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第2章

「高いから」

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 結局、遅くまで勉強してて、そのまま寝ることにして。
 今日は抱かれずに眠った。のだけれど。夜中。

「……雅己……」

 呼ばれて目が覚めて。

「……なに?」

 寝ぼけながら、答えると。
 隣の啓介がオレの身体をぐい、と引き寄せた。

「……ん、ん ……?」

 寝ぼけ眼で啓介を見やる。

「もっとこっち 来て」
「……何ん…… オレ、眠いんだけど……」

「……何もせえへんから。抱かせて」
「……ん……?」

 だるいながらも、もそもそと動いて、オレはすっぽりと啓介の胸に納まった。

「……これでいい……?」

 啓介はオレの身体を更に抱き寄せて、足を絡める。


「……足、つめてぇ……」

 やだ。オレは啓介の足から逃れようとするけれど。絡んでて、外せない。


「……あっためてや」
「……やだ……つめてぇ……」

 もがいて逃れようとしていたオレは しばし後、諦める。

「……んとに冷てーぞ……」
「堪忍……」

 暗闇で。啓介がクスクス笑うのが分かる。

 かなり蒸し暑くてクーラーを入れて寝た。
 結構温度を下げて寝たら、布団に入ってなかった啓介の足が冷え切ったらしい……。

「……高いから……」
「ん?」

 オレの言葉に、啓介が不思議そうな声を出す。

「オレの睡眠奪った分と、暖めてやる分。 ……高いからな……」
「ん……」

 啓介がクスクス笑う。

「……高いて、何で払えばええん?」
「……考えとく」

 もう眠いから寝かせて。
 オレは瞳を伏せたまま寝ようと思ったのだけれど。

「そか、高いんか……」
「……ん? 何……?」

 もうほぼ一瞬で寝ようとしてたのにまた起こされ。
 完全に寝ぼけ声で問うと。

「……何で払おうか、考えとる」

 楽しげな啓介の返答。

「……妙な礼はいらねーかんな」

 眠いながらも、妙な雰囲気を感じ、オレはそう釘を刺した。

「んー……妙なて何や?」
「……もー……うっさい、お前。寝かせて」

「妙な礼って何なんか言うてくれんと気になって眠れへんなー」
「そんなデリケートじゃないだろ……もーオレほんと寝るんだから……」

 言ったオレは、啓介に顔を覗き込まれた。

「……妙な礼て何?」
 またしても、クスクス笑う啓介。

「今払ろてやろか?」

 その言葉に、オレは、はあ、とため息を付く。

「今日はいらねー。眠いもん」
「……今日、は?」
「……だから……」

 オレは、啓介の首に腕をかけ、ぐい、と引いた。
 そのまま、ゆっくりと、唇を重ねさせる。

「――――……明日払ってってば……」
「……雅己……」

「て事で……おやすみ……」

 啓介はぷ、と笑うと。そのまま、そうっとオレを抱き締めなおした。

「……明日かー……」
「うん、明日……」

 さ。寝よう。
 啓介に抱き締められたまま、また瞳を閉じる。




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