上 下
79 / 249
第1章

「頑張る」

しおりを挟む

 オレから、深く重ねて、キス、したのに。
 啓介は、でも、それ以上は、触れて、こない。

 これは、もしかして、まだ……。


「――――……」


 もう。……オレ、もう、お前と居るって言ったのに。
 オレのあの「お願い」に、引っかかってるってこと……??


「……っもう、いいよ、ちゃんとキスして」
「……もうええの?」

「……だから……っいいってば」

 言うと。啓介は、じっとオレを見つめる。


「キス許すなら、その先も許せや」
「――――……」

 はー……ほんとに……。


「……もう、良いって、言ってんじゃん……」

 オレは、啓介を見上げて。 
 再び、キスして、舌で啓介の舌をなめてみた。

 のに。
 なんと、引き離された。

 く。
 こいつ……。


「――――……抱かれるん、何で嫌やった?」

 で、その質問。
 ……嫌がった理由、言わないと、しないって事か……。


「……嫌だったっていうか……お前、きっとオレとは居なくなんのに……」
「――――……それ、もう思うなや?」

 少し眉が寄る啓介に、じっと見つめられて、小さく頷く。

「……でも何かオレ、多分ずっとそう思ってたのに……普通にお前と、したいなって思っちゃって……」

 そう言ったら、啓介が「は?」と首を傾げた。

「……なんか、勝手に、する時の事考えて、やばかったりして……してても、気持ち良すぎて怖かったし……」

「――――……何やそれ。 嫌んなってた訳ちゃうん?」

「……だから、意味分かんなくなってくのは、嫌だった」
「――――……それは、嫌っちゅうんやないやろ」

 言われて、口を噤む。
 
「……で…… オレ、こんなんで女の子と出来るのかなーって思ったし」
「何で女?」

 啓介が即座に、低い声で言う。

「啓介が女の子に戻るならだけど……いつか戻ると思ってたし……。オレ、お前以外の男なんて絶対無理だから、啓介以外とってなるなら絶対女の子だし。でも、こんなままで大丈夫かなあと思ったし……」
「――――……」


 啓介の事、好きではあるけど、未来までは信じてなくて、きっと女子に戻ると思ってて。だから、あんまり気持ちよく抱かれ過ぎて、それだけになるのが、嫌だった。……としか、思えない。

 あんまり気持ち良い事、オレにこれ以上、教えないで欲しかったし。


「アホやな、雅己」
「――――……」


「……オレ、お前離さんから、そんな心配しなくてええよ」
「――――……」

「……離してほしく、ないんやろ?」


 言われて、啓介を見上げる。

 ……そういう事……なのか。オレ。

 ――――……じゃあ、お前がオレを離さないなら。
 オレは、もう……どうされても、構わない……のかな……。


「オレ、こないだ条件出したやろ?  お前が良いって言うまでしない代わりに、次抱いてええってなった時は――――……もう、嫌ばっかり言わないようにするて。覚えとる?」
「……覚えてる」

「――――……守れる?」
「……」


 ……お前がオレを女子と比べたりしなくて……いつかお前が、女子のとこに消えてかないなら。


 ……オレ、お前とするのは――――…… 嫌じゃない。
 


「……嫌だって、言わない……ように頑張る」

 言った瞬間。
 ふわ、と啓介が、めちゃくちゃ優しく笑った。

 その笑顔に、心臓が、どき、と動いた。

 ……っ……今更、笑った顔位で。
 何で、どきっとするかな。オレ。
 


「あーもう。ほんま、可愛えな、お前」


 ぎゅ、と抱き締められる。
 どきっとしてから、ずっと鼓動が早い。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

奴の執着から逃れられない件について

B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。 しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。 なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され..., 途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

処理中です...