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第1章

「バスケの皆と」6

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 トイレから戻ると。
 啓介が、居なかった。

「……啓介は?」
 聞いたら、「何か用事があるからって、帰ったよ」と言われ。

 少しほっとしたのと。
 ――――……置いてかれたと思うのと。

 若菜は居るから、連れて帰ったとかじゃないのは良かったけど。

 とか咄嗟に思って。
 ……そこ何で気にするかな、オレ。とまた思ったりして。


 はー。

 …………なんか、初めて、あんなに怒られたかも。
 付き合う前も、付き合った後も。

 ――――……何であんなに、怒ったんだろ。



「なーかなめー」
「ん??どした?」

 トイレに行ってる間に来てたプリンを口にいれつつ。
 隣の要を呼んだ。


「なー、オレ、さっきさ、良にマッサージしてもらってたじゃん」
「……ん、それが?」

「たとえばさー、お前の付き合ってる女の子がさ、男にマッサージされてたら、嫌だよな?」
「……当たり前じゃん」

「女の子にマッサージされてても嫌??」
「……嫌な理由がわからねえけど」

「――――……だよなー……オレが良にマッサージされてるのってさ、別に普通だよな?」
「普通なんじゃない? ていうか、お前昔からよく良に揉んでもらってたじゃん」
「そうだよね」

 そうなんだよね。
 あいつマッサージうまいから……酷使した日とか……。
 前からだよなー……。

 ……何で急にあんなに怒るかな。


「なにが聞きたいんだかわかんねえな。どういうこと?」
「……オレも良く分かんね」

 なんだよそれ、と要は笑ってる。


「……まあでも、付き合ってる人がいるなら、触らせない方がいいんじゃない?」
「……そーなの?」

「付き合ってる人が、何が嫌か分かんないじゃん? 体触るってさ、微妙なとこなんじゃない?」
「うーん」

「……何、さっき良にマッサージされて何かあった?」
「いや。ない。」

 あるなんて言ったらこのメンバーの中で何かある事になってしまう。
 即座に、頑なに、無いと言い張ってやり過ごす。

「気になっただけ?」
「うん。そう」

 ………なんだかな。
 もう。

 ……何が嫌なのか、まだ良く分からない。


 ――――……何かが、啓介は嫌だった、ってことは。
 ……もう、分かってるけど。


 これって、オレが悪いの?? 
 ……くそー。もとはといえば、お前が、若菜と仲良くしてたから、バイクも乗らず、隣にも座らず……。



 でも……帰っちゃうって、相当だよな……。
 あんなに怒ったのが初というよりも、まじめに怒られた事自体が初めてかも…。

 啓介っていつもふわふわしてて。
 ちょっと文句とか、ちょっと怒ったふりとか。そんなのはいっぱいあったけど。 あんな真剣な顔して、あんな風に、もう知らんみたいな、そんなの全然無かったから。

 モヤモヤしつつも、皆と最後まで過ごして、店の前で皆と別れた。


 ……はー。どうしよう。
 と思うのだけれど。

 ――――……こんなんで、家に帰れる訳ない。




「――――……」

 スマホを、出して。
 啓介との画面を開く。



「今皆と別れた。店の前らへんで待ってるから、来て」

 そう、入れた。



 既読、つかない。

 怒ってたから見てくんないのかな。
 ――――……もし来てくれなかったら、いつになったら帰ろうかな。

 1時間待って、来なかったら。帰ろうかな……。



 はー。とため息。
 ――――……こんなんで、オレらって、あっけなく、こうなんの。


 今朝まで、超、一緒に居たのにさ。



 ――――……啓介のあほたれ。ばかたれ。


 いっつも余裕な顔して、迫ってきて、オレの中をぐちゃぐちゃにして。
 そんなにしといて、こんなあっけなく、離れんの?



 ――――……やっぱり、ずっと、友達でいられたら良かったのに。


 何も、変なコト、考えなかったし。
 こんな類の、喧嘩もなかったし。

 ――――……啓介に対して、嫌な事なんか思う事もなくて、
 ただ、啓介と居るのが楽しくて、好きだった。

 ほんとに、楽しかったのに。



 ――――……。

 
 友達のままで居られてたら――――……。
 
 抱き締められて、キスされて、訳が分からなくなったりも、しなかった。


 このまま、離れる事になったら。
 啓介はまた、女の子、とっかえひっかえ、付き合うのかな。

 それか今度こそ、1人の女の子と、ずっと付き合うように、なるのかな。


 そん時、オレって、どうするんだろう。

 友達に戻れるのかな……?




 ……腕の中で寝るとか。
 もう、無いのかな……。

 まあ、友達なら、無いか。


 ――――……別に良いんだけど。

 良いんだけど、さ。


 ……ふー、とため息。



 その時。
 ぴこん、とメッセージ受信。






「すぐ行く。待ってて」


 そのメッセージに。

 ――――……心底、ほっと、したのが。
 自分でも、謎。 









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