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第2章
「オレのバカ…」
しおりを挟む「ねー、啓介さ」
「うん?」
「オレの事、いつか好きじゃなくなるかもとか、そういう心配は無いの?」
「無いけど?」
けろっとして、そう答える。
「……何で?」
「何でって、言われると……」
苦笑いしつつ。
「もう18年生きて来てるやろ、オレ」
「……オレもだけどね」
「ん。せやな」
クスクス笑って、啓介が頷いて。
「そん中で、オレ、お前より好きな奴、居ないし」
「……来年もっと好きな奴に会うかもよ?」
「今まで生きてきて、ダントツで、お前の事好きやのに?」
「――――……」
「いきなり来た奴を、お前より好きになると思う?」
「……啓介ってさ、オレの見た目、好きなの?」
「――――……好きやないと思うてんの?」
「……好きじゃないとまでは思わないけど……んー……もっともっと、好みどまんなかの人がさ、居たら? ……女の子で」
最後、ぼそっと付け加えて言ったら。
最後の言葉に、ぴく、と反応してオレを見て。
伸びてきた手に、頬をぶに、と引き延ばされた。
「最後のなんやねん」
「……いや、だって……」
「まだ言うねんな、それ。――――……雅己が、女がエエと思うてるってことなん?」
「え」
いや。……そうじゃない。
ぷるぷると首を振ると。
「……言うてないっけ? オレ、転校して、初めて会った時から、お前の事好きやけど」
「――――……そうなの?」
「……そもそも好きやなかったら、クラスちゃう奴とあんなに絡まんし」
「――――……」
「最初はそういう意味ではなかったけど……ずっと好きやけど。4年目か。ずーっと一緒に居って、ずーっと好きで、今やっと、家に引き込んだっちゅーのに。来年、多少好みの顔が来た言うて、お前から離れると思う?」
「――――……」
「オレ、これっぽっちも思わんけど」
言いながら、啓介は、オレを引き寄せて。
キスされた。
「――――……オレ、めーっちゃ、しつこいから。離れへんよ?」
「…………」
……そうだった。しつこい。
好きなバスケの選手もずーっと同じ人好きだったっけ……。
「諦めな」
クスクス笑って、啓介がまた、キスしてくる。
――――……諦めなって。
……別に、それ。
オレにとって、嫌な事じゃないから。「諦める」とかじゃないけどな。
「オレ、ずっとお前と居たら、雅己の事、今よりもっと、好きやと思うし」
「……」
「好きな奴と、ずーっと一緒に居るんやで? 好きにきまっとるやん」
「――――……その理屈で言ったら、離婚する奴とか、居ないと思うけど」
「……ん?」
「だってもとは好きで結婚して、でも、別れる人たちは別れるんじゃん?」
オレがそう言うと、啓介は、はー、とため息をついてみせて。
「――――……オレがどんだけ雅己好きやと思うてんの?」
「……わかんないけど……」
「心配なのは、お前がオレを嫌いになったら困るなーてとこやけど……」
「――――……」
「……今、オレの事好き?」
「……うん。まあ……好き」
「まあとか言うなや」
啓介は面白そうに苦笑い。
「雅己は、オレが今のままなら、ずっと好き?」
「……うん」
「ほしたら、平気なんやない? ずっと一緒に居るってことで」
うんうん、と、啓介は頷いてる。
もう。――――……ここまで自信満々に言い切られると、笑ってしまう。
「なんなのもう。啓介」
「ん?――――…… 機嫌直った?」
「機嫌て?」
聞き返してから、ああ、そっか。オレが怒ってたからここに居るんだった。
呆れたように笑ってる啓介に。
「うん」
と笑う。
「授業終わったら、ホテルな?」
「――――……」
…… …… ……。
あ。そうでした。
………あれ。なんか、考えると。
……………オレってば自分から誘ったかのような……。
うーんうーんうーん……? 何してんの、オレってば。
今更取り消しきかないよなあ、なんて。
啓介をちら、と見ると。啓介は、ご機嫌だし。
ああ、オレの馬鹿。
(2022/5/14)
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