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第2章

「何これ?」

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 2限が終わった所で、啓介に腕を掴まれた。


「雅己。昼、買いに行こ」
「う、ん」

「オレら用事あるから、またなぁ?」

 皆に勝手にそう言って、啓介がオレを引っ張って歩き出す。

「買って、どっか空いてる教室で食べよ。何買いたい?」
「……お弁当」

「じゃあ2号館の下行こ」

 かなりの早歩きで移動して、お弁当を購入。
 そのまま、3階まで上がって、開いてる小さい教室に2人で入った。


 隣で並んで。
 袋からお弁当を机に出した。

「いただきます」

 言いながら、お弁当の蓋を外して、割り箸を割る。

 隣に座ってる啓介は、オレを見てて。
 まだお弁当に触れない。


「食べねーの?」
「……オレな、色々考えとったんやけど」
「……うん」

「何を怒ってんのかなーって、さ」

 ちら、と啓介を見ると、ふ、と笑いながら、オレの頬に触れてくる。

「食べてええよ」

 ぷに、と頬を摘まんでから、そっと離される。
 啓介は蓋を開けて、一口食べてから、オレを見て。


「ホテル行く言うたんが、ムカついた?」
「――――……」

 ……まあ。それもあるけど。
 モグモグモグ。

「せやけど、オレがほんまに女とホテル行くとか思うてはないよな?」
「――――……」

 ……まあ、ない、とは思ってるけど。
 パクパク。モグモグ。

「さっきは、雅己があんまり話続けたくなさそうやったから、切り上げるために言うたんやで?」
「――――……」

 それも分かってるけど。
 モグモグモグモグ。

 そこで、啓介は、ぷ、と笑い出して。そっと手を伸ばして、オレの頬にぷに、と触れた。

「――――……昔の事で、怒っとる?」
「――――……」

「言ってもしゃあないから言わないけど、ムッとしとるんは、それ?」

 ……なんか、全部言う通りで、悔しい。
 自然と眉が寄って、啓介をジト目で見つめると。


「……それはなんや……んー。すまんとしか言えないけど」
「別に。謝ってほしいわけじゃないし」

 パクパクモグモグ。

「……その頃オレ付き合ってないし。だから、関係ないのも分かってる」
「――――……関係なくはないて。ごめんな?」

 よしよし、と撫でられると。なんか。自分が聞き分けない子供みたいで、腹立つ。

「今撫でんな」

 ちょっと、その手から避ける。

 分かってるし。
 ……昔の事だし。別に浮気されたとかじゃないし。

 別に啓介に清い体で居てほしかったとか、そん事思ってないし。……っつか、なんだ清い体って。アホなのか、オレ。何考えてんだ。もう。

 モグモグモグモグモグモグ。


「――――……」

 でもなんか。オレが行った事ないとこに。啓介が誰か知らない女と、そういう事する為だけに、そういうとこ行ってたって思うと。

 ……過去の事でも、なんか、とってもモヤモヤするというか。


 モグモグモグ。


「……雅己」
 
 また頬に触れた啓介が、クスクス笑う。


「ずーっとモグモグしてんの、ちょっと止まって。可愛いけど」

 よしよし、と頬、撫でられる。


「ホテル、行く? オレと」
「――――……」



「お前と行った事ないから。……お前と行ったとこ、て事にしたいかなとちょっと思うたんやけど」
「――――……」


「……あーでも勉強、するもんな。やっぱやめとくか」


 オレが返事をする前に、そう言って退こうとした啓介に。


「行く」

 ムッとしながら答えたオレ。

 って。
 やっぱり、馬鹿なんだろうか。



「――――……」

 え、という顔でオレを見た後。
 なんかすっごく優しい顔で笑んで。


「じゃあ、家帰ったら、バイク乗って、いこか?」

 すり、と頬を撫でられる。
 黙ったまま、頷くと、ん、と啓介が笑って、オレから手を離してお弁当を食べ始めた。


 なんか、今のやりとりで、分かったこと。

 ……他の奴と行ってて、オレと行ってないのが、嫌だった。みたい。
 



 何これ。
 どんな感情?? 変なの。オレ。





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