「短冊に秘めた願い事」

悠里

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番外編

「七夕翌朝」1/2

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 七夕の翌日の朝。
 いつものように、魁星が迎えにきた。

「朔ー行くぞー」
「待ってー」

 鞄を肩にかけて、ダッシュで階段を下りる。

「おはよ、朔」
「――――……」

 ……なんか。
 いつもよりももっと、カッコよく見えるんですけど。
 何で? もうこれ以上カッコよく見えるとか、無理だよう。

「おは、よ……」

 かあっと赤くなってしまい、辛うじて言った。
 魁星は、そんなオレを見つめて固まって――――……それから、苦笑い。

「……朔」

 くしゃ、と頭に手を置かれる。


「――――……学校休もうか?」
「え?」

「お前の部屋いこっか」
「え??」

 それって……どういう……?

 ……ドキドキ。
 もはや、いいよと言ってしまいそうなオレの後ろから。


「ママ―! かいちゃんと朔ちゃんが学校休むって言ってるよー! ずるいよー! 沙也も休むー!」

 げげっ。沙也。
 どこから見てたんだ。

「しー、沙也、休むわけないだろ、もう行くから」

 オレは慌てて靴を履いて、沙也を振り返った。

「じゃあな、沙也、幼稚園いってらっしゃい」
「はーい。ばいばいー」


 魁星と一緒に家を出て、少し歩いてから。

「朝から、ヤバい方に誘わないでよ」
「……朝から、ヤバい目で見るなよ」

 二人で見つめ合って。
 同時に、ぷ、と笑ってしまった。

 あ、よかった。ちょっといつもどおりだ。


「も、こっからは、普通でいこうね。あ、魁星、学校では秘密ね?」
「え。まじで?」

 何その返事。
 ……まさかとは思うけど……?

「魁星、学校で言おうと思ってたの?」
「いや……まあ。別にバレてもいいかなーとは……」

「う……嘘でしょ、絶対秘密だよ、オレ、お前のファンに刺されるからね」
「――――……そんな事ない、ような……んー……」
「ちょっとまって、ないようなって何だよ~! 怖いから絶対やだ」
「……んー……」

 その沈黙が怖いんだよう。

「昨日のあの子くらい、可愛い子だったら、諦めてくれるかもしれないけど」
「……」

「オレってなったら、抹殺されるー」

 お前のファン、怖い。
 
「んー……分かった。しばらく様子見るか」
「しばらくじゃなくて、もうずっと秘密で行こうよー。オレそれでも全然満足だから……一緒に居てくれるだけで」

 そう言うと、魁星はじっとオレを見て。瞳が、優しくなって。
 え。うわ。何……。めっちゃ近……。


「あっ!! かいせー、さくー!!」

 後ろから同じクラスの奴が走ってくる。

 ……たす、かった? って、いうのかな?
 通学路のど真ん中で、魁星って、今、何をしようと……。

 魁星を見上げると。ちょっとムッとしながら、後ろを振り返っていた。
 でもオレと目が合うと、ふ、と優しく笑む。

「邪魔されないところで、あとでな」

 くす、と笑われて。
 もうなんか、ドキドキしちゃうオレ。



 だめだ、事態の進み具合に、全然、ついてけない。

 心臓、やばい。





(2022/7/14)

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