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第2章

「シラフじゃ無理」

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 今日も学校から帰ってから、テスト勉強中。
 ちょっと何か飲み物入れてくると言った啓介が、戻ってきた。
 
「コーヒー淹れ直したから。飲んで」
「うん……カフェオレ?」

 そう言うと、ふ、と笑って、「ブラック」と言われた。
 えー無理……牛乳入れていい?と言ったら、啓介はクスクス笑いながら、オレを見下ろした。

「カフェオレ」
「ありがと」

 差し出してくれたカップを手に取る。少し冷ましながら一口。

「うまーい……」

 ぷ、と笑った啓介はオレの頭を撫でてから、オレの目の前に座り直す。

「啓介のもカフェオレ?」
「ブラック」

「……苦くねえ?」
「コーヒーやからな……」

「……ん? なんで笑ってんの?」

「お前のは、コーヒーてより、牛乳にちょっぴりコーヒー入ってるみたいな。それは苦くないやろなーと思うて」

 言いながら、クスクス笑ってる。

「なんかバカにしてる?」
「いや? 可愛ぇなと思てる」

 ……何言ってんだ。

「啓介、ちょっと飲まして、ブラック。目、覚めるかな……」
「ん、えーよ」

 はい、と渡され、代わりにオレのカフェオレをとりあえず啓介に渡す。

「啓介も飲んでいいよ」
「――――……ん」

 クスクス笑いながら、一口飲んでる。

「美味し?」
「ん、まあ」

 ふ、と笑ってる啓介を横目に、啓介のブラックを一口。

 ……うん。まあ。……コーヒー、だな。
 飲めない事は、ない……。いや。

 ……やっぱり、にっが。うぇ。

 自分がしかめっ面になってるのが分かる。

「ありがと、返す」
「ん」

 啓介のカップを返すと、代わりにカフェオレが戻ってきた。
 こく、と一口飲んで、美味しーと、笑顔になってしまう。

「――――……雅己」
「ん?」

「少しだけ。おいで」

 くいくい、と手招きされて。
 ――――……なんとなく察知するんだけど。

 まあ別に、いっか。
 なんて思って。

 カフェオレをテーブルに置くと、膝で立って啓介の方に近付く。

 啓介の手が、オレの後頭部に回って、ぐい、と引っ張られて。
 唇が重なった。そのまま、啓介の腕の中。


 最初は、優しいキスで。
 触れるだけ見たいな感じだったんだけど。


「ん……っ――――……」

 舌が不意に入ってきて、絡められる。

「んん……? っん……」

 思ってたよりずっと、キツくなっていく。
 ……何なんだ、啓介。


「――――……っん……」

 ぞく、と快感が走る。

 ――――……啓介のキスがエロイからいけないんだ。


「やめ……まだ、勉、強――――……」
「――――……ん」

 クス、と笑った啓介が、ゆっくりキスを離す。
 ぽふ、と抱き締められて、むー、と膨れてしまう。


「……なんなの。途中から、きついんだけど」
「なんや、キスしてて、幸せそうにしとるから。可愛えなーと……」

 クスクス笑った啓介に、ちゅ、と頬にキスされた。

「……顔、赤」
「るさい」

 ……バカなのか、啓介。
 なんかすげえ、恥ずかしいっつーの。バカ。もう。バカ。

「勉強するか、しゃあない……」

 しゃあない、じゃない。もう。
 バカ。

 はー、とため息をつきながら。

 こんな一瞬でゾクゾクしてしまった感覚を飛ばしたくて、頭を少し振ってから。啓介の向かいに座った。

「早く勉強終わらして、ベッドいこ? 続きしよ」
「――――……っ」

 もうほんと、嫌、こいつ。

 啓介は楽しそうに、クスクス笑うけど。
 シラフでそういうのに答えるのは、やっぱ、まだ無理なので、オレはひたすら無視して、教科書に向かった。


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