9 / 17
番外編
「おとまり」3
しおりを挟むラーメンを食べながら、さっきの続きを考えていると。
「ねーねー、朔ちゃーん」
「んー?」
「何で朔ちゃん、元気ないの?」
沙也がラーメンをちゅるちゅると、すすりながら、オレをじーっと見てる。
「んーん、元気だよ?」
「そうかなあ?」
「部活疲れちゃったかも。暑かったしー」
それは本当だから、普通にそう言うと。
「じゃあおやつに、一緒にアイス食べよーよ」
いいよ、と言いかけて。
あーおやつの時間にはもう、居ないかな……。
「ごめん、沙也、オレ今日魁星のとこに行くから」
「え、そうなの?」
母さんがオレを見る。
「うん。泊まりに行ってくる」
「泊まり? 綾には言ってあるのかな?」
「魁星のおばちゃんからの誘い……みたいな気がする」
そう言うと母さんはクスクス笑った。
「何よそれ?」
「……だから……オレ、挨拶に行くみたいな……」
「ああ――――……そういうこと? まあ、魁星はこっちで宣言してったもんね」
「……そう。多分」
「あらあら……あとで綾に電話しとこーっと」
「何電話するんだよー?」
なんか、嫌な予感しかしない。
「あら? 別に変なことじゃないわよ? 食事よろしくーとか……。まあ……色々」
「色々って何ー」
ほんと、このお母さん達は……。
いいのか、自分たちの息子同士が、付き合うとか言っちゃってるし、泊まるとか言ってるし。
……いいのか、不純同性交友みたいなのとか、心配しないのか……?
まあ、でも、そんな事心配しないか……。
実家でそんなこと、する訳ないし。心配しないよな、そうだよな。
「ごちそーさまーー」
沙也が元気に言って、「テレビ見てくるー!」と、走って離れて行った。
離れて数秒。
「朔」
「……ん?」
「綾も居るんだし、ちゃんと節度は守れって、魁星に言っときなさいよ」
「――――……」
とんでもないこと言った母さんを、多分オレは、すごい顔で見たと思う。
母さんは、吹きだして、「あんたは大丈夫だと思うんだけどねー魁星はすすんでそうだからなー」なんて、言う。
「そういうのやめてよ。もー!! もー!! ごちそうさま!!」
立ち上がって、部屋に逃げ込む。
そのまま、ひゅーん、とベッドに俯せに倒れた。
顔を埋めたまま、枕を抱き締めて、声にならない声で、何を言ってるのか自分でもよく分からないけれど。
「んーんーんーーんーー!!」
もー。母さんの馬鹿っっっ!!
意識しちゃうじゃんかっ!!
ただでさえ、お風呂でもいっぱい色んな事考えてたのに!!
……あー、もー、どーやって魁星の所に行けばいいんだ。
あんまり早く行ったら、そういうこと期待してるみたいな……。
もしもし、早く行って、魁星に、そういう事が楽しみで早くきたんだなとか、思われちゃったりして、で、まんまと、触られちゃったりして、そんで、男ってことがバレたとして。
……いや、バレてはいるのか。
いやちがう、そもそももとから、隠してる訳じゃないんだから、バレたっていう言い方も……。
うーんうーんうーん……。
そのまま、動けない。
枕を抱えて、どうにもならないことを延々と考えていたら、ふわーと欠伸が漏れた。
そのまま、気が遠くなってきて――――……。
多分寝ちゃったんだと思う……。
35
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

まさか「好き」とは思うまい
和泉臨音
BL
仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり……
態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語
*2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。

勘違いラブレター
ぽぽ
BL
穏やかな先輩×シスコン後輩
重度のシスコンである創は妹の想い人を知ってしまった。おまけに相手は部活の先輩。二人を引き離そうとしたが、何故か自分が先輩と付き合うことに?
━━━━━━━━━━━━━
主人公ちょいヤバです。妹の事しか頭に無いですが、先輩も創の事しか頭に無いです。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま

失恋したのに離してくれないから友達卒業式をすることになった人たちの話
雷尾
BL
攻のトラウマ描写あります。高校生たちのお話。
主人公(受)
園山 翔(そのやまかける)
攻
城島 涼(きじまりょう)
攻の恋人
高梨 詩(たかなしうた)
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。

楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………

サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる