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第1章

「1秒で」※

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「……やめ……あ…… あ、ぅっ……」 

 脚を閉じてしまいたいのに、押さえつけられていてびくともしない。
 いつもなら抵抗して動かす手も、くくられていて、動かせない。
 腰を退いても、意味がない。

 なめられて、絡められて、吸われる。
 深く啓介の口内に引き込まれて、扱かれる。

「……っ……んう ……ンン……!」

 めちゃくちゃ吸い上げられて、気が遠くなる。
 
「……も、や、だ……っ」

 言った瞬間、啓介が口を離して、ほっとしたのも束の間、激しく扱かれて、仰け反ると同時に、達してしまう。



「……んっあ……っ……っふ……」
 
 快感が強すぎて――――……終わっても、体が震えたまま。

 ちゅ、と頬にキスされて。
 それから、唇に、キス、しようとした啓介から、思い切り顔を背けた。

「雅己?」
「――――……っ腕、と、れよっ」

「んー……? とらなきゃあかん? もー少しこのまましたいんやけど」

「っとんなかったら……」
「うん。とんなかったら?」

「……も、別れる……」
「え」

「……こ、なの、やだ」

 ぼろ、と堪えられずに涙が零れ落ちて。
 上がった息を噛みしめて、啓介を睨んだ。

「っわーた。今取るから。すこし後ろ向いて」

 言われて、啓介に少し背を向けると、そっと、解いてから、両手をさすりつつ、きゅ、と握ってくる。

「……ごめんな、雅己。泣かんで」

 よしよし、と撫でられて、抱き寄せられる。

「……そんな嫌やと思わんかった」
「……やに決まってんじゃんか」

「んー……オレ的には、抵抗されへんから、たまにはえーな、位やった」
「抵抗できないのムカつくし、それに……」

「――――……それに、なに?」
「………」

「……雅己? それに、何や?」
「……お前につかまれない、し」
「つかまれない?」

「……っいっつもオレ、お前につかまってどーにかしてんのに、それもできないなんて……もう、絶対やだからな! 今度したら、もう、1秒で別れるからな!!!」

「――――……1秒て……」

 少し黙ってた啓介が、ぷ、と吹き出して。

「……オレに、つかまれなかったんが、嫌やってん?」
「……っだからそうだって、言ってんだろ、何度も言わすなよ、このバ……」
「――――……」

 そこで、唇が奪われて。全部は言えなかったけれど、今度は顔を背けず、そのキスを受ける。
 腕を啓介の背中に回して、ぎゅ、と抱き付いたら。

 啓介が、唇の間で、クスクス笑った。

「――――……こうしたかったん?」
「……っ……うるさ……」

 ふ、と笑った啓介に、また唇を塞がれる。

「――――……せやけど、ちょっとの間抵抗なかったん、めっちゃよかったなー」

 啓介がクスクス笑いながら、雅己を見つめる。

「ほんまはいつもこっちなめてやりたいんやけど、お前めっちゃ抵抗するからなー……」
「だって、舐められんの、嫌いだし」
「……ちゃうやろ。 気持ちよすぎて、嫌なだけやろ。 せやから、慣れろって言うてんのにな」
「……っ……訳わかんなくなるから、嫌いなんだよっ!!」
「はー…… もうちょっと、素直に受けような、雅己?」
「……絶対、無理」

 ぐい、と押しのけると。啓介は、苦笑い。

「ほら。この腕、やっぱ、いらんくない?」
「……今度縛ったら、ほんとに別れる」

 突っ張った腕をそっと避けながら、啓介が笑う。

「――――……そんな嫌やってん?」
「……やだよ! なんか、何も隠せないし、全部丸見えみたいで、もうそれだけでも、やだ」

 さっきから、言えば言うほど、啓介が、笑う。

「っ何でお前は、人が嫌だって言ってんのに、さっきからずっと笑ってんだよ!! もーほんと、嫌い、離せよっ」

「堪忍……――――…… ていうてもなあ……」

 啓介は、ふ、と笑いながら、

「抵抗できないのが嫌やて言うんは分かるけど…… 抱き付きたいのにできないとか、全部見えて隠せないから恥ずかしいとか。めっちゃ可愛ぇんやもん」

 そら、笑うやろ?と、見つめられて。

 短くまとめられるとすごい恥ずかしい事を言ったような気がして。
 カッと、熱くなる。

「……今の無しにして」
「は? 無理やな。 もう全部聞いたし」

「……ッ」

 だめだもう。今何を口走るか、わかんねえ。
 ……ほんとやだ。


「――――……続きしよ。雅己が、してほしい事言うてくれたら、何でもしたるから、思いついたら、言うて」
「――――……っ……」

「抱き付いててもええし、隠してもええし。……もう、抵抗してもええよ」
「――――……」

 頬に触れながら、至近距離で見つめられる。


「縛って泣かせてしもたし。 お詫びに、めっちゃ気持ちようしたるな」
「――――……っ」


 ふ、と笑った啓介は。また色っぽくなって。
 ドキドキさせられるのが、悔しい。


「……っつか詫びなんて、いらな――――……」
「遠慮すなや」

 言った啓介に、肩を押されて、枕に背を沈められて。
 重なってきた唇に、なすすべもなく、瞳を伏せた。







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