「短冊に秘めた願い事」

悠里

文字の大きさ
上 下
17 / 17
番外編

「おとまり」11

しおりを挟む


 焼肉を食べ終わって、皆でテレビを見たりまったりした後、寝る準備を済ませて、おばさんと成哉におやすみを伝えた。

 そしたら、おばさんに魁星がちょっと呼ばれてて。
 少ししてから。

「はー……もうマジで最低。じゃーな、おやすみ」

 あれ、ちょっと荒っぽいせりふ。
 珍しい。

 オレも魁星も、なんか、あんな感じの母親たちだからか、割と、親子仲は良い。思春期真っ盛りの時でも、家族ぐるみでどっか遊びに行ったりもしてたし、おばさんのことも、ちょっと家族みたいな感じだし。

 母親と口きかないとか、全然そういうのも無いまま来てる。
 豪快な人達だからなあ……母さん達が仲がいいの、すごくよく分かる。

 オレと魁星が仲良くなったのが先なのか、母さんたちが仲良くなったのが先なのか。ちょっとよく分からないが、割と、父さん同士も仲が良かったりして。

 …………これから、オレと魁星がそうなったら……。
 ………………まあまだ、結婚とかは、日本では難しいと思うけど。

 いつか、皆で家族になったりするのかなあ……とか、変な夢を見ながら、魁星の後ろについて、階段を上る。

 二階について、部屋に向かいながら魁星を見上げる。

「最後、おばさん、何て言ったの??」
「――――……」

 部屋の電気をつけて、オレが中に入ると、魁星は、鍵をかけた。

「……ドン引きすると思うけど。聞きたい?」
「――――……ええ……ちょっとやだなぁ……」

 言いながら、魁星のベッドの横に敷かれている布団の真ん中に、座る。

「……でも気になるから、聞こうかなぁ」
「――――……引くなよ?」

「ええー……」

 かなり嫌かなあ……。

 思ってるオレの隣に、魁星が座る。
 肩を抱かれて、引き寄せられて。めちゃくちゃ間近で、オレを見つめながら。

「……まだ朔には早いからね。せかすなよー……だって」

 ……ん?
 オレには早い??
 せかすなって?? 何それ?

「どういう意味? 何の話……?」

 聞くと、魁星は、ふ、と目を細めて、更に近づいて、オレにキスした。

「――――……」


 うわー……。

 ――――……何回目、だろう。
 魁星と、キス、するの。


 ドキドキが……。
 やばすぎる…………。


「……ん……?…………ふ…………っ?」

 魁星の舌先が、オレの舌に触れて。
 戸惑ってる隙に、優しく絡んだ。
 

「……………………っっっ!」

 し、死ぬ…………!!!


 心臓がバクバクしすぎて、ちょっと死を覚悟した時。
 魁星が、そっと、離れた。


「――――……真っ赤すぎ……」

 魁星の手が、オレの両頬を挟んで、冷たい手で冷やしてくれる。


「……こういうの。急ぐなって意味だと思う。わかった?」
「――――……っっ……う、ん……」

「大丈夫? 朔」

 クスクス笑って、すりすり触れてる魁星に、はっと思い出した。


「……あ……そういえば…………母さんも、節度をまもれって、おばさんもいるんだしって、魁星に言っとけって、言ってた……」

 言うと、魁星はめちゃくちゃ苦笑い。

「何、オレ、信用なさすぎじゃない?」
「――――……」

 二人で顔を見合わせて、ふふ、と笑ってしまう。

「まあ、その内な?」
「……うん」

 よしよしと、良い子良い子されながら、ふふ、と笑ってたら、さっきの言葉を思い出した。

「ねー、魁星」
「ん?」

「攻めと受けってどういう意味?」
「……あ、わかんないで、さっき話してたの?」

「……うーん、なんとなく、攻める方と受ける方って意味で、分かってるつもりだった」
「――――……」

「……ちゅーする方と、される方とか? でも、それだと、オレが魁星にちゅーしたら、オレが攻めになるのかなーって?」
「――――……」

 魁星は、オレを見て、ぷ、と笑って。

「……抱く方、抱かれる方だから。まあ、普通は、固定じゃねえの」
「――――……だ……」


 …………そっちか。
 ――――……ボボボボボ。

 せっかくひいてきた顔の熱がまた集まる。


「え、さっき、成哉ってば、分からないでそんな攻めとか口にしちゃってたのかー」
「なー? ふざけんなって感じだよなー、酔っ払い……」

 ……とんでもないな、母さんたち……。


「……じゃあオレは受け??」
「――――……でいいの?」

 クス、と笑いながら魁星がオレを見つめる。

「えっ。いいのって……」

 いいのって。……え、逆の可能性もあるの??
 え、オレ、が魁星を……???

