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第1章
「ほんとに好きなら」
しおりを挟む朝から甘々啓介と一緒に大学にやってきて。
授業を受けて昼になった。
一緒に受けてた皆と、食堂に流れて、適当に座る。
啓介は少し離れた。
別にこういう時、必ず隣に座る訳ではない。
昨日から、……ほんとに、付き合う事になっちゃったけど。そこは今まで通りと変わらないみたい。
まあ、でも、そんなにいつも隣キープされても嫌だもんな。うん。
変な噂が立つのも、やっぱりやだし。
荷物を置いて、財布だけ持って食事を買いに歩き始める。
「なー雅己、聞いてよ」
「んん?」
和馬に肩を組まれて、近づかれる。
「何、どーしたの?」
「オレさぁ、昨日さあ」
「うん」
「好きな子に告白したの」
「おお。そうなんだ。それで??」
「……なんか、気になる奴が居るんだって」
「おお。……振られたってこと??」
慰めてって事かな??
和馬の顔を見ると、何だか複雑そう。
「それがさぁ、フラれたなら諦めるしかないんだけど……」
「うん」
「なんか、オレの事も気になるっていうんだよ」
「――――……」
オレの事「も」気になる……。
――――……うーーーん? 「も」かあ……。
「で結局、考えさせてって言われてさ」
「返事待ちなの?」
「うんそー。雅己ならどーする?」
「うーん……ほんとに好きなら、返事来るまで、待つけどな」
「でもさー。他にも気になる奴、居るんだよ? OK貰っても、気にならない?」
「えー……OKくれた時点で、選んでくれたのかなあって、思う、かなあ?」
「……んー、そっか」
「うん。和馬が、ほんとに好きなら、いいんじゃない? 付き合ってから、もっと好きになってもらえるようにすればいい気がする」
「――――……」
和馬、しばらくオレの顔を見て、んー、と考えていたけれど。
そうだな、と笑った。
「……待つわ、返事」
「あ、うん」
今ので、待つってなるってことは、ほんとに好きなんだな。うん。
「うまくいくといいね」
「うん。サンキュ」
トレイを持って、並びながら、和馬がクスクス笑う。
「なんか雅己だと、そういう答えくれそうな気がした」
「え??」
「この話さ、朝から何人かにしたんだけどさ」
「うん」
「皆、比べられてる時点で嫌だとか。オレの事も気になるとか何それ、とか。結構否定的だったんだよね」
「……そうなんだ」
まあ、「も」は少しは引っかかるけど。
でも、その子の素直な気持ちだろうしなあ……。
逆に、気になる人が居ても、考えてくれるんだと、思うような。
「オレはさ、ほんとに好きだったから告白してさ。今気になる奴が居ても、オレの事も気になってくれてるならいいかなあとか思ってたんだけど」
「うん」
「結構皆が、嫌だっつーから、じゃあオレも嫌かなーって思い始めてて」
「うん……」
「でもなんか、お前は、違う事言うかなーとか思って聞いたんだけど」
和馬はクスクス笑って、オレを見て。
「聞いてよかった。もし選んでくれたら、好きになってもらうように頑張るって、なんか思った」
「うん」
何となく笑顔で頷いていると。
「まあ、選んでくれたら、なんだけどさ」
「良い返事だと、いいねー。どこの子? 学校の子じゃないの?」
「うん、バイト先の子」
「へーそうなんだー。ていうか、バイト先って、断られたら気まずいんじゃないの?」
「それは言うなって……」
和馬の嫌そうな顔に、ぷ、と笑ってしまう。
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