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◇ライブ準備
「仲間?」優月
しおりを挟むコンサートが終了して、お客さんは皆順番に、会場を後にしていく。
急がなくていっか、ということで、オレ達はとりあえず椅子に腰かけた。
結局コンサート中はずっと立ってたので、なんか久しぶりに座った気分。
「すごい、熱気だったね……なんか、熱気に当てられて……」
「疲れた?」
「うん。疲れた。けど、なんか……熱い、みたいな感じ」
そう言うと、勇紀が「分かる」と言ってくれる。
「なんかめっちゃ高揚するよねー、ライブってさ」
「うん! するー!」
「終わった後、ちよっと寂しいよね」
「分かるー。今すごく、寂しい」
白いライトで照らされてるステージが、なんだか寂しく見えていたので、うんうん頷いていると、玲央がクスクス笑った。
「そんだけ楽しかったなら、良かった」
「うん。ありがと、玲央。なんかこのオシャレな感じも、めちゃくちゃ、楽しかった」
うふふ。と笑いながら、さっき貰ったボールを見つめる。
「ボールもなぜかオレが貰っちゃったし」
そう言うと、皆がクスクス笑う。
「優月がそういうカッコして、アクセサリーと髪、ちょっと色入れるだけで、見違えるんだなーっていうのが新発見」
颯也がそんな風に言って、笑う。
「褒めてる?」
「あぁ。褒めてる。バンドしてます、て言っても分かんないかも」
「え―そんな訳ないし」
完全に冗談だと思って笑っていると、甲斐が続けて言うことに。
「先輩ら、優月のこと、オレらの仲間だと思ったんじゃねえの? そんな気がするけど」
「一緒にいるから、仲間? とは思ったかもしれないけど……バンドの仲間とは思ってないと思うけど……」
「いや。分かんないよねぇ。なんならもう、優月、バンドのメンバーになる?」
勇紀が最後、めっちゃ楽しそうに言ってくるけど。
「いやいや、むりむり、あんな人前で、キラキラできないから、オレ」
全力でお断りしていると、「いいかも」と玲央が真顔。
「えっ。玲央まで冗談……」
「いや、良いんじゃねえの、別に、四人が五人になっても……」
「無理だってば。オレが今日なったの、玲央がオシャレにしてくれただけの外側だけだから」
もう、ほんと皆、何の冗談なんだ。と、眉を顰めていると、皆は、おかしそうに、ははっと笑う。
「いいと思うんだけどなぁ」
勇紀はまだ言ってる。
今日見てても思ったけど――楽器が弾けるとかじゃなくて。
やっぱり、なんか、キラッキラしてる人たちって、特別なんだと思う。
「皆は、ステージの上で、すっごいキラキラだったから。オレ、あんな風にはなれないよ」
真面目にそう言うと、皆はオレを見て笑ってて、勇紀が「キラキラだった?」と聞いてくる。
「うん。キラキラしてたよ――今一緒に居てくれてるのがちょっと不思議」
自然と出た言葉に、なんだか皆が顔を見合わせてる。
「なんかそれ言ったら、さ」
颯也が、な? と甲斐を見る。甲斐も「だな?」と、勇紀を見て。
「うん。ね。それ言ったら、だよね?」
良く分からない、言葉のリレーをしてるみたいな。
勇紀が玲央を見て、「ね、玲央」と。
「――まあ。そうだよな……」
「?? なに?」
オレが聞くと、玲央がクスクス笑って。
「――優月がオレらと居てくれる方が、貴重な気がするけどな?」
「え。何で?」
全然意味が分からないのだけど。
そう思っていると。
「こんな和むこと、ないよなあ? 特に玲央が」
そう言って、勇紀が笑うと、玲央も微笑んでくるけど。
「まあ、オレはもっとずっと前から優月と友達だけどな?」
ふふふ、とちょっと得意げな勇紀に、頷きつつも、あんまり意味が分からないけど。
「お互い、一緒に居るのが不思議でも、居られるのは――貴重だよな?」
玲央がクスクス笑いながら言って、それから勇紀とオレを見比べた。
「お前らは、なんかちょっと、似てるけど」
ふ、と笑う。
(2024/11/5)
いいこの日ですね😊
うちの子たちが自分の日だって
小さい頃言ってたのを思い出す日です笑
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