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第1章

「何かヤバい……」

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 駅ビルの店で夕飯を購入。もう遅いし、言われた通り早く帰ろうと思って、総菜とか諸々買って、急いで帰る。 

「啓介ー! ただいまー」

 鍵を開けて、中に入ると、啓介が迎えに出てくる。

「お帰り」

 嬉しそうな超笑顔の啓介に、むぎゅ、と抱き締められて、ちゅーと頬にキスされる。
 ……あったかい。

「――――……風呂入ってた?」
「ん。電話切ってからシャワー浴びとった」
「……これ夕飯。置いといて、オレもシャワー浴びてくる」

 あんまり顔を直視できずに、買い物したのを渡してバスルームへ逃げようとしたのに。

「雅己?」
 腕を掴まれて、止められる。

「どうしたん?」

 ああもう、どうしてこうして、すぐ気づいて、人のこと、止めるかな。

「顔見せて?」
「――――……」

「何で帰ってきて、顔も見せないん?」
「……見たろ?」

「目ぇ合わせへんやん。どした?」
「――――……別にどうもしないし……」

 まっすぐな瞳と、ばっちり視線を合わせたら。
 なんだかさっき思ってた事が浮かんできて、一気に恥ずかしくなった。

「え?」
「っ……ちょっと、オレ……風呂入ってくるから」
「――――……何でそんな顔赤いん?」
「……走って、きたから」

「ふうん?……可愛え顔してどしたん?」

 買い物したもの持ったままの手を背中に回して、ぎゅーと抱き締めてくる。くす、と笑って、啓介はちゅ、と唇に、キスした。

「……おかえり、雅己」
 なでなで、と頭を撫でられて、啓介を見上げると。

「5限までよお頑張ってきたな」
 偉い偉いとまた撫でられて。撫でんな、とその手を払うけれど、またキスされる。

「――――……今日は口にするんだ?」
「朝から元気やし。今も熱ないから治ったと思うから、ええかなーて。
 ……嫌?」
「――――……」
「雅……」

 啓介の首に手を回して、ぐい、と引き寄せて、唇を合わせた。

「――――……シャワー、浴びてくる」
「――――……何やこれ。 ……こういうのなんていうか知っとる?」
「こういうのって?」
「キスして、消えようとするとか。……こういう放置を生殺しいうんやで。お前いっつも何も考えんと、こんな事ばっかりしてからに……」

「別に……ちょっとキスしただけじゃん。いっつもお前がずっとしてる事じゃん。……も、オレ、シャワー浴びてくるから、離せよ」

「……はいはい……」

 ため息とともに、ぱ、と離されて、呆れたような苦笑い。

「用意しとくから。行っといで」
「……ん」

 
 バスルームにやっとたどり着いてシャワーを浴びる。

 抱き締められたり、キスされたりが、普通になってる。
 あまりに自然な流れで、いってらっしゃいからおかえりまで、というか、おはようからおやすみまでか。 とにかく、全部キスやらハグがついてくる。


 ――――……はー。さっき。

 なんか。
 嬉しそうに出迎えてくれた啓介が、なんか……。

 なんというか……。

 ……?

 ……愛しい? ……というか……。

 ……なんなとなくそんな風に、思えてしまって。
 抱き締められた時、少し胸が、痛かった。


 柄じゃないし、恥ずかしくて無理だから、離れようとしたら、
 つかまってしまったけど。

 ――――……オレ、啓介と離れるたびに、啓介の存在がでっかい事を、確認させられてる気がする……。ずっと居ると、全然分かんないのに。

 まあとにかく――――……熱上がってなくて良かった。


「――――……」

 目の前の鏡にうつる体に、まだ残るキスマークが、目立つ。


 ………今日は――――……。

 ……また、啓介と ――――……すんのかな。
 


 またオレ、訳わかんなくなって――――……。
 完全に、啓介の、みたいに、されるのかな……。



 ぞく、とした感覚が体を走る。
 瞬間、はっと気づいて。ぶんぶん、と首を横に振った。


「……っ」

 ……っっ……何考えてんだ、オレ。


 ――――……何かオレ………なんか、今日、ヤバいぞ。

 今日はなるべくしない方向で、話、進めよう。
 疲れて眠いって事で通して、寝かせてもらおう。


 なんか、今日は、しない方が絶対、良い気がする。


 そんな妙な決意とともに、バスルームを出た。




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