には向かう。

 なんかオレ、ちょっと落ち着けよと、自分でも思う。

 啓介があんまり寂しそうなのを、たった一晩なのに、とか思ってたくせに。

 実際居なくなったら、なんか出かける気もしなくて。
 のんびりしたのは、それはそれで良かったんだけど。

 ――――……あーなんか。
 のんびりするのも、――――……後ろに啓介が居て、
 なんかどっか、よっかかったりしながら。のんびりするのが、好きになってるのかも……。

 啓介のこと、言えないかも……。

 たった一日、居ない位で。
 なに、寂しくなってるんだか。


 そのまま、あっという間に、駅についてしまった。
 

  ふたつの線の乗り換え駅なので、つなぐ通路が出来ているのだけれど、
その端に立つと、夕焼けがちょうど見える。
 いつもは、この駅で降りるだけなので、この通路には来ない。
 こんなに綺麗に空が見えるとか、知らなかった。

 手すりに肘を乗せて、空を見上げる。

 今日も綺麗だなあ……。
 昨日、遠い場所に居る啓介と見た、夕焼け空。

 今は、キレイなオレンジ色。
 あと一時間か。

 電車が入ってくると、たくさんの人が、流れてくる。
 皆、空なんて見上げず、まっすぐに乗り換えの線に向かって歩いていく。



「――――……」

 世の中、こんなにたくさんの人が居るのにな。
 今オレが待ってるのは、たった一人。とか。

 なんか、くすぐったい。


  ぼー、とひたすら、啓介を待ちながら、空を見上げていると。



「雅己」


 啓介の声がして。
 振り返ったら、一日半ぶりの、笑顔。


「ただいま」

 啓介がオレの頭に手を置いて、ぐりぐり撫でてくる。
 いつもなら、外で撫でんなと、絶対言う所なのだけど。
 なんか嬉しくて、「おかえり」と笑顔になってしまう。


「――――……元気やった? 雅己」

 笑顔の啓介が、めちゃくちゃ嬉しい。

「うん」

 と頷くと、元気そうやな、良かった良かった、と啓介も笑う。

「結構待ってた?」
「ん。ちょっと早く来ちゃったけど――――……空が綺麗だったから、見てたら時間すぎてた」

「ああ、ほんま。綺麗やな」

 啓介も、手すりに触れながら、空を見上げる。


「昨日のピンクも綺麗やったけど――――……今日はオレンジやな」
「うん」


「……今日は一緒に見れて良かったな」


 夕陽からオレに視線を移して、クスクス笑う啓介に、オレも、ん、と笑う。






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