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第1章
「バスケの皆と」4
しおりを挟む食事を終えて、皆で話してると、良がすぐ後ろにやってきた。
「雅己先輩、超元気そうですね」
「元気だよ。良、挨拶まとめられるようになってきたな。偉い偉い」
「わ」
ナデナデしてやると、良が「ガキ扱いしないでくださいよ」と仏頂面。
「だってお前、部長に任命された時は、その挨拶すら怪しかったじゃん」
「先輩たち引退してから結構経ちますからね」
「んー、すごい成長、良、偉いぞー」
言うと、良はクスクス笑う。
「今日の先輩、ヤバかったですね」
「え?」
「2試合目。 バスケの練習続けてるんですか?」
「いや。超久しぶり」
「現役のままな感じでしたよ。なまってないですね」
「勝ちたかったからさーもう必死……でも、なんか無理したから、さっきから、脚、プルプルするんだよね」
体育座りで脚をさすりながら言うと、隣に居る皆も、オレの脚をのぞき込みながら「どこらへんが?」と聞いてくる。
「全部。ふくらはぎも、なんか、太ももも」
「マッサージしますか?」
良が言ってくれるので、え、いいの?と嬉しい。
そういえば昔もたまにやってもらったっけ。良、マッサージうまいもんな。
「じゃ、やって? マジで脚、プルプルしてるから」
「靴下脱いでもらっていいです?」
「うん」
靴下を脱ぐと、足の裏からぐりぐり刺激される。
「いった……」
「ありゃ。先輩、前より流れ悪い」
「痛い、ちょっ、足裏、やめて」
「流した方が良いですよ。我慢してください」
「っ痛…」
うしろに退いて暴れてたら、背後の皆にぶつかった。
「いった、雅己なに…」
「何泣いてんの、お前」
「だって、痛すぎ……」
「泣くな泣くな」
笑われるけど、痛いもんは痛い。涙目構わず、良の手を掴む。
「まじ、痛い、やめて」
「……はいはい、我慢で」
掴んだ手を、ぽいと外されて、続けられてしまう。
「……っっ」
しばらくグリグリされ続け、だんだん痛みがましになってきた。
「結構良くなってきたでしょ、先輩」
「まだ痛いけど」
「普段からマッサージした方がいいですよ?」
「……むー……そうみたいだな……あんまり激しい運動しないから、やってなかったんだけど……」
そのまま、ふくらはぎをマッサージされ、そっちは超気持ちいい。
最後、太もももグリグリされる。あとは鼠径部のリンパを流して。と言われて、そこだけ自分でやる。
「何でここはオレがやんの?」
「……足の付け根の マッサージって、微妙じゃないですか?」
「そう?」
「……分かんないならいいですけど」
良が苦笑いしてる。
「はい、それでおしまい。すっきりしました?」
「うん。 ありがと、良」
「いーえ」
「なあ、なんかデザート食べる? 奢るよ、マッサージのお礼」
「いいんですか?」
「うん、いーよ」
「やった」
「オレも何か食べよっと」
メニューを見始めると、皆も一緒にのぞき込んできた。
結局、結構な人数が皆デザートを注文した。待ってる隙にトイレに行こうと、オレは立ち上がった。ふと見ると、啓介が居ない。
啓介もトイレかな……。
途中で会うかな。と思ったけど、会わずにトイレの前にたどり着く。
紺色ののれんを潜り抜けるとドアが4つもあった。男用1つ、女用1つ、男女兼用が2つと、全部個室になってるみたいで。男用がカギがかかっていたので啓介かな、と思いながら、空いてるとこを探すと。少し奥の、男女兼用のトイレが中から開いた。そこに入ろうと思って、先に出ていってもらおうと一歩退いたら。
啓介だった。
あ、男用は別の奴か……。
「――――……」
なんか、ムッとしてる。
珍しくオレの顔見ても、笑顔無いし、何も話しかけてこなくて。無言のまま、啓介が手を洗ってる。
オレも何となく無言で、啓介の後ろを通り過ぎて、トイレに入ろうと、思ったら。
「え」
ぐい、と掴まれて、あっという間に、個室に押し込まれた。
「――――……は……?」
無言の啓介が、後ろ手に、鍵を閉めた。
なんか、怒ってるのかな……?
……何に???
「啓介……? トイレ、2人で、籠ってたら変……」
「いくつもトイレあるから平気やろ」
「――――……何だよ??」
嫌に、ドキドキ、する。
……ちょっと、怖い。
……啓介って普段、あんまり怒ったりしないから。
怒った啓介なんて、あんまり記憶が無いレベル。
「――――……今日、自分ち帰るとか言うとったけど」
「……うん?」
「オレんち、帰ろ」
「え? ……やだよ、オレ、自分ち帰りたい」
「あかん、うち来いや。ここ出たら、オレのバイク乗って。ええ?」
「――――……っ」
「……乗らんかったら、オレ、もうお前、しらんから」
「……っ……」
気圧される。
……なん、なの、ほんとに。
「な……なに? 啓介、怒ってんの?」
「――――……」
む、とした視線で見られて。
引き寄せられ、自然と振り仰いだ唇に、いつもより少し乱暴なキスが降ってきた。
「……っ……」
ぬる、と舌が入り込んできて、絡む。
「……や……」
こんなとこで、いやだ。
顔を背けて振りほどいたら、顎を掴まれて、またキスされる。
「……っ……んぅ……」
もう、何か、抵抗する気もなくなる。
……無駄な気がして。
「……ふ……っ……」
「――――…雅己……」
「……んん……っ」
名前、呼ばれると、力、抜ける。何でだ。
皆が居る店のトイレで、こんな事、されてるのに。
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