「短冊に秘めた願い事」

悠里

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番外編

「おとまり」5

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「あ、なんか、オレ、今変なこと、言った?」
「……言った」

 ククッと笑い出して、魁星がオレをまっすぐ見下ろす。


「オレがお前のこと、男だって知らないと思ってんの? どういうことだよ?」

 めちゃくちゃ面白そうにのぞき込まれて。
 ドキドキしつつも、ほんとに変なこと言ったな、オレ、と固まる。


「……ああ、そーいうことか」

 少しして、魁星がニヤッと笑ってオレを見つめる。


「……男の体だ、とか、言いたいのか?」
「――――……」


「誰も居ないから、早く来いよってオレが言ったから、想像しちゃった?」
「――――……」

 何で分かるんだ。
 魁星、すごすぎる。


 うん、と頷くと。


「んー。つか……朔が男って、知ってるに決まってるし」

「――――……魁星は……男が、好き?」


「なんつー聞き方……」

 クスクス笑いながら、魁星は、オレの頬をぶに、とつまんだ。


「ちゃんと聞いてろよ」
「……うん」

「朔以外の男を可愛いと思ったことがないから、多分男は好きじゃない。で、朔以外の女も、好きだと思ったことがないから、女も別に……てことは、さ」
「――――……」


「オレは、朔が好きなんだよ」

 分かる?とにっこり笑う魁星を見上げて。
 ……何だか感動してしまう。

「……魁星……」

 じーん。
 オレ、泣いちゃうかも……。
 あ、でも……。


「……でも、魁星がさ」
「ん」

「オレに触って、男……って分かったら……」

 そこまで言ったら、魁星がまた笑い出す。


「だから、男って分かってるから。……朔」

 ぎゅう、と抱き寄せられて、よしよしと、頭を撫でられる。


「朔のそういう、よくわかんねえとこも、全部、可愛い」

 クスクス笑いながら、すっぽり、魁星の腕の中に納まる。


「――――……男って知ってるに決まってる。それでも、ずっと好きだったから」
「――――……」


「お前も、同じじゃねえの?」
「……多分……同じ」

 また魁星が、笑う。

「何、多分って?」
「……魁星とオレの気持ちが、全部同じかは分かんないから……でも、ずっと、好きだったのは……同じ……」


「――――……ん。おっけ」


 クスクス笑った魁星に、よしよし、と撫でられる。


「とりあえずオレんち行こうぜ。とりあえず部屋着持って、スマホ持って……そんなもんか?」
「うん」

「あとは、明日出かける前にまた寄ればいいよな」
「うん」

 魁星がオレの引き出し開けて、部屋着とかほいほいと出して、バッグに詰めてく。

「どこに何が入ってるかとか、全部知ってるもんね……」
「朔だって、オレの部屋知ってるだろ」

「うん。知ってる」

「――――……ずっと一緒に生きてきたじゃん。オレら」
「うん……」

「これからも、ずっとだけど。平気?」

 魁星が、クスクス笑いながら、オレを見つめる。


「平気っていうか。――――……嬉しい」


 魁星を見上げると、魁星は、その瞳を緩めてオレを見つめて。

 ちゅ、と頬にキスしてくれた。






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