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第2章

「セリフ」※

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「~~~~……っ……もぅ、いい」
「ん?」


「……別に……もう、いい」
「何が?」

 啓介が、ふ、と笑んで、オレの頬に触れて。少し首を傾げてくる。


「……なんか響きが嫌で。それは、なんか……皆が、早く捨てたいって言ってたのを聞いてたから。捨てなきゃいけないんだって思ってたから、な気がしてきたし……」
「ああ。まあ。……よう言うてたもんな」

 高校の頃とか思い出しているのか、啓介が苦笑いを浮かべてる。


「……よく考えたら、オレは、そんなに、捨てなきゃとか、捨てたいとか、もともとあんまり思ってなかったし――――……」
「……」

 ふ、と啓介がまた優しく笑む。

「……啓介とこうなったのに、女の子とするとかやだし」
「ん」

「啓介にするとか……オレ、絶対無理。出来ない、し」
「ん。……出来ない、し?」


 出来ないし。
 ……出来ないし、何? オレ。


 何言いたかった、今。


 出来ない、し――――…………。

 啓介がオレを見つめながら、ん?と、次の言葉を待ってる。



「だから――――……オレは、お前に、してほしい、から」
「――――……」


「……だから。もう、オレはしなくて、いい。一生そのままでもいい」


 言い終わった瞬間。ぐい、と顎を押さえられて上げさせられて。
 キスされて。深く、塞がれた。


「……ん――――……???」
「……雅己」

 名前、囁かれながら、舌が、中にねじ込まれる。


「……ん、ぅ――――……っ?」


 いきなりの熱いキスに。
 ついていけなくて。


「……っなに……あ……っ」

 さっきまで、優しく背中をポンポンしてくれてた啓介の手が、つ、と背筋を刺激しながら、なんか、やらしく、触れてくる。


「……っ風呂、でしないって……」
「無理。……雅己が悪い」
「……っ?……あ……っ」

 後ろにまわった啓介の指が、びっくりする位容易く、する、と中に入ってきて。


「……ん、ん……」

 かあっと、体が熱くなる。


「……や……っ」

 のけ反った唇を、塞がれる。


「んん、ん……っ……」


 何だこれ。
 ……何でこんな、急に。


「……っんん……ふ、ぁ……」

 指が、中の、気持ち良いとこ、触れる。
 体が、ビクビク、震えて。
 
 胸に、やらしく触れてた啓介の手が、乳首、きゅ、と摘まむ。

「ンぅ、……あ……っ」

 一瞬離れた唇。

「けいす――――……」

 また、重なって、舌が絡んで。
 激しくて溢れる唾液を飲み込み切れず、口の端から伝い落ちると。
 なんか。ゾクゾク、してしまう。


「……っん……」
「――――……オレに、してほしいとかさ……」

 少しだけキスが離れて。見つめられて。
 
「――――……?」

 なんでそんな。いきなりそんな、するモードになっちゃったのか、全然分からなくて。つか、今なんて??と、啓介を見上げていると。


「……してほしいとか言うたら、めっちゃ可愛ぇて、オレが思うのは分からんの?」
「………………」

 …………さっきのオレの、セリフ、か。
 ……そんな事で。……こんな、なるのか。


「……するけど。ええ?」
 

 一応聞いてるけど。
 ……絶対聞いてるだけだって、思う。

 ここでやだなんて言ったって。啓介、絶対聞かないし。

 だってもう。
 ……そういう顔、してるし。

 でもって、啓介にされるのが。
 頭おかしくなる位、気持ちいいのも。知ってるから。

 啓介のこんな瞳を見てると。
 後ろ。入ったままの指、締め付けて、しまう。


「――――……期待してるん?」

 くす、と笑う啓介。


「るさい……恥ずかしい事、言うなよ」

「……オレにしてほしいとか、そっちのセリフの方が、よっぽど恥ずかしくないん?」
「――――……だってそう思ったから……」

 啓介は、一度口を閉ざして。ため息を吐く。


「ほんまお前は、意識せんと、そういう事ばっか……」
「……んだよ」

 ばっかって何。オレそんな事ばっかり、言ってないし。

 ムッとして見上げると。
 啓介は、もうええ、と苦笑いで。


 オレの唇をまた塞いで。
 遠慮の欠片もなく、また、触れ始めた。





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