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第2章
「ありがと」
しおりを挟む「なー……けーすけ……」
「ん?」
やっとキスから解放されて、啓介の腕の中。向かい合う感じで、うとうとしながらぽつぽつ話す時間。いつもこの時は、ものすごく穏やかな気がする。
「テスト終わったし……来週が終わったら夏休みだなー……」
「ん。せやな」
「そうだ、バイト、良さそうなとこあるって言ってたじゃん。どうなった……?」
「あ、せや。決まったんやった。朝メール来とった」
「え。そうなの?」
うとうとしてたのに、急に目が覚めた。啓介の顔を見つめる。
「八月一日から二週間やて」
「採用されたってこと? もう決まりでいーの?」
「そ」
「そうなんだー……ありがとな」
「ん」
くす、と笑って、啓介がオレを撫でてる。
「どんなとこ?」
「江の島の海の家。なんか近くにアパートがあって、そこに住み込みやて」
「わー、楽しそ―……ん? アパートって、家賃とか取られない?」
「大家さんなんかなぁ? とにかく、空いてるとこやから、ただやて」
「へー……」
「休みもあるし、一日最低五時間とかからでええらしいから。まあ最低、やから実際どうなるかはわからんけど――――……あそぼーな?」
「……うん、あそぼ」
ふ、と、笑みが勝手に零れる。
すごく、楽しそうで、嬉しいなと思ってしまう。
「江の島かー……水族館、いこ?」
「ええよ」
「近い?」
「近い」
「やった」
オレが喜んでると、啓介がクスクス笑う。
「水族館、何が好きなん?」
「クラゲ見たいー」
「あぁ。キレイやもんな」
「うん。ペンギンも」
「……ああ」
「何で今黙った?」
「いや。別に。……可愛ぇて思うん?」
何か笑いながら、オレを撫でてる。
「……可愛いだろ」
「ん、せやな」
頷きながらも、笑ってる。
「……イルカショーも見たいなー」
「ん。見よ」
少し顔を上げて、啓介を見上げた。
「海でも遊べるし。二人でアパートとか……なんか楽しみだなー」
「夜の海とか、キレイやろしな」
「うんうん」
わーなんかすっごい楽しみになってきた。
ああでも、どうなんだろ。
「なあな、海の家って、大変なのかな、仕事」
「どうやろ。まあ……八月はピークやな、きっと」
「そうだよなあ……あ、でも」
「ん?」
「でも啓介いるからなー。大丈夫かな」
「――――……」
何となくそう思って言うと、啓介はまた黙って、ふ、と笑う。
……なんか。啓介が唇と瞳だけで笑う感じ、好きかも。
「じゃあさ、七月はどーする……?」
「バスケの皆と行くのは七月にしよか。学校の皆で遊んでもええよ」
「ん。……楽しみだね、夏休み」
言いながら、ふわふわと欠伸が出てくる。
啓介が笑いながら、オレの頬に触れる。
「眠いん?」
「……ん、ねむい……」
少し目を擦ったら、頬に触れてた啓介の手に触れる。
すると、クスクス笑いながら、手を握られた。
「――――……雅己、手、ぬくい……眠いから?」
「……ん」
クーラーついてて、少し肌寒い。
下着だけ履いて、薄い布団の中で密着してるんだけど。
くっついてる肌が気持ちいい。
ぎゅ、と抱き寄せられる。
「 ――――……けーすけ……」
眠い。
けど。
「んー?……なんや?」
すり、と頭で啓介の顎に触れた。
「――――……ありがと……」
「……何が?」
「いろいろ……」
「……ん」
オレの言葉に、少し笑いを含んだ声で頷いて、より密着した気がする。
「……おやすみー……」
「……ん、おやすみ」
優しい声がして、優しく頭撫でられて。
あっという間に、眠りについていた。
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