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第2章
「好きだから」
しおりを挟む「……雅己?」
部屋の電気もつけずに、ぼーっとしてたからか、何だかすごく静かな感じで、啓介がオレの名を呼んだ。部屋の入口に立ったまま、入ってこない。
「どした?」
「別に。 ぼーっとしてただけだよ」
そう答えて、啓介の方を見ると。
静かに近寄ってきた啓介が、オレの隣に腰かけた。
「――――……」
……なんか、静か。
隣の啓介をただ見つめてると。啓介が、ふ、と笑った。
「ん?」
「――――……なんか、嘘みたいやなーて思うて」
「何が?」
「お前とほんまに、こうなったのが」
「――――……」
「……付き合えばいいんだろ、から始まったし――――…… いつ、もう嫌だって言われるかなとも、やっぱ覚悟もしとったし」
「――――……え、そうなの? 意外……」
「そりゃそうやろ。もともとお前、女の子が好きやろし。――――……オレの好きとは、全然ちゃうの分かっとったし」
「――――……」
「それでも、無理矢理でも、オレの方に向けて、何なら、体からでもええし、とも思うてたから。 全部無理して進めたけど」
「無理してって――――……分かってやってたんだな」
ぷ、と笑ってしまう。でも啓介は、笑わなかった。
「――――……この話で、笑うんやな、お前」
「え? どういう意味?」
マジメな顔の啓介を、まじまじと見つめてしまう。
「……嫌やないの? なんや、めちゃくちゃ流された気、せえへん?」
「……流されて?」
流されてんの? オレ。
――――……まあ確かに……お前とすんの、気持ちいいってのも、抵抗できなかった理由ではあるけど。
……でも、お前の事嫌いだったら、気持ちよくなるはずがないのも分かってるし。 好きじゃなかったら、キスなんか、絶対してないし。
「……迷ったり悩んでた間にすごいいっぱい考えてた事は、もう今はどうでもいいっていうかさ……オレちゃんと、たくさん考えて、もう、ちゃんと、決めたし」
「――――……ん……」
「……とりあえず、嫌だったら、流されてもないと思う」
「――――……」
「好きだから、流されたんだろ、オレ」
出てきた言葉はそれだった。
それ以上は、何も 言う事が無くて。
啓介から返事がなくても、何も追加で話す言葉は浮かばなくて、
ただ、啓介をじっと見つめていると。
啓介は、しばらく、固まって。
それから、ふわ、と。 すごく嬉しそうに、笑った。
「ほんま、お前って――――……」
「……なに?」
「……めっちゃ単純で――――…… まっすぐで……」
「――――……」
……バカにしてんのかな?
……単純もまっすぐも一緒じゃね……?
「……オレ、最初会った時から、好きやったなー、お前の事」
「――――……」
咄嗟に言い返せなくて、赤くなったオレに、啓介がくす、と笑って。
伸びてきたその手が、頬に触れた。
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