【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

悠里

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第1章

「快適」

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 なんか体がおかしくて、先に寝たのに、
 結局、めちゃくちゃに抱かれたあの日。

 オレは、啓介に、しばらく、したくないと、頼んだ。
 受け入れて、くれて。 

 で。
 土日。結局啓介のマンションで過ごしたけど。
 何もされなかった。

 おやすみのキスを、された。だけ。

 月曜の朝に、啓介がオレのマンションに送ってくれて、授業の用意をしてから、学校までバイクで一緒に来た。

 2日間、すごく、心穏やかで。
 乱される事も、警戒してドキドキする必要もなくて。

 一緒に買い物に行ったり、借りてきた映画を見たり、一緒にゲームしたり。友達だった頃と、何も変わらず過ごした。

 啓介は、何もしないどころじゃなくて、 そういう類のあやしい事も一切何も言わないので、からかわれる事すら、無い。

 とんでもない事を言われて、赤くなったり、うろたえる事も、ない。

 なんか、すごい、良い感じで、2日間を過ごした。
 夜も、普通に早く寝れるし。

 ――――……同じベッドでは寝たけど、抱き締めてるとマズイからと言って、啓介は背を向けてた。

 あれ。怒ってる?
 と、そこではさすがにドキ、として、啓介の背中を見てたら。
 何か感じ取ったらしい啓介は振り返って、ふ、と笑った。

「怒ってるとかやないよ。 手出さないんなら、抱き締めたりしない方が楽なだけやから、気にせんでええよ」

 そんな風に言って、啓介は、オレの頭をぐりぐりと撫でて、おやすみと、頬にキスされて。それで安心して、眠ったんだけど。



 という事で。
 結果。


 今日、3日目にして、めちゃくちゃ、快適。

 ただ、それの関係がないだけで、啓介と楽しいことは共有して、楽しく話して笑って。友達に戻ったみたいで。土日、超楽しかった。
 もっと早く頼んでみればよかった!なんて、思ったりしている。


「何か、雅己ご機嫌じゃねえ?」
「え?そう?」
「オレもそう思った」

 月曜昼頃、周りの友達たちにそう突っ込まれた。

 そうかな。
 そんな分かるかな?

 ……そんな分かる位浮かれてるのは、なんか啓介に悪い?かなと思って。
 ちょっと、引き締めようと思ってしまったけれど。

 ……でもやっぱり、快適。


 午後の授業を聞きながら、ぼー、と考える。


 ……啓介とするのって、頭、おかしくなるくらい、気持ちいいけど。
 それが、嬉しいかって言われると……。

 ……オレは、結構苦手……というか。恥ずかしすぎて、死にそうっていうか。……見られるのもやだし。訳が分からなくなるのもやだし。

 オレ、男、なのに、
 なんか女の子みたいにひたすら可愛がられて、抱かれて、意味が分からなくされて。気を失うみたいに寝てる間に、体拭かれたりして、抱き締められて寝てて、起きたら、大丈夫かって、心配されたりして。

 ……男なのに、オレ、こんなんで、いいのかって。
 悩むというか、ちょっと嫌、って気持ちが、ずーっとあるっていうか。


 啓介の事は、好きだし。
 ――――……オレを抱いてる啓介は、カッコイイと思うし。
 ……嫌いではないんだけど……。

 オレ自身の事が、納得いかない。

 隣に居る啓介を、ちら、と見る。


 ノートを取ってたのだけれど、顔を上げるとオレの視線に気付いて、ん?と見返してくる。


 なんでもない、と首を振って。
 自分もノートに文字を並べてく。

 ……頭には全然入ってこないけど。


 今日最後の授業が終わって、啓介が隣で立ち上がる。


「雅己、今日どないする?」
「え?」
「うち、来る? 自分ち帰る?」
「――――……んー……」

 いつもだと、来いと言われるのだけど。
 今日は、聞かれた。


 ……うーん。
 どうしようかな。聞かれると、困るな。


「雅己、啓介、飯食いに行かねえ?」

 ふと、隣に居た友達たちに誘われて。
 

「いーよ、行こ」

 と答えた。すると、当然啓介も来るかと思ったのに。


「オレ今日はやめとくわ」

「えーなんでだよ、一緒に行こうぜ」

 周りが皆言うけれど、啓介は笑顔で、やりたい事があるからとやんわり断っている。

 教室を出て歩き始めて、啓介と並んだ時。

「ほんとに行かねえの?」

 そう聞いたら。

「今日バイクで来たやろ。バイクもって移動とかもめんどいし。今日はやめとくわ」
「……そっか」
「楽しんできな」
「……うん」

 頷いて、何となく啓介を見上げると、啓介は、ふ、と笑った。


「オレこっちやから。またなー」

 校舎を出ると、啓介はすぐに駐輪場の方へ消えていった。
 皆と一緒に、啓介に別れを告げた。


 いつもなら一緒に来るとこだけど……と、少し引っかかるけど。
 ……まあバイクの事も分からなくはないし。

 ……たまには啓介居ないとこ行くのもいいよな。
 と思って、皆と、歩き出した。





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