4 / 17
第四話
しおりを挟むずっと、オレのことが好きだったってこととか。
昨日の告白、ヤキモチ妬いてくれないかなーと思ってたこととか。
短冊見た時、ダッシュでオレのところに来たかったけど、ちょっと落ち着いて、告白も断ってからにしよう、と思ったってこととか。
魁星が、色々、話してくれた。
男同士だけど。
――――……結婚しような、朔。
そんな風に笑う魁星。
まだ早いよね……? そう言うと。
だって、どうせこのままずっと一緒に居るから、いずれはそうなるだろ?
なんか。
ずっと思ってるけど。
オレは、魁星には勝てない。
今日も、そう思ってしまう。
たくさん話していたら、もう二十時半。
そろそろ帰る、と、魁星が言った。名残惜しかったけど、また朝会えるしと、玄関まで送ろうと魁星の後をついて一階に降りる。
「お邪魔しましたー」
魁星が、母さんと沙也に笑顔で言ってるから。
オレはすぐ玄関に行くと思って、視線をそっちに向けたら。
後ろから、魁星の、声。
「おばさん、沙也ちゃん。オレ、朔、貰うから」
なんて、魁星が急に言って。
二人は、どんな意味で取ったんだろう、いや、沙也はわかんないだろうけど、母さんは?
瞬間的に、真っ赤になった後に、焦ってるオレを見て、母さんと、何と、横に居た沙也も。
「よろしく、魁星」
「よろしく、かいちゃん」
と、言った。
「――――……は?……」
何、その静かな回答?って思ったら。
「……朔の短冊、沙也が見てたんだよね。昨日帰ってから聞いたの」
と、母から信じられない言葉が。
「えっ、沙也、字、読めるの?」
「沙也、書けないけど、読めるのもあるんだよー。昨日の朔ちゃんのは全部読めたよ」
「――――……」
ちーん。
オレは、しゃがみこんだ。
やっぱり、夢であってほしい。
「後でお父さんにも言っとくから」
いつも豪快な母は、こんな時も豪快で。
ひらがなを読めて、あれを読んでいたくせにオレには言わず、母に言う沙也にも、ちょっと思う所もあり。
なんとか、立ち上がって、魁星の隣から、二人を見る。
「……っていうか、息子の一大事に、なんかもっと言うこと、ないの? 焦るとか、反対するとか、無いの?」
「反対したって、魁星が聞くわけないじゃん」
「朔ちゃんだって、かいちゃんが好きじゃん」
母さんと沙也が何を今さらという感じで、呆れたようにオレを見る。
「……ていうか、昨日沙也に聞いた時だって、まあ知ってるけどね、って感じよねえ? 沙也」
「そうだよねえ、ママ」
二人は、ふふー、と笑い合ってる。
二人の言葉に唖然。
オレ達のそんなやりとりを見てる魁星が、ぷ、と吹き出した。
「魁星も、何で笑ってんの……」
「だって面白いから」
言いながらオレを見て、クックッと笑いながら。
「あ、そーだ。ちなみに、オレ、こっち来る時、母さんに言ってきたから」
「……何を?」
「オレを朔にあげて、朔をもらってくるって」
「~~???!」
「あらそうなの。綾はなんて?」
豪快なうちの母さんと気が合う、魁星の豪快な母さんは、綾さん。
「返品されないように気を付けな、て言ってましたけど」
「綾らしいね。あとで電話しとこー」
「……っぜ……絶対、変、だと、思うんだけど、皆」
オレが、耐えきれずについついそう言うと。
「短冊にそんなこと書いてる朔が一番恥ずかしいからね?」
母に突っ込まれ、言葉もない。
「諦めな、朔」
魁星がクスクス笑って、オレを見つめる。
――――……ていうか。諦めるも何も。
魁星が大好きすぎるオレは。この状況が、信じられない程、嬉しいのは、まぎれもない事実で。でも、どうにも、やっぱり夢みたいな、おかしな空間。
漫才みたいなやりとりを、呆然と眺めていたら。
魁星が、オレを見て、笑った。
「もう遠慮しないから」
「――――……」
戸惑いつつも、ん、と頷くと。
沙也が横で、おめでとーと拍手をしている。
あ、沙也だけには口止めしないと、と思ったら。
おませな沙也に、「知ってるよう、男の子同士は色々特別だって。沙也は、分かってるもん。朔ちゃんが良いっていうまで、だれにも言わないよう」と、言われた。
めちゃくちゃ驚いてるオレに、魁星と、母さんは笑ってるし。
高二の七夕の日。
初恋が叶って。
初キスをして。
初恋人ができて。
いきなり家族公認になった。
一生忘れない、記念日になったなあ……。
なんて思いながら。
昨日書いた短冊に、心からのありがとうを捧げた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
(2022/7/7)
最初はロマンティックな話にするはずだったんですが……。
あれっ?(*´ω`)(笑)
楽しんで頂けたら嬉しいです(*'ω'*)♡
by悠里
45
お気に入りに追加
211
あなたにおすすめの小説
【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-
悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。
「たまに会う」から「気になる」
「気になる」から「好き?」から……。
成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。
楽しんで頂けますように♡
【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-
悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」
「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」
告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。
4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。
その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
漢方薬局「泡影堂」調剤録
珈琲屋
BL
母子家庭苦労人真面目長男(17)× 生活力0放浪癖漢方医(32)の体格差&年の差恋愛(予定)。じりじり片恋。
キヨフミには最近悩みがあった。3歳児と5歳児を抱えての家事と諸々、加えて勉強。父はとうになく、母はいっさい頼りにならず、妹は受験真っ最中だ。この先俺が生き残るには…そうだ、「泡影堂」にいこう。
高校生×漢方医の先生の話をメインに、二人に関わる人々の話を閑話で書いていく予定です。
メイン2章、閑話1章の順で進めていきます。恋愛は非常にゆっくりです。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる