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第2章

「ぶくぶく」

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 啓介から避難して風呂に来たのだけど。

 やたらでっかい綺麗な風呂に、テンションが上がる。


 わー、ナニコレ。
 ひろーい!

 いいな、ラブホのバスルーム!
 ……これって、一緒に入るためにこんなに広いのかな?

 ――――……啓介。誰かと一緒に入ったのかな。
 ……まあそりゃ。入る事もあるよね……。

 …………ムカ。

 って。
 ――――……はー。
 オレと付き合ってもない、オレもまったく意識してない時。
 啓介が女の子とそういう事してても、何も悪くない。分かってる。

 オレに告ってからは、あいつは、すごく、誠実だし。

 ――――……その事も、謝ってくれた。
 女の子とそういう事してた事も。
 オレに謝る必要なんか、無い事なのに。

 謝ってくれたのもあって、余計、怒っちゃいけないと思うし。
 ――――……啓介を責めたらいけないと、思ってる。


 シャワーで、お湯を浴びながら。
 オレは、目をつむる。

 啓介は、何も悪くない。
 分かってるんだよな……。ほんとに。

 何となく、時間稼ぎをしたくて、バスタブにお湯を張る事に決めた。
 髪を洗って、体を洗う。ゆっくりしている間に、お湯はある程度たまってきた。

 中に入って、置いてあった入浴剤を投入。
 途端にお湯が白くなって、良い香りが、ふわっと香る。


 わあ――――……柔らかくて良い香りだなー……。



 ――――……啓介はオレに甘いから、
 オレがこういうので、ちょっと怒っても、許してくれる。

 ていうか。謝る事なんか無いのに、謝ってもくれる。
 
 でも。

 オレが女の子とは経験なくて。なのに。
 啓介は、あるんだよなあ……。

 しかも、オレとだって、啓介が、上、だし。


 ぶくぶくぶく。
 顔半分、お湯に沈み込んでいると。

「雅己ー?」
「……んー?」

 ドア越しに聞こえてきた声に、ぶくぶく沈んだまま喉の奥の方で声を出して答えると。


「長いけど。へーき?」
「……うん、平気。お湯に浸かってる」

 お湯から口を出して、そう言ったら。

「オレ入ってもええ?」
「――――……何もしないなら」

「……ラブホで、そのセリフ言われるとは、思わんかった」

 啓介が笑ってる声がする。

「風呂ではしない。せやからええ?」
「うん……いーよ」

 ものすごい拒否るのもどうかと思って、そう答えたら。
 しばらくして、啓介が入ってきた。

 ちら、とオレを見て。

「顔赤いけど。のぼせてるんやない?」
「……大丈夫」

 そう言うと、啓介が少し笑って。それから、シャワーを浴び始めた。

 ――――……向こうを向いてるのを良い事に、啓介の後ろ姿、目に入れる。


 ……なんか、むかつくなぁ。


 頭を洗うために、上げてる腕。
 ――――……男っぽくてカッコいい。オレも啓介みたいな体がいいな。

 そんな風に思いながら、啓介をチラ見し続ける。


 
 その体で。
 女の子と、寝たんだよなぁ。……って。今更すぎだけど。

 オレも。
 ――――……しようと思えば、今からでも。女の子と、出来る?

 まあ。きっと、出来なくはない。と思う。

 ……でもなー。オレ、今啓介と付き合うって決めたから。

 ――――……それしたら、完全に浮気になっちゃうし。そんなのやだし。
 それはきっと、啓介怒っちゃうし。……もしかしたら、悲しませちゃうかもだし。それは嫌だ。


 ――――……だけど。それとは別に、ただ思うのは。


 ドーテー。
 という響き。

 受け入れたくない。
 なんとなく。


 これが受け入れられないのは、オレが、もともとは、女の子としたいって、思ってるからなのかなあ……。


 うーーん。
 どう考えたらいいんだー…………。



 また、お湯に口元、ぶくぶく沈んでいく。
 



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