上 下
824 / 825
◇ライブ準備

「アイドル?」*優月

しおりを挟む


◇ ◇ ◇ ◇


 皆で教習所の話であれこれ盛り上がった後は、明日も学校だしってことで、早めに解散した。
 皆と別れて、駐車場にむかって歩き始める。

「楽しかったね」
 言いながら、玲央を見上げる。

「じいちゃんちから出て、ホテル行って、ライブ行って、皆と店行って……ほんと、なんかじいちゃんちが遠く感じるよな」
「うん。遠いー。……けど、希生さんのおうちも、すごく楽しかったし……」
「ん」
「ボールも貰っちゃったし、玲央とずーっと一緒だったし。なんか今日は、幸せなことありすぎて大変だった」

 そう言うと、玲央はちょっと黙って、んー、と考えてる。
 途中でじっと見つめられて。何か言いたげな。

「――幸せって、優月がよく言うのさ」
「うん?」
「やっぱり好きだと思う。オレ、そんな風に言ったこと無かったから、なんかやたら照れるって思ってたけど……」
「ん」

 そういえば、なんか、そういうの言うのって恥ずかしいとか、玲央言ってたなあ。……玲央が言うことの色々なことの方が、いっぱい恥ずかしいことある気がしてたけど。ふふ、と笑いながら玲央を見上げていると。


「……だからオレも、今度思ったら、言うから」

 まっすぐ、見つめられて、そんな風に言われると。
 なんかオレも今既に、ちょっと照れるけど。


「――今は? 言わないの?」

 そう聞いたら。

「今、言うのは、優月の言ったのに乗っかった感じがするから……今度、オレが思った時、自分から言う」
「宣言、してるの?」

 クスクス笑ってしまうと。玲央は「してる」と、ニヤッと笑う。

「……じゃあ、楽しみにしてるね」
「――ん」

 クスクス笑う玲央が、通りかかったコンビニを見つけて、「コーヒー買いたい。行こ」とオレの手を引いた。

「優月はカフェオレでいい?」
「うん」

 自動ドアから入ると、コーヒーのカップを取ろうとした玲央が、「――あ、トイレ行ってくる。待ってて」とオレを振り返った。頷いて手を振って、なんとなく雑誌のところに止まった時。

 後から入ってきた、小学生の男の子がオレのところで止まった。一年生とか、そんな感じ。まだ、ちっちゃい。

「……?」
「お兄ちゃんて……」
「うん??」

 なんだか一生懸命な顔をしているので、にっこりして言葉を待っていると。

「お兄ちゃんて、アイドル??」
「――……ん???」

 アイドル……とは??
 ……アイドル…… あ、分かった。

「あ、この髪、かな?」

 その子の前に、しゃがんで、髪に触れて聞いてみる。

「うん。これも」
 チョーカーとか、アクセサリーとか、色々見ながら訴えてくる。

 うーん。勇紀や玲央のチョイスで着飾ると、オレでもアイドルに見えるのか。アイドル……。なんかちょっとおもしろくて、ぷふ、と笑ってしまいそうになった時。

「あっ、すみません、何してるの?」

 多分、男の子のお母さんがやってきて、その肩を抱いた。
 と、そこに、後ろから、「優月?」と玲央がやってきた。

「やっぱりアイドルだー」

 男の子がめちゃくちゃ喜んでいる。
 多分お母さんも、突然現れた玲央に、見惚れちゃってるというか。

 四人、変な空気が流れたけど。
 多分、この変な空気の意味を、全部、分かってるのはオレだけ、と思うと。

 ふふ、と笑ってしまった。





(2024/11/19)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

処理中です...