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第1章
「寝起きドッキリ?」
しおりを挟む夕飯を食べて、帰ってきた。
自分のマンションに。
――――……啓介は、夕飯に何を食べたのかなあ。
なんて思ったりして。
それくらい、なんか最近はずっといつも啓介と一緒に居たなぁと思い知る。
……シャワー浴びて、寝ちまおうかな。
まだ21時過ぎた所なのだけど、そんな風に思った自分。
風呂から出ると、啓介からのメッセージが届いてた。
「もう家ついた?」と。
「ついた。シャワー浴びてた」
そう返したら、すぐに着信音。
「……もしもし?」
『あぁ、雅己? おかえり』
「……うん」
『楽しかった?どこ行ってたん?』
「駅前のお好み焼き食べてきた。楽しかったよ」
『そっか。良かったな』
ふ、と笑う気配。
「……啓介は? 何食べた?」
『弁当屋寄って買うてきた』
「そうなんだ。 ――――……お前も来れば良かったのに」
『――――……』
「……ん?」
『そんな一緒に居てほしいん?』
くす、と笑う啓介。
「別に……んな事言ってねーけど……」
『……そやないなら、たまにはええやん。別でも』
「――――……」
……まあ……別でも……全然いいんだけどさ。
飯くらい、一緒じゃなくても、全然問題ないんだけど……。
『……また明日ガッコでな?』
「あ、うん。 おやすみ」
なんかかかってきた割に、物凄くあっさりと切られそうになった電話に、咄嗟に明るく、おやすみと伝えた。
電話を切って、髪をドライヤーで乾かす。
いつもだと啓介にされる。
久しぶりに自分でドライヤーするなーなんて思いながら、乾かし終えて、歯を磨いた。
水を飲んで。ふー、と息をつく。
……なんかする事がない。
せっかく1人なんだから、ゆっくりテレビ見たり、本を読んだり。何をしたって自由だと思うのだけれど。
ベッドの上に転がって、暗い部屋で、目をつむった。
なんか。
呆気ないな。
――――……あんなに、日々、どうやって啓介から逃げようか、考えてたのに。ちょっとお願いしてみたら、簡単に、良いよって言ってくれた。
もう今日で、3日目。
このままだときっと、明日もこのまま、だろうなと思う。
快適だから、いいんだけど。
うん。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日。
昨日早寝だったからか、ものすごい早く起きた。
なんと、5時起き。
んー……。
もう1度寝ようかと思って15分ほどゴロゴロしていたけれど、全然眠れそうにない。もうすっきりしてる。
「なんか飲も……」
お湯を沸かして、ココアを入れた。
「うま……」
ふうふう冷ましながら、飲んでると。
ふ、とある事を思いついた。
顔を洗って、服を着替える。
学校の用意をして、少し冷めたココアを一気飲みして。カップを洗った。
まだ、5時半すぎたとこ。
よし。
鞄を持って、家を出た。途中のコンビニに寄って、2人分の朝ごはんを買った。あまりこの道は歩かない。いつもこの道を行き来するの、啓介のバイクで、が多いから。なんだか早朝だし、新鮮な気持ちで、うきうき歩く。
あー……――――……チェーン、かかってたら、忍び込めないけど……
まあそん時は、起こすしかないか。うん。
啓介の部屋の前について、カギを開けて、そーっと開くと。
チェーンはかかってなかった。
そーと開けて、鍵をかけて。そーとそーと家に入って、リビングに行き、買ってきたものを置く。鞄も置いて、手も洗って。
6時。――――……今日1限からだから……。
少し早いけど、もう起こしてもいいかなあ。
寝起きドッキリでもしてる気分。悪戯してるみたいで、ワクワクしながら。そーーーっと、啓介の寝室に近付く。
「――――……」
かちゃ、と最小限の音で、ドアを開けて。
そーーーーとそーーーと、啓介に近付いた。
啓介は、ドアの方とは逆の方を見て、寝ていた。
枕元に、スマホと本と電気のリモコン。
――――……本、読みながら、昨日は寝たのかな。
オレと居ると、あんまり読まないから、たまにはいいんだろうな。
なんとなく、啓介の寝顔が見たかったのに、完全に向こう向いてて、見えないし。
どうしようかな。起こしていいかな。
まだ早いかな。
しばらくその場で立ち尽くして、悩む。
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