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第2章
「一括で」
しおりを挟む「……なんや雅己と話してたら あったまって来たわ」
啓介の声に、オレはまた微笑む。
「良かったな……んじゃオレ寝るぞー……」
本格的に寝の体勢に入ったはずのオレは、突然、ぐい、と動かされて。
枕に背を沈められ、啓介が上に押し乗ってくる。
「ちょ……」
びっくりして、啓介の顔を振り仰いだ瞬間。不意に塞がれる、唇。
「――――……っ!」
もー!!
何なんだよーー!!
オレは寝るんだー!
「――――……っ……ふ……」
抵抗もままならないし。息もままならない。
苦しいくらいの口付けに、翻弄される。
「……っん、ぅ……ん……」
長い事そのままキスされて。
思考が、まともに働かなくなった頃。啓介はゆっくりとオレを解放した。
「――――……お礼の一部……」
「……っっの、やろ……」
上がってしまった息が悔しくて、オレは真っ赤な顔のまま、啓介を睨む。
「明日でいいってば……っ」
「分割で払おうかなと」
「っいらねーよ! 一括で払え!」
冗談じゃないとばかりに叫ぶ。
「じゃあ雅己、明日たっぷり一括な……?」
「――――……っ」
……たっぷり一括? ん?
啓介のこの言葉に、動きを止めた。
「なあ、ええ?」
いや。ていうか嫌なんだけど。何、たっぷりって。
とは思ったのだけれど、よくよく考えてみれば。
「――――……ていうか、いつもじゃん」
いつもたっぷり一括じゃん……。
呆れながらそう言うけれど。
オレの呆れ顔なんて、気にもとめず。
「わーた。明日な」
嬉しそうに笑うと、啓介はオレを再び抱き締め直した。
「寝てええよ、雅己……」
逆らう気力も既にかけらも起きず、抱き締められるままにして、オレは再三瞳を閉じた。
「――――……何か……礼とか言ってさ……」
「ん?」
「……全然お前、何も払ってねえと思うんだけど」
「……ん?」
「どっちかていうと、オレのが払ってる気、すんだけど」
ため息をついたオレに、啓介はクスクス笑った。
「気のせいやな」
「……気のせい、ねえ……」
ちゅ、と額にキスされて。
なんかごまかされている気がするけれど。
ふ、と息を付いた。
「とりあえず おやすみ……」
はわはわと、あくびをして。
あっという間に襲ってくる眠気に、うとうとしてると。
「おやすみ」
クス、と優しく笑う気配がして。ちゅ、と頭にキスされて。
ぎゅ、と抱き締められて。
オレは少し、微笑んでしまう。
ま、いっか……。
あっためてもらってんのも、いつも、お互い様か……。
自分で言ったとは言え この調子だと、
明日は なかなか眠らせて貰えないんだろうなと 少々うんざりしつつ。
それでも、ぬくぬく抱き締めてくる啓介の体温が 幸せな気がして。
何だかすごく、ほこほことした気分で、眠りについた。
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