上 下
812 / 825
◇ライブ準備

「久しぶりなかんじ」*優月

しおりを挟む
 皆と待ち合わせの出入り口。
 玲央と、もう居るかな、と言った時、三人の姿を発見。

「あ、居た」
「ああ」
「目立つねーあの三人も。すぐ見つけられる。怜央が一番だけど」
「そう?」
「うん」

 ライブのお客さんたち、皆気合入ってて、可愛いしカッコいい、おしゃれな人達もいっぱいいるのだけれど。
 どうしてあんなに、目立つんだろう。すぐ見つけられた。見つけたっていうより、目に勝手に入ってきたというか。

 オレ達が気づいたのと同時に、三人も気づいた素振り。勇紀がオレにおーいと手を振っている。

 近づくと「玲央ー優月ーお疲れー」と勇紀が言ってくれる。
 皆が笑いながら、玲央に視線を流す。

「こういうとこでも玲央は目立つよな。お前とはどんなとこでも待ち合わせできる気がする」
「謎なくらい、すぐ目に入るよな」

 甲斐と颯也が笑いながら言うけど。

「今、優月も、お前らのこと見て、すぐに見つけられるって言ってたぞ」
 そうなの? と皆に見られて、「うん」と頷く。

「皆目立つんだよ~。オレはたぶん、余裕でかくれんぼできるけど、皆は絶対できないよね」

 ぷぷ、と笑いながら言うと、「何でかくれんぼ」と突っ込まれる。


「わー……なんか、みんな、久しぶりって感じがする……」

 なんか、三人と話してたら思わず出てしまった言葉に、皆が首を傾げた。

「久しぶりって?」

 勇紀が言って、皆も、とっても不思議そう。あ、そうだよね、全然久しぶりじゃないんだけど……。

 隣で玲央が何だか面白そうにオレを見ている。

「なんか、今すごく久しぶりな気がしちゃって。希生さんのお家、色々楽しかったんだけど、なんか本当にすごくてね……不思議で」

 なんといえばいいかなあと考えている間、皆がちょっと笑いながら待ってくれている。

「あ、なんか、異世界みたいな感じで……すごすぎて。なんか皆の顔みたら、戻ってきたなーって気が……」

 言うと、横で玲央がぷっと吹き出す。

「楽しかったなら良かったね。あれか、濃密すぎたってこと?」
 勇紀がそう言って笑うので、うんうん、そうなの、と頷いてると。

「異世界だって」
「異世界……」
 甲斐と颯也がクスクス笑いながらつぶやいて、怜央を見ている。
 玲央はオレの頭をぽんぽんと撫でた。

「とりあえずじいちゃんたちは楽しそうだった」
「オレも楽しかったよ。すっごく。なんか、二日間、めちゃくちゃ濃かったの」

 そう、それに、ついさっきも、なぜか朝からホテル……とか。
 ……なんか全部、ひっくるめて、全然、いつもの日じゃなかったし。

 なんかこの二日間もうなんか、すごかったなぁ……。


「つか、優月がめちゃくちゃオシャレになってるんだけど」
「な」

 甲斐が言ってくれて、颯也が頷きながら「髪も良い感じじゃん」と、オレを見る。

「これは、玲央がささっとやってくれたの。すごいよね」
 自分の髪を手にとって見ながら言うと、勇紀が楽しそうに頷く。

「そうそう、それを言おうと思ったのに、久しぶりって言われて飛んじゃったよ。チョーカーも似合うー!」

 勇紀が笑いながらそう言ってくる。

「ほんと似合う。いいね、あれだよね、オレら、優月もいれて、皆でバンドだと思われそうだよね」
「え、そう?」


 そんな訳ないけど、と思いながらも、なんだか嬉しくて、隣で微笑んでくれてる玲央を見あげた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

処理中です...