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第2章

「キスするために?」

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「―――……っ」

 啓介が手首を押さえたまま、オレの指に舌を這わせる。

 ――――……啓介がオレを抱く時。たまにする行為。
 不意に感覚が甦ってきて、ギュ、と目を閉じる。

「雅己……?」
「……っ――――……」

 いつの間にか、オレの指から舌は離れて――――……。
 頬に触れられて引き寄せられて、啓介の唇が、唇に重なってくる。


「……ん、ぅ……」

 深いキスに、ますます感覚が鋭くなる。
 ぞくぞくしたものが背筋を走る。

 しばらくキスされて、啓介の服に、ぎゅ、としがみついた時。
 ゆっくりと唇を離しながら、啓介がクスッと微笑んだ。

「すぐ、とろんてするなぁ?」

 目を細めて笑いながら、頬を撫でながら、首筋に手を触れさせてくる。

「……な、んなの、マジで」

 上がってしまった息を押さえながら、オレが眉を寄せて啓介を睨むと、啓介はクスクス笑ってまた抱き寄せてくる。

「……雅己の指、ほんまキレイやなぁて、思て」

 言われた言葉に、オレは目を丸くする。

「……っそんなんで、人の指なめンなよっ!」

 何してくれんの、ほんとに!

「……このまま押し倒したい気分」
「……っぜってーだめ」

 朝からこんな所で突然されたこんな行為に、思いっきりその気にさせられてしまった事が悔しくて、オレは、オレを見つめてくる瞳を、睨みつけた。
 啓介は、苦笑い。

「分かっとるけど……」

 ぐい、と腕を掴まれて引き寄せられてしまって。

「……っん……?……」

 再び、キスされる。

「……っ……ぅ……」

 遠慮も何もないディープキスに、感覚が飛んでしまいそうな気がする。
 オレがギュッと目を閉じた途端、唇が離れて……最後に唇を舐められる。


「……ふ……」

 声が漏れて。一生懸命息を整えてるオレの髪の毛を、啓介は撫でてる。


「……まあ、しゃあない……食べよか」
「……っ……もう、ほんと、啓介……いいかげんにしろよっ」
「ん?」

 お前のキスとかって、そーいう事に直結するんだよ!!
 もーっっ!

 中途半端にオレを煽って離すのとか、マジひどい!


「もー、ベッド以外で、キスすんの禁止」
「は? ……嫌やけど?」

 ものすごく嫌そうな顔で見られる。

「……っ嫌なの、こっちだっつーの!! 絶対禁止!」


 いつでもどこでも、エロ魔人ー! 
 朝から、アホかー!

 心の中で必死に叫びつつ、パンを口に頬張る。

「何で禁止なん?」
「……るさい」

「感じてまうから?」
「……っ黙って、食べろよ」

 もう、バカ。
 啓介のバカ。


「――――……雅己にキスするために生きてんのに」
「……お前ほんとに、バカなの?」


 思わず本気で冷たく言い捨てたオレに、
 啓介はおかしそうに、笑う。




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