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第1章
「分かんない」
しおりを挟む――――……1人で、早足で、歩く。
「――――……」
こんな風に、啓介を置いて出て来ちゃうなんて。
初めてかも……。
啓介の家に行くって伝えたし、多分、そんなに怒ったりはしないとは思うんだけど。
……ちょっと逃げたみたいで、感じ、悪かったかな……と、思うのだけれど。
でもなあ、と思い直す。……しょうがない。
啓介は、もともとは、女の子が好きだったはず。
……だからこそ、オレの事も、「気になってた」けど認めずに、女の子と付き合ってたって、確か、言ってた。
好きかなって思っても、男だから、来なかった。
それでも……ていうか、それだからこそ。
ある程度は覚悟を決めてから、オレに、言ってきたんだろうけど……。
……一生居たいって、言ってたし。
……オレに告って、一生って言うからには、他の女の子とは、付き合わないって、決めたから……だと思ってたんだけど。
――――……オレが、女の子にモてたいって言っても、彼女が欲しいって言っても、怒らないって。
怒ったってしょうがないから、怒らないって。
全然よく分かんない。
じゃあ、いいのかよ、オレが、お前以外の奴と、付き合って。
オレが、お前以外の奴と、付き合って、
そしたら、お前だってきっと、オレ以外の奴と、付き合って、
でもオレ達は、1回、こんな関係になってしまってる訳で。
そしたらきっと、もう普通の友達になんか、戻れない、訳で。
――――……じゃあ、オレ達は、違う奴と付き合いながら、
もう、全然、絡まずに、生きてく、て事だよな。
それを、あんな、平気そうに、
言われるって。
「……っ……」
急に、目頭が熱くなって。視界が滲んだ。
……胸が痛いのが、勝手に涙になった感じ。
喉の奥も痛いし、もう、ほんと、やだ。
啓介のマンションの前で、立ち止まる。
オレ、涙目だし。
啓介に見られたくない。
やっぱりもう少し、歩いてこよ。
よし、そうしよう。
啓介のマンションを通り過ぎてしまおうと、歩き始めた瞬間。
腕をぐい、と掴まれた。
え。
振り返ると、啓介の姿。
……あれ?
早くない?
「……飯、途中やっちゅーの。 ったくもー。なんなん、お前」
「――――…………」
「すぐ店出て帰ってきて、バイク停めてここ来たら、お前、通りすぎていこうとしとるし。……なんやねん、ほんま」
「――――……」
「捕まえられて良かったけど……」
ほっとしたように言う啓介。
ふ、とオレの顔に気付いて、のぞき込んでくる。
「……泣いとるん?」
「……っ目にゴミ、入っただけ」
「……はー。 目にゴミ、ね……」
はー……。
啓介が、ものすごい、ため息をついてる。
「――――……もう、家、来いや」
ぐい、と引かれて。
歩き始めた啓介に、引っ張られる。
触れてる手を、どうしてか振りほどけなくて。
そのまま、啓介の後ろを、黙ったまま、ついて歩くしかなかった。
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