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第1章
「3日目」
しおりを挟む「おーきに、雅己」
啓介の髪は濡れてた。
「あれ? シャワー浴びてきたの?」
「ん」
「? 昨日浴びてないの?」
「いんや、浴びたけど……。なんや、おさまらんから、流してきた」
「おさまらんて??」
「――――……ヌいただけ」
ぽふ、と頭を叩かれ。苦笑いでズバリ言われて、マジマジ啓介を見つめてしまう。
朝から何言ってるんだ……。
「……気にせんでえーよ。 パン運んでええ?」
「……うん」
啓介が近くまできて、パンのお皿を持って、テーブルに運んでいく。
オレは、湧いたお湯を、コーンスープの粉末に流し入れる。
「エエ匂い……」
啓介が、コーンスープの匂いにふ、と、笑って近寄ってきた。
スープ用のスプーンを出して、混ぜてくれる。
一緒に全部運んで、食べ始める。
「何でわざわざ来たん? 家でゆっくりしとけばえーのに」
「……何でて…… 思いついたから。……寝起きどっきりみたいな?」
最後はとってつけたみたいな理由だったのに、啓介はそこに面白そうにのっかってきた。
「どっきりしようと思うてたん? ……もう少し寝た振りしとったらよかったけど……せやけどなあ…… めっちゃ静かに動いてるっぽい雅己を想像したら、笑うの我慢できひんかったからな……」
「っもーいいよ。お前、なんでそんな眠り浅いんだよ。もっとちゃんと寝ろよな……」
「寝とるんやけど…… 繊細なんやない? オレ」
「繊細とはかけ離れたとこに居るくせいに……」
「なんやめっちゃ失礼やで」
クスクス笑う啓介。
そう。寝起きドッキリも、確かにちょっとワクワクはしていたけど。
……なんか、なんとなく、啓介と少し離れてるような気がして。
まあちょっと顔見がてら、一緒にご飯食べに来ただけ。
……なんだけど。まあ、それは言わねえけど。
食事を終えてから、一緒に片付けた。
歯磨きをしに洗面台に行くと、ちょうど啓介がドライヤーのコンセントをさした所で。
「……ドライヤーしてやろっか?」
「ん?」
「やってやろうか?」
「――――…… ええん?」
くす、と笑った啓介に、ドライヤーを渡される。
「……立ってたら届かねーから、ソファに行って」
「ん」
啓介から渡されたドライヤーのコンセントを抜いて、啓介の後をついて歩く。ソファの横のコンセントに挿して、スイッチを入れて、啓介の髪に温風を当てる。
髪を触りながら、乾かしていく。
だんだんフワフワしてくる髪の毛。
なんかそういえばいつも啓介がオレに掛けてくれて。オレ、やったことなかったような……。なんでだっけ……。
……あ、そっか。啓介が先にシャワー浴びて、ドライヤーも終えてて、オレが後からって事が多いのと…… 稀に一緒にシャワー浴びた時は、オレもう色んな事されすぎてて、大体疲れ果ててるからだ。啓介のドライヤーしてやる余裕なんて、ないんだ。
――――……別にオレのせいじゃないな。……うん。
1人でそんな事を考えながら、啓介の髪を撫でながら、乾かす。
――――……お願い、してから、3日目。
やっぱり、訳が分からない位の感覚に襲われないのは、すごい楽。
絶対、楽。
……楽、なんだけど。
なんか――――………なんか、いまいち良く分からない気持ちが、むずむずしてる。
なんか、啓介が、遠い。気がする。 よく分かんないけど。
「……気持ちええ」
「え?」
「お前がふわふわ触っとるの、心地ええなーと思うて」
少し振り返って、クスクス笑いながら、見つめられる。
「……うん」
優しい啓介の笑顔に、つられて、微笑む。
――――……なんか……。
こういう時の啓介は……すげー優しくて穏やかで、好きかも。
友達だった時って、そういえば、ずっとこんなんだった。
いっつも優しくて。 いっつも、そばに居てくれて。
なんか、もうずーっと一緒にいる気がしてるんだけど。
オレ達って。まだ、3年位しか、居ないのか。
……結構短いな。
(2022/1/8)
73
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