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第1章
「好きは好き」
しおりを挟むリビングに行くと、啓介が「おかえり」と、笑ってくれた。
朝ごはんがテーブルに並んでる。
「座ってや、雅己」
「うん」
「飯食うたらドライヤーするから」
言いながら、目の前にコーヒーを置いてくれる。
「……ん」
……だから。
んー。……めちゃくちゃ甘やかすなっつの。
「……いい、自分でやる」
「……ん?」
「……なんか全部やってもらうのやだ」
「……せやから、なんで?」
「何となく……」
「――――……」
ちょっと黙った啓介が。
オレの隣に歩いてきて。
顎、持たれて――――……キスされた。
と。思ったら。
「……っ……ん……?」
いきなり激しいキスに、ぎゅ、と目をつむる。
「っ――――……けいすけ?……なに?……」
唇が離れて。
啓介がクスクス笑った。
「――――……オレ、お前の事、めちゃくちゃ、可愛がりたいから」
「……っ」
「させといて」
言って、頬に優しく、キスしてくる。
「……あんまり、甘やかすと、オレ、動かなくなるぞ」
「――――……ん?」
啓介は、クスクス笑って、目を細めてくる。
「甘やかしすぎると、調子にのって、何もしなくなるけど、いい?」
「――――……んー……そーやなあ……」
「やだろ?」
「……んー。 ……ええよ、そうなっても」
クスクス笑う。
「え、いいの……??」
「ん。ええよ」
「え、そんなのほんとにいいの? やだろ?」
「まあ雅己はそんなの嫌がるから、ならないやろうなーとも思うんやけど」
「……」
「オレが居ないと生きてけないようになるんでもええかなと、今思うた」
「………」
「雅己がなんもせんでも、オレの隣に居てくれるならええかも」
「――――……」
……うう。……なんか、もういいや。
恥ずかしくなってきた。
「……ご飯食べる」
「ん。座って」
くす、と笑われて、手を離される。
「……いただきます」
なんか腑に落ちないままそう言って、ご飯を食べ始める。
何だか面白そうに、ぷ、と笑いながら、啓介は、オレの向かい側に座る。
「――――……お前、ほんと、おかしい」
「そう?」
「……オレに甘すぎ。……もうオレ、ずっと寝てようかな……」
「んー? ……まあ、ええよ。……その代わり、オレ、お前好きにするから」
「ん?」
「お前が何もしないで寝てるかわりに、オレはお前を好きにさせてもらおうと思て」
「なにそれ?」
「んー。甘やかして、可愛がってやるから、ご褒美に、めちゃくちゃ手ぇ出させてってのはどうや?」
「……朝から、マジで、おかしいからな、お前」
なんでそんな、エロい感じで嬉しそうなの。
冗談なのかな本気なのかな。
……冗談であってほしいけど。
楽しそうな啓介見てると、本気な気もしてきて。
朝から、甘々でエロい感じの啓介に。
ついていけない。
……ちゃんと付き合うって決めたけど。
…………遠慮なくこうなると。結構、恥ずかしいし。大変かも……?
黙ってれば超カッコイイのになあ、啓介。
……って別に喋っててもカッコいいけど。
…………言うこと、とってもおかしいんだよなあ。
じっと見つめてると、ん?とにっこり笑われる。
――――……まあ。
…………そんなんでも、好きは好きなんだけど。
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