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第2章
「不純?」
しおりを挟む「とりあえず英語は範囲まで終わった」
「ん。オレも一応終わったと思うわ……あ、雅己、さっきのチョコ、食べるか? 持ってくる?」
「んーいい、一緒に行く。なんか飲もうよ」
「ん。せやな」
空いたグラスとコースターを手に2人で立ち上がって、キッチンに向かう。
「なんかオレってさ」
「ん?」
「高校で啓介と会ってからさ」
「ん」
「ずーっと、一緒にテスト勉強してきた気がする」
「あー。せやな」
「啓介が誰かと付き合ってても、テスト勉強だけは何か、2人でしてたっけ?」
「……まあ。せやな」
流しにグラスを置いてから、ふと、啓介を見上げる。
「……ていうか、ほんとに全部のテスト勉強一緒にしてたような気がしてきたような……」
「――――……まあ。しとったよ」
ぷ、と啓介が笑う。
「ような、やなくて。 絶対全部してた」
「あれ、そうなの? って、それって、何で?」
聞くと、啓介はますますおかしそうに笑って。
「最初に、一緒に勉強しようみたいな事、言うたんは、お前なんやけど、覚えとる?」
グラスを、洗剤のついたスポンジで洗いながら、「覚えてる。数学とか嫌いだから、教えてって言った」と、オレが答えると。
「んで、一緒に勉強したんやけど……雅己って教えればできるんやけど、あれ、1人でやっとったら、分からない所で挫折して勉強しなくなる奴やなーって、思うて」
「――――……」
よくお分かりで。
「うちの高校、附属やけど、内申とってないと大学進めなかったやろ。結構条件、厳しかったやんか」
「うん」
「せめて大学、一緒がええって、思うてたから」
「あ、それで毎回、一緒に勉強してくれてたの?」
オレの洗った泡のついたグラスを水で流しながら、啓介が笑う。
「そ」
「啓介居なかったら、オレ、この大学じゃなかったかもしれないね」
クスクス笑うオレに。
「オレ居なくても、どこかで気づいて、雅己は1人でも頑張ったかもしれへんし、それは分からんけどな?」
「そうだなあ……してないかも。啓介居なかったら、なんかもっと適当にして、他の大学いってたかなあ……」
グラスを洗い終えて、タオルで手を拭く。
「啓介、何飲みたい? 次は紅茶にする?」
「ん。ええよ」
「じゃあお湯沸かすね」
電気ケトルに水を入れて、スイッチを押す。
「……まあ。でもテスト勉強って名目で――――……」
「――――……?」
啓介はクスッと笑いながら、オレの両頬を挟んだ。
「一緒に居たかっただけかもしれへんけど」
「――――……」
「テスト勉強って言えば、雅己が連泊しててもどっちの親も、何も言わんし」
言いながら、ちゅ、とキスされる。
「うわー。動機、不純ー、啓介」
「でも別に手ぇ出してへんし。偉かったやろ、オレ」
「それ偉いの?」
「偉いやろ」
クスクス笑う啓介の唇が、また重なってくる。
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