【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

悠里

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第1章

「心臓が」

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 何で合コンが苦手かと聞かれて。少し考える。

 「んー……まあ行った事もあるし、興味もあるけどさー。なんか、そのために来ました、みたいなのが…… 自然に知り合って、好きになる方がいいかなって」

 そう言った瞬間。
 ぷ、とそれぞれに笑われる。

「……はいはい」
「ほんと、可愛いなあ、雅己」
「なんか貴重だな、お前」

 クスクス笑われ。

「……何なんだよっ!」

「んーじゃあさ、お前の事好きな子、教えてあげようか?」
「あ、オレも教えてやるけど?」

「少し話しかけてみるとか、してみたら? お前が気が合うって思えば、そしたら、わりとすぐうまくいくかもよ」

「――――……んー……」

 んーーーーー。。

 うーーーーーーんんん。


 ……なんか、こうやって言われると思うのは。

 別にオレ今、女子にモテたいとか。
 ……誰か女子と仲良くなりたいとか…… あんま、思ってない気がする。


 大学に入った頃は、色んな子と話したし、仲良くなったし、きっとその内、その中の誰かともっと仲良くなって、付き合うのかなー、そしたら、初彼女だなー……なんて、思ってたのに。


 ……まあ、たぶん、きっとこれは、間違いなく。
 ――――……啓介のせいだ。


「啓介が何でモテんのかとかってさ。 お前が彼女欲しいって事だろ?」
「モテたいって事だよな?」

 いや、だから、そこがそもそも、スタートが違ってて。

 なんで啓介は、あんなにモテるのかなーて、だた客観的な意見を聞きたかっただけで……。


「つか、お前がちゃんと周り見れば、雅己のこと好きな奴にも気づくって」
「気づかないなら、教えてやるし」

 うう。もう、なんか、意味が分かんなくなってくる。


「……何の話や?」

 いつの間にか女子達と離れて、啓介が近くに来ていて。
 机の端に座ってたオレの横に立っていた。


 うわ、なんか、やなタイミング。
 どっから聞いてた……?
 真横の啓介をなんとなく、見上げられない。


「雅己がモテたそうだから、その話してたとこ」
「啓介だって、知ってるよな、雅己の事、好きな女子」
「――――……まあ、知っとるけど」

 ちら、と啓介に視線を流されてる気配。
 うぅ。なんか見られてる……。

 ちがうっつーの!!

 そんな話、してたんじゃないっていうか、いや、こいつらは、してたけど、
 オレは違う話をしようとしてたっつーか。

 めちゃくちゃ否定したいけど、できない。
 だって。今皆が聞いてる前で、オレがこの話で、啓介に言い訳するのって、絶対おかしい。


「まあ……モテるけどなあ、雅己」

 そんな風な啓介の言葉が聞こえて。
 ちら、と啓介を見上げると。別に啓介、普通の顔してる。


 何だか、ずき、と胸が痛い。


 ――――……平気な顔、無理にさせてるのかな、オレ。
 それとも――――…… 気にならない、のかな。


 なんか、考えたどっちでも……胸が、痛い。

 思わず唇を噛んで、啓介から顔を逸らした。


「――――……雅己?」

 手が伸びてきて、頬をつままれる。

「っ」

 まさか皆の前でそんな顔の上げさせられ方すると思わなくて、呆然。


「何、雅己、つままれてんの?」

 周りは、ぷ、と笑う位で、全然普通の反応。
 あ、皆、その程度の反応なんだ。とそっちには安心したけれど。


「――――……??」

 何これ?
 啓介がまっすぐ見つめてきてて。戸惑ってると。


「……こんなん、気にせんで平気やで」

 くす、と笑って、頬から手を離すと、ぽん、と頭を叩いた。


「――――……っ」

 なんか、たぶん、今の会話と、それを聞かれてオレが気にしてる事と。
 そこらへん全部ひっくるめてそう言ったんだろうと、すぐ分かった。


 ふ、と優しく笑まれると。
 どき、と心臓が弾んだ。
 

 そのまま、どくどく心臓が音を立ててる。
 オレの隣はもう埋まってたから、啓介は少し離れたとこに座った。

 授業が始まっても、弾んだ胸はなんだか少し、うるさいまま。



 ――――……くそ。なんだ、これ。





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