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第1章
「胸の奥が」
しおりを挟む「――――……」
すぐにキスを離した啓介の首に、腕を回して。
もう一度、引き寄せた。
ちゅ、と啓介にキスして、じっと、見つめる。
「――――……雅己?」
啓介がクス、と笑って、オレの頬にまた口づけてくる。
「んー……なんか、お前が……オレが男でも、大丈夫なのは、分かった、かも」
そう言うと。
啓介は、パチパチと瞬きをして。
「――――……今更過ぎひん?」
しばらくして、ものすごい苦笑いで言われた。
「だって――――……女の子と超付き合ってたの、オレ知ってるし」
「――――……にしたって。こんなにお前に好きやて言うてるのに」
「……それがよくわかんねーし」
言うと、啓介は、はー、とため息。
「オレ、お前に、言うたよな」
「……何を?」
「一生ずっと居るから、オレと付き合うてって」
「………………」
「裏切ったり、泣かせたり絶対せえへんし、絶対幸せでいさせるから、付き合うてって」
「――――……そう、言われてみれば……言ってたような……」
「はー? 覚えてへんの?」
「だって、お前、そういうセリフ、もう、次から次へと、ポンポンポンポン、付き合えなかったら死ぬかもとか、なんかもう、延々言ってるから……全部なんて覚えてらんないし」
「――――……」
はー。
啓介の深い深い、ため息。
「そもそも啓介さあ……分かった、とりあえず付き合えばいいんだろ、なんて答え方したオレと、よく突き進めるよな……」
「ん?」
「オレの答え。超投げやりだって思わなかった?」
「んー…… とりあえず、オッケイもらえれば良かったから。投げやりでも別によかったんよ」
「……とりあえずで良かったの?」
「ん。そこがスタートて思うてて。とりあえずオッケイもらって、付き合いさえすれば、こっち見させる事できると思うてたし」
「――――……」
「……体繋げられれば、嫌でも意識させられるやろし」
「――――……」
「オレのこと普通に大好きなんは知ってたから、あとはそれをどうこっちの好きに持ってくかって事やから。意識させる手段が使えるようになればええかなて。告白してオッケイもらってそこで満足やなくて、そこが完全にスタートやったから。突き進むしかないやん?」
「――――……」
――――……くっそ。
なんか。
……思い通りになりすぎてる気がして、すごく嫌。
「雅己、結構オレの事好きやろ?」
「――――……」
「オレに抱かれるんも、結構好きになってきたやろ?」
「――――……」
「……ずっとオレと居てもええかなー、て思うとるやろ?」
「――――…………」
絶対頷かない。
むかつくから。
人の真上で、嬉しそうな顔してる啓介に、ムッとしてると。
「――――……大好きやで、雅己」
何にも答えてないのに、嬉しそう。
もう、意味が分かんね。
無言で見上げてると。
くす、と笑った啓介に、唇を重ねられる。
すぐに舌がゆっくり絡んできて。
激しくない優しいキス。
整った啓介のドアップと。伏せられた睫毛。
このドアップも。
見慣れたんだけど――――……。
……なんか、胸の奥が、トクトク弾む。
――――……のは、気のせいってことにしとこ。
「……っ? ……んん……っっんー……!」
なんかまたどんどん激しくなってきて。
する、と腰に手が回ってきて。
「ん、っ……っつか、しつ、こい……っ!!」
肩を押しのけて、引き離すと、その手首を取られる。
「……もっかいする??」
「……っ絶対しない!!」
「――――……ええやんかー」
ぎゅう、と抱き締められる。
「っいーやーだ!」
断固拒否してると、クッと笑いながら、啓介がオレを抱き締めたまま、仰向けに転がった。つまるところ、完全に、腕枕というか、肩の辺りにのっかってるというか。 啓介の腕の中に完全にすっぽり収まってしまったというか。
「……今はもうせえへんから、しばらくこのまま居って?」
「……しないなら」
「ん。せえへん。……今はな」
最後、クスクス笑って。
啓介が、ぎゅ、と抱き締めてくる。
……ほんとにまったく。
……油断も隙もないなー……。
……さっき、ちょっと、胸の奥が、弾んでたとか。
――――…… 絶対、気のせいだ。
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