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第2章

「アイス♡」

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「せや、過去問もろたんや」
「ん?」

「去年の外国語の過去問。やってみる?」
「んー……うん、やってみる」

「ほしたら下のコンビニでコピーしてくるわ」
「オレも行く?」

 そう言うと、立ち上がった啓介が、首を振った。

「ええよ、まっとって。……小銭入れどこやったっけ」
「あ、ごめん。玄関に置いたままだ」

「ん。5分で帰ってくるから待っとって」
「はーい」

 啓介の声を聞きながら、うーん、と伸びをする。

 疲れたなー。
 啓介が居なかったら、オレ、ぜーーーったい、こんなに勉強してない。

 やっぱ、こういうとこ、まじめだなー、啓介。

 ごろんと、後ろに転がって、はー、と息を吐く。


 紅茶でも入れといてやろ。
 もそもそと立ち上がって、キッチンへ。

 お湯が沸いて、紅茶の葉にお湯を注いだ所で、啓介が帰ってきた。


「雅己―」
「おかえりー」

「アイス食べる?」
「食べる! 今紅茶入れてたんだ。飲むだろ?」
「ん、飲む。おーきに」
「うん」

 てことで、急遽、アイスと紅茶タイム。
 テーブルに紅茶を持って行くと、啓介がアイスとスプーンを渡してくれた。

「全国チェーンのコーヒーショップが出したコーヒーのアイスやて」
「美味しそう」

 わーい、と蓋を開けると、一番上に、ホイップクリーム。

「あれ?? 啓介のは無いの?」
「オレは一口だけもらおうと思うて。全部はいらんし」
「ふーん……」

 と返事をしながら。
 
「なあ、オレ、思ったんだけど」
「何をや?」

「お前と居ると、なんか甘いもん与えられすぎて、太りそう」
「――――……まあ別に、太ってもええけど」
「やだし」

 即、答えると、啓介がクックッと笑って。

「別にいっつも甘いモンなんて与えてないやろ?」
「美味しいチョコくれたり、甘いカフェオレ入れてくれるし、アイス買ってきてくれるし。しかもオレのだけ。これはオレだけを太らせて食おうとしてるとしか……」
「何で食うねん」

 啓介が笑いながらオレを見つめる。

「でもまあ。言われてみれば……。そしたら、アイスやめとくか?」
「え。やだ。食べる」

 オレが慌ててそう言うと、啓介は可笑しそうに笑う。

「なら文句言うなや」
「だって、目の前に置いて食べるなとかひどくない?」

「太るの嫌なんやろ」
「嫌だけど、ここにあったら無理」

「お前、ダイエットには向かなそうやな」

 クスクス笑われる。

「どーせ無理ですよー。ていうか、オレはダイエットするなら、運動するし」
「食事制限はせえへんってこと?」
「えー……うん、無理」

 ぱく、とアイスを食べると。

「あ、これ、うまーい」

 オレがそう言うと、啓介はふ、と笑う。


「一口」
「うん」

 スプーンにモリモリに盛って、啓介の口にぱく、と入れてやる。

「どう??」
「ん。ああ、そんな甘くないな。コーヒーの味、ちゃんとする」
「うんうん。もっと食べたい?」
「ええよ、食べな?」

 クスクス笑われて、ん?と啓介を見ると。

「そんな幸せそうに食べとる奴から、これ以上取れへんし」


 何でそんな笑うんだろ? と思いながら。

「じゃーもう全部食べちゃお」

 と言うと、頷いてから、啓介はまだ可笑しそうに笑ってて。 

「太らせて、まるごと美味しく食べんのもええかなぁ?」
「――――……なんか啓介が言うと変態っぽくてやだ」

「なんでやねん。お前がさっき言うたんやんか」
「……だから、啓介が言うとだってば」

 オレはめちゃめちゃ嫌な顔をしてそう言いつつも、アイスが美味しいので、ほくほく。

「……確かに、雅己って、食べ物でダイエットは出来そうにないタイプやな」
「うん。美味しいもの我慢するとか無理。運動する」

「まあええけど。うまい?」

「うん、めちゃくちゃおいしー」

 パクパク食べながら啓介に笑うと。
 はいはい、と笑われて。


「また買うてきたるよ」

 なんて言われる。



「やっぱり太らせて食べようとしてる?」
「まあ、ええよ。多少肉付きようなっても。触り心地ええんやないの?」


 そんな風に言われて。


「――――……オレ明日、走ってくる」



 そう言うと、また啓介に、笑われた。


 
 
 
 





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