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第1章

「目覚めると」

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「雅己……雅己?」

 優しい声がして、優しい手が、頭を撫でる。

「――――……ん……?」

 ゆっくり目を開けると、啓介が立ってて、オレをのぞき込んで、ふ、と笑った。

「はよ」

 頬に、ちゅ、とキスされる。

 ……だるくて。動けない。

「……ん……啓介、何時……?」
「7時」

 言いながら、啓介が、カーテンを開ける。

「シャワー浴びるやろ?」
「……ん……」

 浴びたいけど…… だるすぎる。
 ――――……動けない……。

 啓介を見ると、もうすっかり、着替え終わって、すっきり目覚めてる感じ。

「……もうシャワー、浴びた……?」
「ん、先浴びた」

「――――……元気だね……啓介……」

 思わずそう言うと、啓介がぷっと笑って、ベッドの端に腰かけた。
 手が伸びてきて、また、頭を撫でられる。

「……昨日無理したから、お前は、しゃあないな……」

 よしよし、と撫でられて。

 ……昨日無理した、の一言に、昨日の事を思い出して。


「……っ……」

 ごろんと転がって、枕に突っ伏した。
 そのまま、沈んだまま起き上がれない。


 そしたら、頭の横でギシ、と音が鳴って。
 ふわ、とシャンプーの香りがする位、近づいてきて。

 啓介がうなじに、キスしてきた。


「――――……っ……」

 ちゅ、と吸いつかれて。
 びく、と体が揺れた。


「――――……っ……啓介……」

 吸い付かれたそこを手で押さえて、がば、と起き上がる。
 真っ赤になった、と思う。

 啓介は、クッと笑って。くしゃくしゃ、と髪を撫でてきた。


「シャワー浴びて来いや。朝用意しとくから」


 クスクス笑いながら、啓介が出て行った。


 ……つか。
 ――――……ほんとに……。

 なんな訳。
 ………ベタベタに甘すぎ……。


「――――……っ……」

 朝からついていけない……。

 今まで、加減してたのかな……。
 ……してるとは、思ってなかったけど……。

 ゆっくり起きて。
 バスルームに行って。シャワーで目覚める。


 ――――………。

 なんか。 
 オレ。

 昨日、完全に……自分の気持を、認めたというか。
 ……啓介を、受け入れた、というか。


 ――――……やけくそで、もう分かった、とかじゃなくて。
 ちゃんと、啓介と。付き合う事に、したんだ、よな。


 うわ……。
 ……はずかしすぎ……。

 ……何でこんな事になったんだろ。

 どう考えたって、啓介は、大好きな、ただの、友達。だったのに。

 悩みながらバスルームを出て、タオルで拭いてから、服を着た。
 髪の水滴を拭きながら。鏡の前に立つ。

「――――……」

 なんか。
 惚けた顔、してる気がする。

 ぴしぴし、と頬を叩いて、引き締める。


 うー……。
 ……あんま、オレを、甘やかさないでほしい、かも……。





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