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第1章

「スイッチ」2 ※

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 睨みつけた瞬間。
 啓介は、ちょっと困ったように、退いて。

 それから、むぎゅ、と背中を抱き締めてきた。
 中には、入れないで押し付けたまま。

「……あんなぁ雅己」
「――――……」

「……知っとるやろうけど。オレ、結構経験あるんよ」
「……っ」

 ……知ってるけど。こんな時に、何……。


「……ここまで嫌だとか、言われた事、ほんまないんやけど」
「……っ」

「何で、オレがいっちゃん頑張って抱いてるお前は、気持ちええて、言わないんかなあ……」
「――――……」

 ……すっげえ、むかつく。


「――――……それ、相手、女じゃねえの?」

 ……ああ、もう――――……。
 押し付けられてる所が、ぞわぞわ、する。


「……そうやけど……」
「――――……っじゃあ、もう、オレじゃなくて、女抱けよっ」

 ああ、もう、ほんとに、腹が立つ。


「……そんな事言うてほしいんやないし…」

 はあ、と息を吐かれて。
 
「――――……」

 啓介が、ぐい、と中に入れてくる。


「――――……っ」


 少し、入れた所で、止まる。

 あーもう――――……ほんと、嫌、こいつ……。


「素直やないんも、可愛えとは思てるんやけど……」
「――――……っ」

 中途半端な所に入れられてて、ほんと、ぞわぞわする。


「バカとか、気持ち悪いとか、嫌だとか……あと、やめろ、か?」
「……っ」

「それ以外聞けないと――――……ちょっと、辛いかも……」
「――――……っ」


 だったら、こんな事ばっか、オレにしなきゃいいのに。

 オレに抱きついてるから、頭のすぐ後ろにある啓介を振り返る。睨みつけて、文句言ってやろうと思ったら。


 こんな風なふざけた攻め方して。
 からかってるみたいな、にやけた顔、想像してたのに。

 なんか、すごく――――……。
 ……ほんとに傷ついたみたいな、顔。

 ……だ。騙されないし。
 ――――……んな、顔しても……ダメだし。


 ……。


「――――……」


 あー、もう……。
 なんでオレは、お前にこんなに、弱いんだろう。




「……けーすけ……」
「――――……ん?」

「……後ろからは、やだ」
「……え? ――――……ていうか、してええの?」

 その質問には、答えない。

「――――……」

 啓介が、ふ、と笑って。
 中のを抜いて、すぐにオレを、くるん、とひっくり返したと思ったら。

 膝の後ろに手を置いて、脚を割られる。


「――――……っ」

 脚あげられて、今からもうそれしかする事がないみたいな。この瞬間は、やっぱりどうしても嫌いで。
 唇、噛みしめてしまう。


「――――……嫌そうな顔するな、こん時……」
「……っ」

 啓介が、苦笑い。


 うん。……嫌。
 ……好きな訳ないじゃん。

 オレ、男だし。……男なのに。

 ――――……男を受け入れる為に、脚開かれて、全部無防備に丸見えにされて。一番、体の真ん中に――――……信じられないもの、受け入れて、いいようにされるのに。

 好きな訳、ないけど――――……。

 何度も、この家に来て、啓介と過ごしてしまうんだから、オレは、行為全部が耐えられない訳じゃないみたいで。

 正直、よく分からない。

 
「……好きではないけど……」

 言ったら。

「――――……けど、何?」
「――――……」


 オレは、啓介の首に手を回して、ぐい、と抱き寄せた。


「――――……もういいから、早く、しろよ」

 そう言うと、もうオレに答える気は無いと分かったみたいで、一瞬ふうと息をつくと。


「――――……ん、わかった。抱き付いてて?」

 啓介に、ぎゅ、としがみつく。


「……雅己――――」

 耳元で、名を呼ばれる。


「――――……っん、……」

 さっきからずっと焦らされてたせいで。
 入ってきた瞬間、信じられない位ゾクゾクして。

「……ん、あっ」

「――――…っ…… あれ……イった?」
「……っ……」


 かあっと赤くなって。
 ぎゅ、としがみつく。顔も見られたくない。


「――――……お前、さっきから、グダグダ、うるさい……」
「――――……」


 この瞬間は好きでは、ないけど。
 ――――……だからって、お前の事、嫌いじゃない。


 ……ていうか。
 啓介の事は――――…… ずっと、親友として。人として。
 大好きだった、から。

 嫌いになんて、なれない。



「……本気で死ぬほど、嫌だったら――――……してないっつーの……」


 言うと、中でまた圧迫が増す。
 もう、どんだけ、単純というか、下半身に直結するっつーか。


 ……バカ。


「……雅己――――……」

 いつも好き勝手するくせに。
 急にへこんだり。 

 もうめんどくさい事、この上ない。


「――――…っ」

 何だか、緩く突かれる。
 いつもみたいに激しくなく。
 
 ゆっくり抜かれて、ゆっくり、突かれる。
 しかも、浅いとこを。


「……っん、ん……」

 もどかしい。
 ――――……なんで、こんなに、むずむずするんだろ。


「……っあ……ん……っ」

 開いた唇に、キスされて。
 舌、奪われて、ゾクゾクが高まる。

 啓介の息が熱い。瞳が、まっすぐ、すぎて。


「――――……雅己……」

 キスが離れて。
 唇が首筋をなぞる。ゾクゾク、する。


「――――……っ……」

 両手首、顔の横に抑えられて。
 そのまま、何度も、首筋にキスされて、吸われて。

「……っや、……っンん――――……やめ」
「……嫌や」

 静止を遮られて。
 深くキスされる。


「……っん……」
「――――……オレもう、ずっとこのまま中にいる事にする」

 …………え? ……はい?

「……離れたくないから」
「――――……なに、言って……」


「……雅己、女抱けとか、ひどいし」
「――――……」


「……オレ、お前がめっちゃ好きやから。他の奴とオレがしてもええと思うてるの、めっちゃ嫌」
「――――……」


「だからもう、ずっと中にいる」
「……っ」

 またゆっくり抜いて、ゆっくりゆっくり中に入れる。

「――――……っ」


 ……何なの。
 ……これ。

 ……啓介、怒って、んのかな……?
 ……超、分かり、にくいんだけど……。





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