【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

悠里

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第1章

「好きって何?」

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「……啓介、水ほしい……」

 もうぐったりで、起き上がらずそう言うと、待ってて、と言ってすぐ取りに行ってくれて、ペットボトルを渡される。

「――――……」

 起き上がって水を飲んでると、ベッドの上に座った啓介に、後ろから抱き寄せられた。もうそれ位じゃ、抵抗する気も起きない。

 背中を、啓介の胸に預けたまま、もう一口、水を飲んだ。



「――――……お前って……」
「うん?」

「……くっつくの好きだな……」
「雅己にくっつくのは好きやで?」

「……あ、そ」

 ……オレにとか、絶対嘘。
 どーせ、今までも色んな奴にくっついて生きてきたに違いない。
 結構甘えた、だもんな……。


「――――……今日、帰りに話しかけられた子な……」
「……ん?」

 ……ああ、お前の事、好きな、あの子?


「雅己の事、好きなの分かるんやけど…… やっぱりちょっと嫌やな」
「――――……?」

 何を言ってるか分からなくて、ん?と後ろの啓介を振り返る。


「……? 何それ」
「んー?」

 苦笑いの啓介に、首を傾げる。


「今日呼び止められたやん? 雅己の事、好きな子に」
「え?いつ?」

「帰り」

「……あれは啓介の事を好きな子だろ?」
「――――……その子やないよ。 雅己に話しかけとった子の方や」

「――――??」


 ……啓介に話しかけてた方じゃなくて、オレに話してた2人の内の?
 ……どっち??


「……気付いてへんのか……」


 ため息をつきつつ。
 でも何だかおかしそうに笑って。 啓介はよしよし、とオレを撫でた。


「鈍いトコ、こういう時は役に立つな。まあ変に意識されても困るし」
「……何言ってんだ、お前?」


「――――……ええよ。オレのが先に気付けば 妨害できるし」


 クスクス笑う啓介。
 ……変な奴。 ほんと何言ってんだろ。


「……オレに話しかけてた方のどっちか、オレの事、好きなの??」
「――――…ええのええの、気づかんで」

 ぎゅ、とさらに抱き寄せられる。

「啓介に話してた子が、啓介の事、好きだって事は知ってる」
「オレに話しかけてた子やろ?……そっちは気づくんやな」

「だって、お前によく話しかけてるじゃん。好きそうな顔して」

「――――……妬ける?」
「……妬かないし」

 ぶー、とふくらみつつ、返す。


「――――……興味出た?」
「え?」

「お前の事好きな子、どっちかなーて、気になる?」
「――――……別に」
「別に?」

「……そんなに興味ない、かな」
「――――……ないんか?」

「…………うん。ない、かな……」


 何で無いんだろ。
 どっちの子も、好みじゃない……とか?

 でもそんな事も、別に思ってないな。

 ……オレの女の子のタイプってなんだっけ。


 ……やさしい、可愛い子?
 ――――……気の付く子?

 ――――……んー。


「――――……つかさぁ」
「うん?」

「……オレ、お前と付き合うって、言っちゃってるじゃん……」
「――――……」

「……いいの? 興味、持って」 
「――――……」


「お前と付き合うのとは別に、女の子は女の子で付き合ってもいーの?」
「……だめ」

 腕が回ってきて、更にぎゅー、と抱き寄せられる。


「付き合うって言っちゃってるって言い方……どうかと思うんやけど」

 クスクス笑うのが、直接体に伝わってくる。


「――――……せやけど、お前、ちゃんとオレと付き合うてるって思うてくれてんのやな……」
「――――……だって、そう言っちゃったし……」

「言っちゃったって……」


 また、後ろで、苦笑いしてる。

 

「なあ、お前はいいの、お前の事好きな子、興味ないの?」

「……あると思うん?」

「――――……さあ、わかんね」

「分かれや。雅己がオレの側に居てくれれば、他にはいかんよ」
「……何で?」

「何でって……雅己が好きやからとしか言えんけど」
「――――……」

 好きだからって。
 ――――……でもオレ男だしさ。

 女の子に好かれてて、悪い気はしないよな?

「――――……好き、かー」

 好き、ね。
 ――――……好き。


「……オレの何が好きなの?」
「――――……」

「……お前モテんのに。男に好きって言わなくてもいいじゃん」
「――――……モテたって、オレが好きになんのは一人やし。好きなのが男ってだけやし」

 そう言われたら、そうなのかもしれないけどさーー。
 ……でもさー……。

 なんで、オレ??

 自慢じゃないけど、オレ、男にモテるタイプだとは、全然思えないんだけど。別に可愛くもないし。キレイでもないし 至って普通の男だし。

 ――――……ほんとに意味が分からない。

「――――……じゃあさ。すっごい、可愛くて…キレイでもいいけど、すっごいお前の好みのルックスの子がさ、ほんとにすっごい良い子でさ、すっごいお前のこと好きって言ってきたら?」

「――――……すっごい好みのすっごい良い子、かー……」

 んーと考えてる啓介。

「……まずそれが良く分からんなー」
「え?」

「可愛いとかキレイていう外見だけなら、居るやろけど――――……好みかどうかもよう分からんし。つか、オレ、お前が好きなんやて」

「……意味わかんない」

 後ろから伸びてきた手が、ぶに、と顎を掴んで、ぐい、と後ろを向かされる。くす、と笑われる。


「……雅己の顔が好き」
「――――……」

「お前が、色んな顔してるのが、好き」
「――――……」

「すっごい良い子……ではないんやけどなー、お前」


 クスクス笑う啓介に、ムッとする。


「……口悪いしなー……素直やないしなー……すぐ怒るし」


 啓介の手を顔から外してぷい、と背け、また前を向いて、啓介の胸によっかかる。


「でも、ひっくるめて、全部好きやで」
「――――……」


「オレに抱かれてる時のお前も、めっちゃ好き」
「……っ」


「気持ちええはずがない、みたいな顔して、でも最後は、気持ちよさに負けるとこ。可愛すぎ」

「……黙れ。もー黙れ。何もオレに言うな」

 バカ啓介。
 一生しゃべんな。ばか。


 
 自分だって、まさか、男に抱かれるなんて――――……。
 ……まさかそれを許して、それどころか、気持ち良くなるなんて。

 ……そんなの絶対絶対、絶対の絶対にあり得ないって今も思うのに。



 ずっと親友だったお前に、好きだなんて言われて、抱き締められるとか。今だって、本当は、よく分からない。


 なんで、親友じゃダメだったのかなあって。
 まだ、いつも、考えちゃうしさ。



 いつも考えてるのに。
 ――――……オレはいつも、啓介、受け入れてしまう。

 別に無理矢理力でとかじゃ、全然ない。

 キスされて。
 勝手に、力入らなくなって。
 …………気持ち良くて。逆らえなくて。




 ……なんかこいつのキス、何か入ってるんじゃないだろうか。
 オレを言いなりにする薬とか……。


 そんな訳ないって分かってるんだけど、ちらっと思ってしまうほど。
 キスされてると、されてもいいかなって、思ってしまう。


 ……何でだ???



 心の中でずーっと、考えてしまう。







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