【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇ライブ準備

「神聖」*優月 

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 お昼ご飯を食べ終えて、また店の外に出ると、玲央が「つかまってて」とオレを見下ろす。

「人多いから」
 確かに横に並んで歩いてると、人にぶつかりそうな感じの小道に入ったところ。
 優しい瞳に、うん、と頷いて、玲央の背中をちょっと握ってみる。すると、玲央は、オレを見て、さらに優しく瞳を細めた。

「なんでそんな小さく握んのかな……」

 ……?? 腕でも組む感じを求められてた???
 玲央が歩いてるだけでも視線を集めちゃってるので、ちょっと遠慮したのだけど。それに、この少し握ってるのも、幸せだなーと思ったし。

「あ、可愛いからいいよ。そのままで」

 少しだけ心配になったオレに気づいたのか、玲央はクスクス笑うと、ぱち、とウインクして見せる。どきっと、甘くときめく、心臓。

 もー。ずるい。ずるいなー、かっこよすぎて。
 はー。もう。
 ちょっと心臓がバクバクしているので、捕まっているその部分に頼って、なんとなく心を落ち着けながら玲央のちょっと後ろを歩く。

「優月、プレゼントするから。好きなの選んで?」
「いいの?」
「うん。一緒につけよ」
「――ありがと」
「ん」

 お礼を言ったら、嬉しそうに、ふ、と笑う玲央の顔を見てると。
 多分こういうのは玲央にとっては、そういうものみたいなので。ありがとうが一番いいのかなと。ちょっと学んできたのだけど。

「あ、ここだ」
 玲央がオレの背中に手を置いて、ドアを開けた。軽やかなベルの音が響く。外は人が多くて騒がしかったのに、店の中はとっても静か。別の空間みたいな。ライトも壁も明るい白。

「何がいいかな」
 玲央が言いながら、店内を少し見回して、オレを見つめた。

「優月は普段、あんまりつけないけど……つけるのは嫌じゃない?」
「うん。嫌じゃないよ。あんまり買おうと思わなかったというか……」
 ふふ、と笑ってしまいながら、玲央を見上げる。
「玲央はいつも、つけてるよね。カッコイイ。似合うし」

 今も首元についてる、シルバーのネックレスも、すごーく似合ってるし。
 そう思ってると、玲央は、クスッと笑って、ぽんぽん、とオレの背に手を置いた。

「気に入りそうなの、言ってみて? ネックレスは欲しいかな。ああ、チョーカーにしてみる?」
「つけたことない。似合うかな」
「つけてみよう」

 玲央はそう言って、透明なガラスケースに近づく。ケースの上にも並んでいる商品を手に取った。いくつか、オレの首元に持っていって眺めていたけれど。

「これよさそう。どう?」

 聞かれて手に取ってみると、思っていたよりもやわらかい。中央に十字架。そのまんなかに、石が飾られてる。よく見ると、十字架はすごく細かく彫られていて、なんかすごく綺麗。

「この真ん中の石、こっちがトパーズで、こっちはアクアマリンだって。お揃いにしてみる?」
「うん。いいね、綺麗だね」
 オレがふふ、と笑うと、玲央は「石の意味、分かる?」と聞いてくる。
「……意味??」
 玲央を見上げると、「誕生月のパワーストーンだよ」と言われる。
「……どっちがどっち??」
「優月がアクアマリン」
 そうなんだー。綺麗な水色。
「三月の石、何種類かあるけど。これが一番綺麗かな」
「うんうん、素敵だと思う。玲央の石も、綺麗」
「じゃこれにしよ」

 そう言ったところで、店員さんが寄ってきて、決めたそのチョーカーを、ケースに置いてくれた。

「他は……そんなにじゃらじゃらつけたくない?」
「ううん……よくわかんない」
「ブレスレットと指輪は買お。全部おそろいは、やりすぎってあいつらに言われそうだから、そっちは好きなものにしようか」
「……確かに。突っ込まれそうだね」

 もし全部お揃いで買ってたとしたら……と、三人の顔を思い浮かべると、ちょっと可笑しい。

 玲央が言うのを聞きながら、お店の人が、ショーケースから出して綺麗なトレイに置いていってくれる。それを付けてみて、玲央に一緒に選んでもらった。シンプルなシルバーのブレスレットと、交差する輪っかで出来たちょっとごつい指輪。玲央は、どっちも存在感があるものを選んだ。

 入った時から高級感溢れてたのだけど、やっぱり結構なお値段の店みたい。こういうのは。やっぱりカルチャーショックと言うのかな。もう希生さんのお屋敷で十分うけてきたのだけど。涼しい顔で会計を済ませて「つけていきます」と玲央が言う。

 店員さんが、綺麗に拭いてくれて、ピカピカなものを目の前のトレイに置いてくれた。玲央の元々つけていたものを袋に入れてもらってる間に、玲央がオレにチョーカーを付けてくれた。「オレも、玲央につけたい」と、オレも玲央にチョーカーを付けた。少し下を向いてるうなじ。なんかそんなのもカッコいいな。なんて思いながら。


 鏡の前で、少し石の色が違うだけで、お揃いのチョーかを見て、「嬉しいね」と喜んでいると、玲央がオレの左手に触れた。

「指輪しよ」

 玲央がそう言って、する、とオレの左の中指にはめてくれる。


 わー。なんか指輪はめてもらうのって、すごく、神聖な気持ちになるかも。
 なんだかウキウキして、ふ、と微笑むと、「指輪つけるのって良いかも。優月もつけて」と、玲央も笑った。

 なんだかアクセサリーのお店にいるだけで、さっきからずーっと幸せなのだけど。





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