「……えっ、あの――――……オレ、攻め、無理……」
「――――……嫌なの?」

「えっ。え。あの。嫌っていうか……えっ、魁星、受けが、いいの??」

 まさかの……??!!

 必死の思いで見つめていると、魁星が、ぷーっと、吹き出した。


「……あー、もー、可愛い……」

 ぎゅーと抱きしめられる。


「――――……オレが朔にしたいから。それでいい?」
「…………っうん」

「ありがと」

 ありがとって。
 ……ありがとって、なんか、うれしい。


「それで良いっていうか…… それが、良い。オレは、してほしいから」
「……うん」

 額に、魁星の顎が触れてて。
 なんだかすりすりされながら、抱きしめられる。



「――――……いつしよっかー、朔」
「えっ、いつ……」

「楽しみだなぁ?」
「……う、うんっ」

 ドキドキドキドキ。

 舌、触ったキスで、心臓やばかったけど。
 ほんとに死んじゃうってないかな、ドキドキ破裂して……。


「……こっちで寝ていい?」
「え。あ、布団で?」

「一緒に、寝よ?」
「――――……うん」

 魁星を見つめて笑顔になってしまうと。
 魁星も笑って、オレの頬にキスをした。


「今日はなんもしないから」
「……うん」


 ……キスくらいは、いいけどなぁ……。
 なんて思いながら、魁星とくっついたまま、ころんと、布団に転がる。

 
 魁星の隣で、向かい合って、手を繋ぎながら。
 いろんな話をして。


 合間に、顔や唇に、軽くキスされる。


「キスくらいはいいよなー?」


 そんな風に笑う魁星に、嬉しくて、頷く。


 今まで何度も泊まりっこはしていたけれど、
 両想いになって、初めてのおとまりの夜は。



 めちゃくちゃ、幸せな時間だった。







(2022/9/19)



「お泊り編」-Fin-
またいつか~♡
しおりを挟む
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

ののん(竹取乃)

ママ達のおおらかさがꉂꉂ(ᵔᗜᵔ◍)笑
ほのぼの朔ちゃん
スパダリまっしぐらな魁星
またいつかの日か*˙︶˙*)ノ"
待ってるよ〜💕

悠里
2022.09.20 悠里

ののんさま♡

おおらかすぎる母たちの元で、朔はあんな感じに……(笑)
魁星は、あの母だからしっかりしてて、朔を守ってあげるのでした……♡

またいつの日か~。
朔ちゃんちょっと抜けてて&ウブで、書いてて楽しいので、きっとまた……(笑)

解除
kuroneko
2022.07.24 kuroneko

おおう続きが!!
って、夢みたいに夢が叶って斜め上に妄想爆発少年になってるwww
ふふふ可愛いな
大丈夫だよ(^^♪


悠里
2022.07.28 悠里

kuronekoさま♡

そうなんです、なんか、続きがかきたくなっちゃって( ´艸`)(笑)
妄想爆発♡ 喜んだり焦ったり落ち込んだり、めいっぱいしております♡
魁星の出番ー(∩´∀`)∩(笑) 可愛いって嬉しいです♡♡

解除
ののん(竹取乃)

さっそく番外編で出会えました💙
朔ちゃんの思考を読み進めているだけで、クスクスほんわか幸せ気分。
楽しく過ごせそうです~
またいつか、二人の登場ゆるゆる待ってます!🤗💕

悠里
2022.07.23 悠里

ののんさま♡

朔ちゃんが書いてほしがるので(笑)
ついつい。
昨日もまた書き始めてしまいました(*´ω`)
ゆるーく続きます(*^^*)♡♡

解除

あなたにおすすめの小説

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-

悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」 「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」  告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。  4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。  その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。 「たまに会う」から「気になる」 「気になる」から「好き?」から……。  成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。  楽しんで頂けますように♡

アルファとアルファの結婚準備

金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。  😏ユルユル設定のオメガバースです。 

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。