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第1章
「あれれ?」2
しおりを挟む「ああ……悪い」
啓介は、こんな場面なのに、何だか可笑しそうにクスッと笑った。
何だか余裕があるみたいに感じて、また少しムカつく。
「最近こういう状況なかったから、ピンとこなかったわ」
……最近?
…………最近。……まあ、そっか。
オレに迫ってくる迄は、遊んでたんだもんな……。
「その感じだと、遊ぶのやめたって本当なの?」
「ああ……やめにした」
「ふーん。何で?啓介に彼女出来たって噂も聞かないけどな」
「まあ、今も彼女は居てないんやけど……好きな奴はずっと居ったんや」
「え」
ちょっと驚いたような水野の反応。
「啓介、好きな人居たんだ?」
「居るよ」
「ずっとなの?」
「そ。ずっと好きやったんやけど……絶対無理やと諦めてたんやけどな」
「今はうまくいきそうなの?」
その質問に、今までぽんぽん答えていた啓介の返事が少し詰まった。
「んー。どうやろな。前よりはええかもしれんけど。まだ分からんな。でも、諦めるのはもうやめた。ほんまにあいつの事好きやから」
「――――……」
すっ、と。
もやもやしてた感情が晴れた。
そして。
ふわりと、嬉しいような、照れくさいような。
よく分からない、感情に心を支配される。
あれ。
…………オレ、何で喜んでるのかな。
「なんか啓介らしくない」
言って水野が笑った。
「オレらしいって何やねんな」
啓介が苦笑いする気配。
「……軽くないんだもん」
「アホか。オレ、ほんまは一途なんやて」
水野はそれを聞いておかしそうに笑った。
「ふーん。知らなかった」
「なら覚えといて」
「はあい」
クスクス笑った後、水野は、ふう、と吐息を漏らす。
「そっかー。な~んだ。彼氏と別れたから、憂さ晴らしさせてもらおうと思ったのに」
「また別れたん?またフッたんやろ、お前」
「色々あったのよ、またとか言わないでくれる?」
今度は水野が苦笑いする気配。
「水野もほんまに好きな奴見つけろや」
「んーー? 啓介に言われたくないけど。そうね。考えてみよっかな」
啓介はクスクス笑った。
「せっかくエエ女なんやから。安売りしてたら勿体ないやろ」
「あら、失礼よ、啓介。あたし安売りなんかしてないから。こんな風に誘うの啓介だけだし?」
「そおなん? ……ならごめんな、もう誘いには乗ってやれんわ」
「うん、もー分かった。 私も啓介誘わないで済むように、早くいい男さがすわ」
内容的には結構すごい会話だと思うんだが、2人はあっけらかんとして笑っていた。
「あ、じゃあ、お昼食べなきゃだし。もう行くね! 今度また飲みにいこ、もちろんさっきのお誘いはなしで♪」
「ああ、ええよ。そんならいつでも。……て、良いか聞いてから、かな」
「ええ、なに? 飲みに行くのもダメなの?」
「誤解させたくないんや。 ただでさえ、まだまだどーなるか分からんし」
「ほんとに好きなんだね。いいなあ、啓介にそんなに思われる人」
「そおか? 当の本人はどう思ってるか、分からんけどな」
「そうなんだ?どんな人なの? 見てみたいなー」
「んー。いつかな……」
「うん、じゃあ、いつかね」
笑う啓介に、水野も笑う。
「じゃ、またねっ」
水野が立ち去って行く足音。
そして、ふ、と啓介が軽く息をつくのが、聞こえた。
結局、全部丸々聞いてしまった。
……気まずい。気まずすぎる。
どうしよう。
出ていく? ……逃げる? いや、逃げるの変か。
……出ていく?
どうしよう。
迷っていると、啓介が、こっちに近づいてくる気配がした。
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