「短冊に秘めた願い事」

悠里

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番外編

「おとまり」8

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「朔……」
「……うん?」

 ドキドキで破裂しそうなんて思いながら、魁星の呼びかけに顔を見上げると、魁星は優しく笑う。


「……どうする?」
「……どうする、て?」

「……もっと色々、する?」

 魁星の瞳が、優しく揺れる。
 見下ろされてそう言われた瞬間、もう今までの時点で心臓が壊れそうな最大限だと思っていたのに、より大きく、どくん、と鳴った。

「どうする? 朔」

 めちゃくちゃ優しく笑って、オレの頬に触れる。


「魁星……は……?」
「オレは――――……まあ、朔に全部触りたいけど」

 言われた言葉に、ぼんっ!と音が立ったんじゃないかと思う位、真っ赤になった、と思う。耳が熱すぎて思わず、自分で耳と頬に触れてちょっと俯くと。

 ぷ、と笑った魁星に、抱き寄せられた。


「――――……」

 クックッと笑ってて、体が震えているのが伝わってくる。
 もう。何で笑うんだ。


「……嘘だよ。もうすぐ帰ってきちまうし。そんな忙しないとこで、しない」

 オレの顔を見た魁星は、なんかもう、笑いすぎてちょっと涙ぐんでるし。

「むーーーーーー!!!」

 ……ひどい、からかったなー!!
 もーー!

 き、と魁星を睨むと、それに気づいた魁星が、ちゅ、とオレに口づけた。


「……嫌がるのかなーって、聞いてみただけだよ。すげえ可愛い顔された」

 そんなこと言いながら、まだ笑ってる。
 でも、優しい声で言われて、熱い頬を魁星の冷たい手が包んでくれると。
 なんか、ムッとしてた気持ちは、すぐ解ける。


「なんか、ほんと、湯気出るかなぁ、朔」

 すりすり、と頬を撫でてくれる。


「……魁星の手、冷たくて気持ちいい」

 思わず、その手にスリスリしてしまうと。
 ちょっとビックリした顔をした魁星が、一瞬黙ってから、オレの頬を摘まんだ。


「オレの手が冷たいんじゃなくて、朔のほっぺが熱すぎるんだよ」

 クスクス笑いを含んだ、優しい声。


「――――……少しずつ、してこうな?」

 今度はまたオレがびっくりして、魁星を見てから。
 また熱くなった気がするけど、とりあえず、こくこくと頷くと。


 ちゅ、と頬にキスされた。



「一気にしたら、朔、爆発しそうだよな」

 クスクス笑われて。思わず真顔で魁星を見上げる。


「うん」

 頷くと。
 一瞬きょとん、とした魁星が。


「つか――――……頷くなよ」

 見惚れる位、鮮やかな笑顔で、オレを見て。
 くしゃくしゃと、髪の毛を撫でられる。


「少しずつな?」

 ……愛しいって。
 思ってくれてるんだろうなって。


 ……「愛しい」なんて感情。
 今までちゃんと感じた事も無かったのに。


 魁星が、きっと、オレを、そう思ってくれてるんだろうなって思える笑顔。


「――――……」



 ぼろ、と急に涙が、零れた。


「え」

 魁星がめちゃくちゃびっくりした顔でオレを見て。


「何。どした……?」

 心配そうに、オレを覗き込む。
 涙を拭ってから。



「魁星が、オレのこと……好きそうだから……」
「――――……」


「なんか……涙、出て来ちゃった」


 涙声になる声と、まだ零れてくる涙を止めようと、困っていると。
 むぎゅ、と、魁星の胸の中に引き寄せられた。



「すげー、好きって、言ってるじゃんか……」
「……ん」

 こくこく、頷く。

 分かってる。
 好きって。言ってくれてるの。

 分かって来た。




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