【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

悠里

文字の大きさ
上 下
169 / 250
第2章

「ピンクの空」4

しおりを挟む



 今日は午前中は、すっごくゆっくりした。

 本を読んで。テレビを何となくつけて。
 いつもなら啓介が淹れてくれるコーヒーを自分で淹れて。

 よく考えたら、この家に引っ越してきて、長い時間一人になるのは、初めてだったから、何だか不思議な感じがした。

 この家で、初めて、啓介が居ない。

 ちょっと変なの。
 なんて思いながらも、まだ朝別れて、数時間だし、快適に過ごしていた。

 昼食後、啓介から電話がかかってきた。

「元気にしとる?」「昼何食べた?」「外出た?暑いから気ぃつけろや?」「午前中何しとったの?」「戸締りちゃんとしとる?」

 ……って、何聞かれてんの。
 オレは子供か? て言いたくなるような心配をされ。
 苦笑いで全部答えた。

 これから親戚で集まって法事らしい。
 啓介のお母さんが、大阪に帰る事を自分のママ友達に言い、そこから、その友達の子に伝わって、啓介が帰る事を知った友達らが集まろうと言ってきたらしく、夜はご飯を食べに行ってからおばあちゃんの家に行く事になったらしい。

 うんうん、いいんじゃない?
 そう答えて、オレ先寝てるから夜電話しなくて良いよ、と伝えた。

 友達と楽しんでくればいいと思ったし。
 別に何の心配もしてないし。

 啓介も、電話できたらするけど、出来なかったら、朝するから、と言ってた。

 まだ十四時か~。
 啓介が居ると、瞬く間に過ぎていく時間が、一人だと、本当にゆっくり過ぎていくんだなあと少し不思議。同じ時間の流れだとは、思えない。


 まあこれはこれで、たまにはいいかも。
 ソファに転がって、いつもはゆっくり読めない本を読み始めた。


 しばらくは集中して本を読んでいたのだけれど、段々眠くなってきて、うとうとして――――……。




◇ ◇ ◇ ◇




「うわ……すっげー……」


 本を読みながら眠ってしまって、目覚めた途端。
 部屋に広がっている光景に、思わずそう漏らした。

 時計を見ると、もうすぐ十八時半。
 あれ。なんかものすごいがっつり寝てたかも。十六時位から寝ちゃったかな。

 冬ならば真っ暗なこの時間も、夏の今は、まだ明るい。 

 が。
 ただ、明るいだけならばいつもの事なのだけど。

 ――――……今日の明るさは 特別、だった。

 ソファから立ち上がって、窓を開けるとベランダに出た。
 一面、ピンク色。

 ――――……ピンク色の沈みかけた太陽と、ピンク色の空と雲。


「すっげーキレイ……」

 その光を受けて、部屋までが、ピンク色に染まっていた。



「―――……啓介……見てっかなぁ……」

 しばらく見つめていたオレは、自分から零れた言葉に気付いて、思わず苦笑い。


 大阪と東京と、天気が一緒かどうかも分からないのに。


 ――――……でも、この空、あいつも見れてたら、いいなあ。
 なんて思った。




しおりを挟む
****
読んでくださってありがとうございます♡
気に入って下さったら、お気に入り登録 & 感想など聞かせて頂けると、嬉しいです(^^)

感想 71

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

処理中です...