【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

悠里

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第1章

「お願い」

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「なー、雅己こっち向けや」 

 少しだけ落ちて、は、と気づいた瞬間から。
 啓介に背を向けて 布団にもぐった。

 啓介は、ぽんぽん、とオレの背中を叩いてる。


「……やだ」


 ……もう嫌だ。
 絶対やだ。

 オレ今日、どんだけイかされた訳。
 どんだけ、喘がされて。最後、どんだけ、叫ばされて。


 お前の事、好きかもとか。
 思った事も覚えてるけど。


 そういう問題じゃない。


 オレ、ほんとに何回、イかされたの。
 もう全然覚えてない。

 ――――……違う、覚えてないのもそうだけど。
 思い出したく、ない。


「雅己て……」
「……嫌だ。触んな」

「もーしゃあないなあ……」

 布団ごとひっぱられ、ぎゅー、と抱き締められてしまう。


「もー……離せよ!」

 頑なに丸まってたのに、軽々引き寄せられ、思い切り顔を見合わせる位置に持っていかれて、ぐい、と胸に手をついて離れようとするのだけれど。
 その抵抗も、容易く抑えられる。

 落ち着いたのは、啓介の開いた足の間に座らされて、後ろから抱き締められるような感じの体勢で。……もう逃げられる気もしない。


「――――……そろそろ諦めたらええのに」
「……っ……なにをだよ」


「お前は、オレに抱かれるのが好きやて。諦めたら?」
「――――……っ……」

「それでええやん」

 後ろから、かぷ、と首筋に噛みつかれて。
 瞬間、ぞく、として、「あ」と声が上げてしまって。ば、と手で口をふさいだ。


「――――……オレはお前抱きたいし、お前も、気持ちええ、でエエやんか」
「……っ」

「別にそれだけやないし。ずっとお前の事好きやし。ずっとお前と居たいし」
「――――……」

「お前もオレと居るの、好きやろ?」
「…………それは……昔から好き……だけど……」


「なら全部、好きでええやん……それやと、あかんの?」
「――――……オレ、今日やだって言ったじゃん」

 そう言ったオレに、啓介は後ろで一瞬固まって。
 それから、ぷっと笑った。

「お前は今日だけやなくて、いーっつも、やだて言うてるけど」
「……っ……」

「お前のやだ、は、良い、てことやと思うて聞いてるんやけど」
「――――……」

「気持ちようすると、すぐやだて言うやん」
「――――……っほんとに、嫌なんだよっ」


 んー、と啓介はしばし唸ってる。


「……もうさっきオレ……何回、イかされたんだよ」
「んー? そうやなあ…… 」

 数え始めそうな啓介を、「数えんな、バカ!!!」と叫んで止める。
 クスクス笑ってるのを、振り返って睨みつつ。


「……啓介、ちょっとお願いがあるんだけど」
「お願い?……んー。とりあえず言うてみ?」

「……オレ、お前に抱かれるの、ちょっと……しばらく、やめたい」
「……ふうん?」


「なんか…… 体、おかしくて、困る」
「……困る?」

「……なんか、され過ぎてて、おかしくなってて、ほんとに、やだ」
「――――……」

「だから、休憩……ていうか……しばらく、無し……ってできねえ?」
「――――……んー……いつまで?」

「……オレが…… いいっていうまで」
「お前、良いって言う日、来るんか?」

 ……それは、わかんないけど。


「――――……ええよ」

「え」

「えって何やねん。お前がそこまで言うなら、ええよて言うてる」

 あっさりいいと言ってくれるなんて思わなかったから、拍子抜け。


「いいの?」
「ええよ。……ええけど、そのかわり」
「そのかわり?」

「お前が、もうええってなったら…… してる最中に、嫌だて、もう言わないようにするて約束できる?」

「……」


 ……嫌だって、言わないように……?
 これ、約束していいのかな。

 あ、でも、なんなら、もう、いいって言わなきゃいいのか。
 しなくても全然いいし。
 ていうか、きっと、心安らかな日々を送れるわけだし。


 体おかしくなって、21時に寝るとか、しなくて済む訳だし。



「……分かった。約束する」
「おし。なら、今からな。……あ。キスは? キスくらいはしたいんやけど」

「……んーーーー……舌、入れなきゃ良い」


 葛藤の末言った言葉に、啓介は、分かった、と頷いた。


 こうして。
 ――――……心安らかな、日々が、始まった。






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