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◇ライブ準備

「無理ー」*優月

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「ほんと玲央に、いちゃつくな、なんて言う日が来るとは……」
 勇紀が言うと、皆が、ほんと、と笑ってる。

「優月はさ、会った時から、玲央が優月にこんなだから、昔の玲央を知らないじゃん?」
「……それはそうかも」

 ふむ、と頷いていると。勇紀が「クールを地でいってたんだよねぇ」としみじみ言ってる。
「まあ今も、顔が変わった訳じゃ無いんだけどな……」
 颯也の言葉に、甲斐が面白そうに笑って、「そうなんだよな」と頷く。

「顔は変わらないのに、人って、こんなに雰囲気変わるかね。まあ、バンドのファンには、今まで通りのイメージで見せとけよな?」

 甲斐の言葉に、玲央は苦笑して、「ステージに優月が居ないから平気だろ」と言った。

「優月がステージに居たら、ちょっと分かんねえけど」
 なんて笑いながら玲央がオレを見つめてくる。
 オレはふふ、と笑って、「ステージになんてあがらないから大丈夫だね」なんて答えたのだけれど。途端に、玲央と皆が、面白そうな顔でこっちを見た。

「? どうしたの?」
「なんか今――ちょっとおもしろい妄想しちゃった。ってか皆も? 玲央も?」と勇紀が皆に聞く。

「優月、ピアノ弾けるんでしょ? 玲央が歌って、優月が弾いちゃうとか、ちょっと浮かんじゃった」
 勇紀のとんでもない発言に、オレは、えっ!とものすごい、びっくり。

「えっ……てか、無理だよー! それにそれじゃ、オレステージに乗っちゃうし。今の話と、違っちゃうじゃん」

 無理無理と首を振っていると、何だか、玲央も含めた四人。
 じー、とオレを見つめてくる。

「え……何……」

 ふーん、みたいな感じで、皆がニヤニヤしながら顔を見合わせてて。
 なんだかよく分からないけど。


「あの……ステージとか、無理だからね?? 本気じゃ無いとは、思うけど」

 なんだか冗談なんだかよく変わらない雰囲気だけど、とりあえず、無理アピールだけ伝えると。

「まあ、ぶっつけは無理だよな。練習しないと」

 という玲央のセリフ。

「――――???」

 練習???

 クスクス笑いながら、四人がこそこそ話してる。
 ええ。何……。


「玲央……?」

 つんつん、と玲央の背中の服を引っ張ると、振り返った玲央がオレを見つめて。ふ、と微笑む。

「なんかその引っ張り方、すげー可愛い」

 よしよし、とあたまを撫でられて、ふわ、と気持ちが綻んでしまう。


「夏に回るライブハウスとか。ちっちゃいとこならいけんじゃね?」

 颯也の声が聞こえる。
 勇紀が、いいね、と楽しそうな声も。

「ピアノって、発表会とか、やってきた? 優月」
「え。ぁ、うん、まあ……」

 甲斐に聞かれて一応頷くと、「そっか」とにんまり笑われる。


「えええ……」
「まあ。案として、だから」

「嘘でしょ、玲央……」

 クスクス笑う玲央に、「無理だよー」と訴えていると。
 急に、会場が暗くなった。

 
 あ。始まるのかなと、そっちに意識が向く。
 すごく、わくわくする。





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