上 下
808 / 825
◇ライブ準備

「むしろ元気って」*優月

しおりを挟む


 玲央は少し不思議そうにしてたけど、なんだか嬉しそうに微笑むと、キスが降ってきて、しばらく続いちゃって、そのままぎゅー、と抱き締められた。とくに聞かれなかったので、玲央が綺麗っていうのの説明はしなかった。何回か綺麗って口走ってる気もするから、なんとなく受け止めてくれたみたいな気がする。
 ほんとに。真っ直ぐで綺麗だなって。思う。

 しばらく玲央の腕の中に居て、それから、身支度整えて、外に出た。
 昼過ぎ。太陽は高くて、明るい。駅の方に向かうと人がめちゃくちゃ多くて、玲央がオレの手首をそっと掴んだまま歩いてくれてる。
 なんか、朝まで希生さんちに居て、今までホテルに居て、抱き合ってて。
 出てきてもこんなにまだ明るくて、なんだかすごく不思議な感じ。

 ホテルで玲央がお店を検索してたから、多分そこに向かってるのだと思って、ついていってたのだけど。玲央がふとオレを振り返った。

「先食べよっか。カフェみたいなとこでもいい?」
「うん。そういえばお腹空いた」

 そう言うと、玲央はクスクス笑って、「運動したもんなー」なんて言ってくる。もう絶対からかって、わざとだなーと分かっているのだけど、かぁっと赤くなるオレ。だって思い出しちゃうし。ふ、とまた目を細めて、玲央が頬に触れる。

「すぐ赤くなる」
 楽しそうに笑いながら、そんな風に言う。だって、と思うんだけど、実際、文句は出ない。だって、玲央の顔、優しいから。

 通りがかりのカフェで足を止めて、玲央がオレの顔を見る。「メニュー見てみて。ここで良さそう?」と聞かれて、入り口に置いてあるメニューを確認して、頷く。少し並んで入った店内は。

「オシャレだねー」
 白いテーブルに、白い椅子。荷物を置くカゴすら可愛い。
 ……オシャレっていうより、すごく可愛い感じ。男二人で入る感じじゃないかも。と思って周りを見ると、やっぱり女の子ばかり。
 女の子は目ざとくて、玲央をチラチラ見てる子たちがすでに居る。

「ちょっと可愛すぎた?」
 玲央がクスッと笑ってそんな風に言う。

「ここまっすぐ行ったとこに、行きたい店があるからさ」
「うん。いいよ、ここで」

 サンドイッチとコーヒーを頼んで、お冷を口にする。

「優月、疲れてないか?」

 疲れ?……疲れるようなこと。いっぱいしたもんね……。
 …………っ返事を返すよりも、顔に熱が。

「ライブ行くのに、あんま手加減しなくてごめんな」

 手加減しなくて……。たしかに手加減無しで、なんかいっぱいされたような。……でも、時間的には短かったから、まだだいじょうぶ……とか言うのもちょっと恥ずかしい。

「……玲央は、疲れて、ないの??」
 
 顔は熱いけど、でもむしろ、オレはより、動いてるの玲央だし。……って、動いてるのって恥ずかしいから言えないけど、でも、どっちかというと、疲れてるのは玲央なんじゃと思って、聞いてみると。

「全然」
 けろっとして言う玲央。

「むしろ、元気になったというか? ていうかむしろ、足りないかな」
「――――……」

 ダメだ。
 ぼぼぼぼぼ。

 むしろ元気にっていうのもなんかおかしいし、足りないって言われるのも……! なんかもう、さっきの自分とか、熱っぽくてやらしい顔してる玲央が、頭の中によみがえってきてしまって、もう、無理。
 テーブルに肘をついて、両頬を挟んで俯く。




 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

処理中です...