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第1章

「啓介が風邪」2

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 目の前で具合の悪そうに眠ってる啓介を見ていたら、ふと浮かんだ。

 一緒に、住もう、と。
 最近啓介が、しょっちゅう言ってるなーと。

 少し前ならありえないと思っていたんだけれど。
 ……どうしようかなあ。と、悩む位の気持ちは、ある。

 一緒に住んだりしたら――――……なかなか解消なんてできないと思うから、迷う。まさか一生……?……とかは、ないか……。

 ……でも、同居なんてしちまったら、ちょっと嫌になっても、なかなか離れられなかったりするかも。足枷みたいになんねーかな。何か、それは嫌だよな。それで、いいのかなあ、ほんとに。

 オレも。
 ……お前も。


「――――……ん……」

 寝苦しそうに、啓介が少し動いて、少しだけこっちを向いた。
 
 ……まあ、とりあえず、こんな時は、一緒に居れた方が、いいけど。

 熱い手をなんとなく、握りながら。
 ぼんやりと、考えて。


 でも――――…… 具合悪い誰かの手を握って、顔見てるなんて、
 そんなの、普通、しないよな……。

 こいつが大事、なのは、自分でも分かってるんだけど。

 答えの出せない、自分への問い。
 啓介の整った顔を見ながら。

 ――――……こんなモテる奴じゃなければなー。
 ……いつか、こいつを好きな女の子に、こいつが惹かれて、居なくなる図とか、これ程までに考えなくても済んだかもしれないんだけど。

 尋常じゃなくモテるからなー。
 
 なんとなく、ふう、とため息をついた。




◇ ◇ ◇ ◇



 翌朝。
 目が覚めたら。

 なぜか、啓介の腕の中にいた。

 え。オレ、ベッドにもぐりこんじゃったのか?

 手、握ったまましばらく見てて。
 ――――……そのまま寝ちゃったとしか思えないんだけど……。


「――――……」

 目の前でぐっすり眠ってる啓介の額に、そっと触れてみる。

 ――――……あ、もう熱くない。
 とりあえず、朝は下がったって事か。 良かった。


 思った瞬間。
 啓介が、ぱち、と目を開けた。

「――――……はよ、雅己」

 目覚めた瞬間、ふわ、と笑う。
 いつも朝、目覚めてすぐ。

 オレを見ると、啓介は、優しく、笑う。
 

「……気分は?てか、オレ、いつの間にか布団に入っちゃったのかな……」

「夜中に目ぇさめた時はもうだいぶ良くなってたんよ。そしたら雅己が
オレの手握って寝てるから……」
「……」
「あんまり可愛えから、引きずり込んどいた」
「――――……」

「どうせこんなに近くにいるなら、ベッドの上のが寝やすいやろ?」
「――――……あ、そ……」

 あ、オレが入ったんじゃなくて、お前が引きずり込んだ訳ね……。
 苦笑い。

 まあイイか……。

 啓介の腕の中から出て、ベッドの端に腰かける。
 んー、と伸びてから、立ち上がった。


「啓介、朝、何食べたい? 普通に食べれそう?」
「ん。昨日パン買うてきたやん。それでええ」

「起きれるの?」
「ん。大丈夫」
「元気なのか?」
「ん、特におかしなとこ、ないわ」

 さすがの体力だなー……。
 8度3分、一晩で下がるんだ。

「でも今日は学校は休んで寝てろよ。オレ、行ってくるから」
「……んー。分ぁった」

「朝、ここで食べる?」
「リビング行く」
「コーヒーとか、飲めそう?」
「全然普通で平気や」

「ん。用意出来たら呼びに来る」


 啓介が頷くのを確認して、オレはキッチンに向かった。





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